初めての夜


 エレンとアリアが初めて一緒に過ごす夜は、たくさんの刺激に満ちあふれていた。


「――ねぇ。本当にお風呂、先にもらっちゃってもいいの?」


「あぁ。俺はまだ他にすることがたくさんあるから、先に入っておいてくれ」


「そっ、ありがと」


 アリアはそう言うと、バスタオルや着替えを準備し――何故かススッとエレンの耳元に近寄った。


「ねねっ、ところでさ」


「どうした?」


「『先に入っておいてくれ』って、なんだかちょっとエッチだよね」


「エッチ……? ~~っ」


 その意味を理解したエレンは、顔を赤く染める。

 こういう性的な知識や隠語いんごについては、悪戯好きのティッタから、ちょこちょこと小出しに教えられていたりするのだ。


「ふふっ。冗談よ、冗談」


 彼女は悪戯っ子のようにクスクスと微笑むと、脱衣所へそそくさと駆け込み、仕切りのカーテンをシャーッと閉めた。


「ったく……アリアのやつめ……」


 エレンがぼやきながら勉強机に着き、反省文を書き始めたそのとき、脱衣所の奥から『シュルシュル』という衣擦れの音が聞こえてきた。


 アリアが制服を脱いでいるのだ。


(……)


 一応いいお年頃であるエレンは、なんとなく落ち着かない気持ちになり、ふとした拍子ひょうしに脱衣所の方へ目を向ける。

 すると……仕切りのカーテンは非常に薄いため、アリアの体付きや胸のふくらみ――そのシルエットが、全てはっきりと見えてしまった。


「……っ」


 彼は大慌てで視線を戻し、ブンブンと頭を激しく左右に振る。


(しゅ、集中だ……集中……っ。剣を握るときと同じ、いだ水面みなものような心持こころもちで、周囲の雑音を排除するんだ!)


 そうやって精神を整えていると、


「ふんふーんふーん」


 今度はアリアの上機嫌な鼻歌が聞こえてきた。

 それに続き、頭を洗う音・体を洗う音・湯船にチャポンとつかる音・気持ちよさそうに伸びをする声などなど……。

 その情景を想像させるような刺激の強い音が、怒濤どとうの勢いで押し寄せてくる。


 優秀な魔術師は、豊かな想像力を持つことが多い。

 当然、エレンもその例に漏れず……彼は現在、非常に苦しんでいた。


(へ、変なことを考えるな……っ。とにかく、目の前の課題に集中しろ……ッ)


 鋼の理性を総動員し、脳内の不純な想像を掻き消していく。


 それからしばらくして、アリアがお風呂から上がり、脱衣所のカーテンがサッと開かれた。


「ふーっ。お風呂、気持ちよかったよ。ありがとね」


 湯上がりの彼女は、シャツに短パンという開放的なスタイル。

 濡れた髪・上気した頬・つややかな唇――普段よりも少し大人びており、健康的で瑞々みずみずしい色気がふんわりと漂っていた。


「あ、あぁ、気にするな」


 自分が意識していることを悟られないよう、エレンはややない態度を取った。


 すると……それを知ってか知らずか、アリアは無防備に距離を詰めていく。


「どう? 反省文、進んだ? ……ありゃ、まだほとんど白紙だね。もしかしてこういう作文とか、苦手なタイプ?」


 彼女はそう言って、可愛らしくコテンと小首を傾げた。


(ち、近い!? それになんか、いいにおいがする……っ)


 女の子特有の甘い香りが鼻腔をくすぐり、エレンの鋼の理性がゴリゴリと削られていく。


「お、俺……お風呂に入ってくるよ!」


 彼は勢いよく立ち上がり、そのままの勢いで脱衣所へ飛び込んだ。


「んー、なるほどなるほど……」


 アリアはポツリとそう呟いた後、濡れた髪をとかしていくのだった。


 一方、脱衣所へ緊急避難を果たしたエレンは、大きく長い息を吐き出す。


(ふぅー……。こんな刺激的な状況が、これから毎日続くのか……?)


 心臓がドクンドクンと妙な鼓動を打ち、とにかく気持ちが落ち着かなかった。

 彼は『呪いへの完全耐性』という稀有けうな特性を持ちながら、異性への耐性は限りなくゼロに近い。


 しかし、それも無理のない話だ。


 耐性とは、すなわち経験。

 エレンはこの十年間、狭い物置小屋でくらく孤独な毎日を過ごしてきた。

 当然、異性と話すことなど皆無。

 そんな彼が、突然アリアのような絶世の美少女と一つ屋根の下で暮らすともなれば、混乱は必然のことだろう。


(とにかく……温かいお風呂に入って、気持ちを鎮めよう)


 浴室に入ったエレンは、頭と体をサッと洗い、温かい湯船にとっぷりとつかる。


「あぁー、生き返るー……」


 じんわりとした熱が体に染みわたり、疲労の溜まった筋肉が解きほぐされていく。


 それから少しして、静かで何もない時間が訪れると……また妙な考えが浮かんできた。


(このお風呂、アリアもつかっていたんだよな……。って、俺は何を……!?)


 結局エレンは、ときたま変な想像が脳裏をよぎるせいで、あまり体を休めることができなかった。

 仕方なくお風呂から上がった彼は、バスタオルでサッと水気を拭き、用意しておいた寝間着ねまきに着替える。


「――あら、早いのね。『からす行水ぎょうずい』ってやつかしら?」


「ま、まぁな」


 その後二人は、それぞれのやるべきことをこなしていく。


 エレンは、反省文の執筆。

 アリアは、持ち込んだ私物の整理整頓。


 互いが黙々と作業に勤しむ中――エレンのお腹から、「ぐーっ」という腹の虫が鳴いた。


「あー……お腹空いたな」


「ふふっ、なんか適当に作ろうか?」


「えっ、いいのか? というかそもそも、料理できるのか?」


「長年教会で術師をやっていると、生活力が身に付くのよ。冷蔵庫、開けていい?」


「あぁ」


 魔術が発展していくに連れて、たくさんの『文明の利器』が発明された。

 青道式自律温冷調整倉庫――通称『冷蔵庫』などは、その最たる例である。


「えーっと何々、お肉に魚介、野菜に卵……。こんなにいっぱい取り揃えているだなんて、なんだかちょっと意外ね」


「ん……?(お肉に魚介? そんなのうちにあったか……?)」


 エレンは不思議に思い、チラリと冷蔵庫の中を覗き視た。


 するとそこには、大量の食材がこれでもかというほどに詰め込まれていた。


(これは……多分、あれだな。俺が留守の間、リンさんか誰かが気を利かせてくれたんだろう)


 ヘルメス・リン・ティッタ・シャルの四人は、エレンの部屋の合鍵を持っており、割と頻繁に出入りしている。


 ちなみに今回の食材は……相も変わらず過保護なヘルメスが、直々に食料品店へ足を運び、大量に買い込んだものだった。


「これだけあれば、なんでも作れそうね。エレン、何か食べたいものはない?」


「んー……。もう夜も遅いし、簡単な軽食がいいかな」


「そっ。それじゃ適当に作っちゃうわね」


「あぁ、頼む」


 それから三十分後――。


「おぉ、これは凄いな!」


 食卓には牛肉の野菜炒め・玉子焼き・お味噌汁――豪華な夜食が並んでいた。


「ふっふっふっ。こう見えて、お料理はけっこう得意なのよ?」


 アリアは得意気な表情で、エプロンを脱いだ。


「「――いただきます」」


 両手を合わせて食前の挨拶。


 エレンはまずはじめに、野菜炒めへ箸を伸ばす。


「……どう?」


「うん、おいしい! アリアは本当に料理が上手なんだな」


「そっか、それはよかった」


 彼女は嬉しそうに微笑み、和やかな食事の時間が流れた。


 それから二人は勉強机の前に椅子を並べ、顔を突き合わせながら、反省文を進めていく。


「あ゛ー……」


「ねねっ、そこに誤字あるよ」


「ん? おぉ、ありがとう」


 それから三十分ほどが経過し、時計の針が一時を回った頃――。


「や、やっと終わった……っ」


 原稿用紙三枚分――長きにわたる苦しい戦いが、ようやく終わりを迎えた。


「お疲れ様でした。内容は……うん、ばっちりね。これならあのリーザス先生も、さすがに文句を言ってこないでしょ」


「あの怖い先生のこと、知っているのか?」


「『雷神』リーザス・マクレガー、グランレイ王国で三本の指に入る黄道おうどう使い。多分、魔術界で知らない人はいないと思うよ?」


「そ、そんなに凄い人だったのか……っ」


「確かに厳しい先生だけれど、それ以上にとても優しい人でもあるわ」


「へぇ、そうなんだ」


 そんな雑談を交わしながら、各自で夜の支度を整えていく。


「――それじゃ、俺はこっちの敷布団で寝るから、アリアはベッドを使ってくれ」


「え? いいわよ。勝手に上がり込んだんだし、私がそっちで寝るわ」


「いやいや、さすがに女の子を床で寝かせるわけにはいかないよ」


「うーん……。それじゃ、一緒にベッドで寝る?」


「ば、馬鹿なことを言うなよ!」


 顔を赤くするエレンに対し、


「ふふっ。キミって、ほんと純粋だよね」


 アリアはクスクスと微笑みながら、ベッドに腰を下ろした。


「エレンの気持ちはありがたいけど……本当にいいのかなー? 男の子って、こういうところにエッチな本を隠しているんだよね?」


 彼女は紺碧の瞳を鋭く光らせ、ベッドの隙間にチラチラと視線を送る。


「はぁ……そんなわけないだろ」


 当然、エレンはそんないかがわしい本を所持していない。


「えー、ほんとにぃ……?」


 アリアはゴソゴソとベッドの隙間に手を入れ――ピシリと固まった。


「どうした、虫でもいたのか……?」


「へ、へー……っ。エレンはこういう女の子がタイプなんだ……」


 彼女は耳まで真っ赤にしながら、とある本を取り出した。


 なんとそれは――『純白美少女大特集! 色白・白髪の純粋生娘!』というグラビアの写真集。


 アリアと似た純白の美少女が、水着姿で際どいポーズをとっている。

 下手に十八禁のものではなく、十五禁のグラビアというところがまた、非常にリアルでいやらしいラインをいていた。


「なっ!? え……ち、違っ!?」


 混乱の極致に達したエレンは、言語機能が破壊された。


 もちろんあの雑誌は、彼の私物ではない。


 今から遡ること数時間前――エレンの部屋を清掃するため、リンとティッタが訪れていた。


「さて、このあたりでそろそろ切り上げましょうか。……ティッタ? あなたさっきからそんなところで、いったい何をしているんです?」


「へっへっへっ、『引っ越し祝い』っすよ。エレン様も男の子っすから、やっぱりこういうエッチな本は必須! さすがに十八禁はまだちょっと刺激が強過ぎるので……今回は十五禁あたりを仕込んでおきました! いやぁしかし、私ってメイドは本当にいい仕事をしちゃいますねぇ……」


「はぁ……。この駄犬が……」


 ということがあり、現在の修羅場が生まれていた。


(よくよく見れば、本の表紙に狼の毛がついている……。あの駄犬め……ッ)


 エレンが怒りに打ち震える中、事態は悪化の一途をたどる。


「あの、さ……ここに載っている女の子たち、みんな色白で白髪なんだけど……。キミって、もしかしてその……私みたいなのが、タイプなのかな……?」


 アリアは自分の白髪を指でいじりながら、そう問い掛けた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! そもそもの話、この雑誌は俺のじゃない!」


「……キミ以外の誰が、ベッドの裏にこんなものを隠すの?」


「それは、その……お、お姉ちゃん! そう! 実家のお姉ちゃんが、たまにこういう悪戯をするんだ!」


「……ふーん、『実家のお姉さん』ねぇ……」


 アリアは訝し気な視線を送りながらも、ひとまずのところは、それで納得することにした。


 その後、もう時間も時間だったので――消灯。


「おやすみ、アリア」


「おやすみなさい、エレン」


 エレンは敷布団・アリアはベッド、二人はそれぞれの寝床で目を閉じた。


(はぁ……。今日はなんだか、とっても疲れたな……)


 思い返せば、激動の一日だった。


 朝は入学式で新入生代表の挨拶。

 お昼はゼノと決闘し、リーザス副学長に雷をもらう。

 そして放課後はシルフィの呪いを解き、そのままの流れで聖眼使いのアリアと戦闘。

 そしてどういうわけか、アリアと一緒に住むことになり……今に至る。


 今日は間違いなく、これまでの人生で最も過酷な一日だと言えるだろう。


(明日はもう少し、穏やかで静かに過ごしたいなぁ……)


 エレンはそんなささやかな願いを抱きながら、深い微睡まどろみの中に沈んでいくのだった。



 時刻は一時三十分、アリアはパチリと眼を開けた。


「……ねぇ、起きてる……?」


 問い掛けに対し、返ってくるのは「すーっすーっ」という規則的な呼吸音のみ。


 彼女はゆっくりと体を起こし、エレンの枕元に腰を下ろした。


(……ぐっすりと眠っているわね……)


 しっかりとそれを確認した後、


(はぁ……よかったぁ……)


 張り詰めていた警戒の糸が切れ、ホッと安堵の息を吐く。


 魔術教会へ虚偽の報告をし、史上最悪の魔眼を黙殺する以上、自分には巨大な責任が生まれる。

 彼女はそれを果たすため、エレンと一緒の部屋に住み、その瞳の動向を二十四時間監視することに決めた。

 彼に魔眼の使い方をレクチャーしつつ、暴走の兆候がないか逐一チェック、必要に応じてメンタルケアを行うことで、魔眼の『恒久的な安定』を図ろうと思ったのだ。


 しかし、アリアとてうら若き乙女。

 エレンという狼に襲われ、純潔を奪われる怖さもある。


 だから彼女は、『テスト』を実施することにした。

 えて思わせぶりな発言・行動を取り、エレンの反応をチェック――彼の『狼具合』を測定していたのだ。

 もしも襲われる危険を感じた場合、夜のうちに離脱――すぐに別の監視策を考えるつもりだったのだが……。


(うん。これなら、まったく問題なさそうね)


 厳格なテストの結果、エレンの狼度おおかみどは――0点。

 奥手の中の奥手、もはや草しか食べてないのではないかと思うほどの『草食系』だった。


 おそらく同衾どうきんしても、なんの間違いも起こらないだろう。


(一言に『魔眼使い』と言っても、いろんな奴がいるのね……)


 両親を魔眼使いに惨殺された過去を持つ彼女は、あまりにも無害過ぎるエレンを見て、少しだけ複雑な気持ちになった。


(これが次代の『魔王の器』だなんて……ほんと信じられない)


 アリアはそんなことを考えながら、目の前の柔らかそうな頬をツンツンとつつく。


「う、うぅ……」


 その刺激に反応して、エレンはちょっぴり苦しそうな表情を浮かべた。


「ふふっ。これは今日、散々痛めつけてくれたお返し、よ」


 アリアはそう言って、エレンのほっぺをぐにーっと引っ張った。


 そうして無事に小さな仕返しを果たしたところで、彼女のもとへ強烈な睡魔がやってくる。


(ふわぁ……っ)


 半日エレンの尾行をした後、聖眼解放を伴う激しい戦闘。


 アリアの疲労は、もうとっくの昔に限界を超えていた。


「んー……おやすみぃ……」


 彼女はまるで意識を失うように倒れ込み、そのまま深い眠りにつくのだった。



 深夜遅く、エレンとアリアが眠りについたその頃――。


「……ふっ、ふふっ……ふふふふ……っ」


 魔具屋まぐやアーノルドの本店前で、一人の青道使いが笑っていた。

 ――否、激しい怒りに打ち震えていた。


「……そうですかそうですか、エレン様も随分と偉くなられましたね。私との大切な約束をすっぽかすとは、いい度胸ではありませんかぁ……!」


 彼女の名前はシャル・エインズワース。

 ヘルメスの屋敷に仕える使用人であり、エレンに青道魔術の神秘を説く者。

 そして何を隠そう、『魔具屋アーノルドで一緒に青道魔具を買いに行く』という約束をすっぽかされた者である。


「こんな絶世の美少女を深夜遅くまで放置するなんて……正気の沙汰ではありません! まさに鬼畜の所業! 許されざるべき絶対悪です!」


 怒り冷めやらぬ彼女は、腰に差した長物を引き抜いた。


「我が新たな青道魔具――聖水秘剣! その第一の犠牲者としてくれましょう!」


 これは本日発売された新製品であり、先端より目潰し用の冷や水が飛び出す『神秘の剣』。

 彼女はちゃっかり、自分の欲しいものだけは手に入れていた。


「私の復讐は、もはや誰にも止められません!」


 その後、シャルは全力ダッシュで、王立第三魔術学園の正門前へ移動。


(一・二・三……なるほど、警備は八人ですか。この程度――青道の六十二・水渡り!)


 水から水へ座標移動する高等魔術を以って、いとも容易く正門を突破。


(ふっ、我が青道魔術に掛かれば、王立への侵入など朝飯前です……!)


 彼女はその勢いのまま、エレンの住む学生寮へ到着。


 懐から合鍵を取り出し、玄関のカギをガチャリと開けた。


(ふっふっふっ。いったいどんな間抜け面で眠っているのか、楽しみですねぇ!)


 まるで寝起きドッキリを敢行するが如く、妙に高いテンションのまま、ゆっくりと扉を開ける。


 するとそこには――信じられない光景が広がっていた。


「はぅァッ!?」


 敷布団ですやすやと寝息を立てるエレン。

 そしてその隣で眠る見知らぬ女アリア


 偶然にも二人は抱き締め合うような形になっており、それは『一線を越えた』と確信できるほどの空気と状況だった。


(あ、あわわ……あわわわわ……!? エレン様がいつの間にか、大人の階段を……ッ)


 とんでもない誤解をしたシャルは、


「……お、おじゃましたぁ……」


 ゆっくり静かに扉を締め、ヘルメスの屋敷に逃げ帰るのだった。

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