モモゾノ
景文日向
第1話
時は西暦20XX年、真夜中の伊勢の街に突如眩しい閃光が出現した。
その中には、真っ黒で肥えた人体のようなものが見えた。それはそのまま、静かにショッピングモールがあった草むらへと落下していった。
翌朝、陸上自衛隊が確認に向かった。
そこにはかつて国民的英雄であった、通称「フブキ」そっくりの機械人間が壊れて転がっていた。
フブキ。その名は通称で、本名は桃園吹雪という。享年二十九歳、愛する人のために命を投げ出した。
その功績はこうである。元々は伊勢で働いていた彼だが、実際にはSNSで莫大なフォロワー数を抱える運動家でもあった。
フォロワー数が多ければ、それだけ発信力もある。彼はそれを当然理解していた。その上で、LGBTQに関する活動を進めてきたのだ。少しでも多くの人に理解してもらいたいと、必死に彼は発信し続けた。恋人も、それに賛成してくれた。彼の人生の絶頂であったと言えるだろう。多くの人間が彼を支持し、世界は確かに動いたのであった。多くの国が同性婚を可能にしたり(日本とて例外ではない)、異性婚同性婚問わず多くの権利が保証された。
しかし、絶頂は長くは続かない。彼の活動をよく思わない団体から、彼の恋人が急襲される。それに気づいたフブキであったが、時既に遅し。「貴様が死ぬか恋人が死ぬか、この場で選べ」と要求され、即刻自害し彼の生涯は終わった。
これには多くの人々が涙し、彼の遺体は大学病院に安置された。国民的、いや世界的英雄を焼くことなど出来なかったからだ。それだけのことを彼は成し遂げた。
しかし20XX年のあの日、機械のフブキ(コードネーム「モモゾノ」)が科学者により修理された。それは善意で行われたことであって、悪意は一かけらも混じっていない。だが、実験室には科学者の血が飛び散った。無残にも崩れ落ちる科学者たち。助けを呼ぶ間もなく、場はモモゾノに制圧されてしまった。その後研究室から出て行ったモモゾノは、三重県民の大半をを殲滅することに成功。そして、首都東京に向かうモモゾノの姿が三河湾上で捉えられた。
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