第4話【Y&S】会話劇 その②(下)告る受け

年下SEの自宅へ戻り足の様子を見た年上柔整師は早々に帰ることにする。


◆ ◆ ◆


「じゃ、帰るわ。無駄に歩き回んなよ」

「用賀さん、どうしても俺じゃダメですか?」

「……何度も言わせんな」

「あなた好みになる、と言ってもですか?」

「お前さぁ、散々匂わせるけど何なんだよ?」

「ゲイ……でも無ければバイでもQでもないです」

「ははっ! アホだな、そこはワンチャン狙って嘘ついとけよ」

「後で苦しくなるのは目に見えてるし、そうしたところで見抜かれて更に離れていくだけでしょう?」

「良くご存知で……はぁ、もー。……するわ」

「はい?」

「……むにゃ……するから……ろ」

「聞こえるように言ってください」

「頼むからやめてくれってーの!」

「諦め悪くてすみませ―――」

「そうじゃなくて! 全く……そもそも想いが通じるわけもねぇし、指名されても平常心でいられねぇから理由つけて避けたのによ」

「は……?」

「いつの間にか喋るようになって距離が近付いてくし、挙げ句の果てに何だよこのキュン展開は。必死に堪えてたのが馬鹿みたいじゃねぇかよ!」

「ちょっ……と待って」

「この年齢トシで一目惚れなんて……恥ずくて言えねぇだろうが」

「……え、それ、う……うえっ、吐く」

「何でだよ!」

「そういう事は早く言ってくれよ……気張りすぎた、キリキリと胃が痛い」

「はん! お前も見栄っ張りじゃねぇか」

「この年齢トシで真正面の告白なんて自分殺さずに言えるかよ、恥ずかしい!」

「それはオレへの愛と呼べんのか?」

「うるさい、どれだけ言えば伝わるんだよ耄碌じじい!」

「人格崩壊してるし、怖っ!」


「くっ……始めに言っときます、束縛する気はないけれど嫉妬深いです」

「やべぇヤツだ、先に知りたかった」

「最後の恋にしたいんで相当覚悟してください」

「始まりから重いし」

「最初から飛ばして何が悪いんですか」

「オレ、我が儘だし、独り好きだし、自己中よ?」

「認識に相違ないです」

「なのに欲しがりで、甘えん坊で、スゲェ泣き虫」

「全て受け止めるんで存分に」

「あっという間におじい」

年齢トシの取り方を参考にするので、若さを保つ努力を惜しまずに。俺の為にも」

「……」

「他には?」

「うぐ、打ち止めだし涙出てきた。降参だわ」

「本当に泣き虫だ。ヤバい、可愛い」

「むっさいおやじにそれ一番合わねぇだろ」

「知らないんだな、愛すべき存在と認めた時に出る言葉だって」

「やめろ、恥ずかしい」

「早く泣き止んでくださいよ、もう限界」

「草食みに見せかけた肉食かよ、怖ぇなぁ」

「嫌いじゃないでしょう?」

「……まぁ、どちらかと言えば、な」

「後でいいんで、ちゃんと返事をくださいよ」

「今言う、俺も好きなんで一緒になってくれ」

「良くできました」

「マウント取りやがって、ムカつく」

「そういうのも嫌いじゃないでしょう?」

「はい、好きです」


「じゃあ、泣き虫おやじを宥めるのはここまでにして、戻ってか」

「は、何言ってんの、このまま帰んぞ?」

「この状況でその返答……いい大人がおかしくないですか?」

「な、何でもトントン拍子に進めりゃいいとは限らねぇだろ」

「は?……えーっと、これが初恋じゃないですよね?」

「違うわ! 泊まるには……準備が要るだろうが」

「着替えなら貸しますよ?」

「シミがついたパンツなんか穿けるかっ!」

「下ろし立てがあったんてすが、そちらをご所望ならば……」

「うがぁーっ! 急ぐなっつってんの!」

「何故?」

「それは……一気に突っ走って早々に見切りつけられたら……生きていけない、から……」

「ぷぷぷ! また、可愛いことを言う。さっき言いましたよね、『覚悟しろ』って。ノンケの俺が男を好きになった時点で詰んでるんです、早々に理解していただきたい」

「お前は……口の聞き方を知らねぇヤツだな、ブッ飛ばす」

「ならばせめてその前に誓ってくださいよ」

「さっき言ったろうが」

「口約束だけじゃなくて」

「あ〜、はいはい、行動で示せとね。仕方ねぇなぁ、ちょっと屈め、届きやしねぇ」

「また来てくださいよ」

「足の経過見に来るわ、明日な」

「ぷっ、照れ屋か。帰り道、気を付けて」

「あぁ、おやすみ、いい夢見ろよ」

「あなたもね、おやすみなさい」


◆ ◆ ◆


強引に持っていったなー

まあ、ネタ帳だし、アリやろ?



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