「控えめな人」

 I田が死んだ。

 青信号だったのに撥ねられて。

 大人しくて周りに気を使う奴だった。


 数日後の朝、廊下でI田に会った。


 うっすらと透けたI田は生徒達を器用に躱して歩き、ふいに立ち止まった僕を見て、隅によけた。にこっとして通り過ぎる。


 ぶつかるはずがないだろ、と言いそうになって、唇を噛んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る