11 木漏れ陽のなかで 

 最近、毎日徹夜だったので、学校ではフラフラ状態だった。

 このまえは授業中居眠りをして、急にあてられとき「おはようございます! 」と叫んでしまい、皆んなに笑われ、麗華にも笑われてしまった。

 

 こうして、ミホロやゴンゾーも巻き込んで、苦労して情報を得たものの、通用するかは半信半疑だ。

 しかし、何も方法のない中、ダメ元でもやる価値はある。

 ただ、少しやばい方法ではあるのだが。

 

 さらに、リアルでは麗華に避けられている僕が、どうやって伝えるかだ。麗華にはいつも取り巻きがいて一人になることはなく、近寄ることもできない。


 でも、消沈する麗華を見ていられないのと、舞うような美しいレイカの剣技と一緒に戦いたい思いは消し去れない。

 そこで僕は、古典的だが放課後の教室に戻り、周囲にだれもいないのを確認して、その方法を書いた手紙を麗華の机の中に入れた。


 僕の名前を書いておくか相当迷ったが、どうせ最後のチャンスだし、思い切って名前を書いておいた。くどいようだが、かなりやばい方法で、もし違っていれば、変態呼ばわりだ。でも、成功したら僕への好感度はV字回復間違いなしだろう。


 そしてその内容は……


『森の泉に裸で入って、モフモフを呼べ! 』



 ◇

 二日後の夜、僕は再び召喚された。

 そこは新緑の木漏れ陽が降り注ぐ泉、どこかで見た懐かしい光景。


(ひょっとしてここは! )

 スワンヒルの森の泉……


 僕は戻ってこられたのだ。あの壁画は正しかったのだ!

 でも、スワンヒルということは、通天回廊を攻略できなかったのだろうか……


 振り返ると目の前に、両手を広げて涙目で微笑むレイカ

 僕も嬉し涙が出てきて、レイカの腕に飛び込んだ。

 そして、僕は心の中で叫んだ


「モザイク消えろ! 」




◇ 翌日ーー


 こうして麗華のリアクションを期待して登校したが、全く反応がない。

 その放課後、僕は麗華と早瀬が立ち話しているのに出くわした。二人で会うなんて、ものすごーく気になる。

 僕は、となりの壁で、いけないと思いつつ、聞き耳を立ててしまった。


 ****


『早瀬くん! ありがとう、おかげで上手うまくいきました』

 うれしそうに話す麗華。


『変な方法だったし。ごめんね』

『そんなこと気にしてませんよ。それで、成功したのだし感謝してます』

『でも、まさか白鳥さんもストレイン・ワールドをやっていたなんて驚いたよ。もし、困ったとことがあったら連絡して』


『うん、ほんとうにありがとう。でも、ゲームのことは誰にも言わないでくださいね』

『わかってる。僕達だけの秘密といこうとで』

 麗華は笑顔で頷いた


****


 僕は、にわかに信じられなかった。


(早瀬も、ストレイン・ワールドをしていたのか………でも、早瀬がなぜスワンヒルに閉じ込められている麗華のことを知っているんだ。それに、僕の手紙はどうなった? )


 話の内容や、麗華の口調から、付き合っている感じではないけど、『僕たちだけの秘密』って、僕が言いたかった言葉なのに………



 その後、麗華と早瀬が一緒に学校を出るのを、僕は胸がキリキリする思いで見送るだけだった。


 第一部 <了>





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