第2章【あたしの一大事は、世界の一大事よ】①

〈2/8(Sun.) 08:23〉


 透き通った日差しで、目が覚めた。

 今、何時なんだろう? 目の奥がたまらなく熱い。なにか夢を見たような気がする。言葉の大半が記憶の底に沈んでいたが、それはすごく懐かしく、苦い響きを残していた。

 携帯を握ったまま寝ていたらしい。待ち受けを見るなり目を疑う。

 着信が三十二件。確かめるまでもなく、全部ロミオからだった。

 後回しにして、まずは部屋に戻ろう。頭ががんがんとする。無理もない、雪がうっすら積もっている。鼻の奥が凍りついたみたいだ。

 立ちあがると、押し寄せるように世界がぐるぐると回った。思わずよろめき、膝をつく。這うように窓までたどり着き、うつぶせのまま部屋に入った。ベッド。とりあえず、ベッド。

 体がうまく動かない。床の上に横になり、かけ布団をベッドから引きずりおろし、無造作に体にかけた。布団の中で、両脚をすり合わせる。全身冷たいのに頭の芯だけが熱い。

 朝だというのに、無遠慮なチャイムが鳴った。無視を決め込むが、しつこく音が響く。宅急便の類ではないらしい。頭がぼんやりする。膜のかかったように聞こえた。

 いつの間にかチャイムは止んでいた。安堵したのも束の間、今度は廊下を走る音がする。親はまだ帰ってこないはずなのに。足音はこちらに近づいてきた。

「やっちゃった!」

 部屋に入ってきたのは、なんとロミオだった。まさか、ぼくが電話に出ないのを、わざわざ怒りにきたんだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る