第3話 ひがみじゃないから



 というわけで、私はヒロインに忠告を行った。


 このままでは、この世界がめちゃくちゃになってしまうかもしれない。


 大勢の人の命だって、失われてしまうかもしれないのだから。


「あなたがやっている事は危険な事なのよ。分かって」


 だから、非情に不本意だったが、自分が転生者だという事もばらしてヒロインに話をしたのだが……。


「ふーん。話はそれだけですかぁ」


 という反応だった。


 えっ、なにそれ。


 どうしてそんな反応になるの?


 普通はもっと、慌てたり、怖がったり。百歩譲って、いぶかしんだりする所でしょう。


「そっ、そうよ。とにかく原作改変するなら、もう少しちゃんと考えてからして」

「えー、自分の方が早く転生前の記憶が戻ったからって先輩面ですかぁ。先輩モテないですよ」


 その話、今関係ある!?


 ないでしょ!


 どうしてそういう反応になるのよ。


 ヒロインは自分の髪を指にからめて、くるくるしながら口をとがらせる。


「そんなイジワルな事を言う先輩は、どーせ、男の人と付き合った事ないんでしょ? やだ、先輩かわいそー」


 イジワルなんかじゃない!


 私の怒りの数値は一気に極限まで達した。


 むきぃぃぃ。生意気な小娘めぇぇぇ。そのたわわに実った胸部の実りを引き裂いてやるぅぅ。


 こいつ、攻略対象達の前では清純ないい子ちゃんぶってるくせに、内面が悪女じゃないか。


「私がモテるからってひがまないでくださいよ。ぺったんこな先輩は、自分の魅力がとぼしいからイケメンに相手にされないんですよーだ」


 ぬぁぁぁんですってぇぇぇぇ。


 ひがみなんかじゃないわよ!


 これは、真剣な話!


 私は、おそらく鬼の様な表情になっていただろう。


 生意気な後輩に、一泡吹かせないと気が済まないといった顔をしていたと思う。


 そしたら、攻略対象達がやってきてヒロインをかばい始めた。


「大丈夫か!?」

「何があったの!?」

「とりあえず、わけを話してくれないか」


 ヒロインは、先ほどまでの悪女っぷりからころりと態度をかえ、か弱い乙女モードに。


「分からないわ! あの人がいきなり因縁をつけてきてっ!」


 攻略対象達にすがりついてしまう。


 そして、私はヒロインを虐めていたという事にされてしまった。


 攻略対象達から、一斉に睨まれる私。


 あっかんべをするヒロイン。


「なっ、なななななっ!」


 私は開いた口がふさがらない。


 衝撃のあまり、どうやってその場から離れたのか分からない。


 惜しから向けられる敵意のこもった目が忘れられなかった。


 ああっ、なんでこんな目に。


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