解放……。
⋄◇翌日◇⋄
私は、少し早起きして執務机の引き出しの中を探っていた。
「ないな~」
と、私は独り言を言う。
ちょうど、1番上の引き出しの中を探し終えたので、次は上から2番目の引き出しを探そうと思い、手を伸ばしたときだった。
「探し物ですか?」
雷武が寝ぼけ眼のままで話しかけてきた。
「ありがとう。じゃあ、その首輪の南京錠の鍵、探してくれる?」
私は簡単に何を探しているのか説明した。
「いいですけど……なんでですか?」
「昨日、雷武が私の奴隷になりたいって言ったでしょ。そのこと、少し考えてみたの。んで、雷武を私の奴隷にすることに決めたわ」
昨日の夜、少し考えたらさすがに可哀そうということでそうすることに決めたのだ。
つまるところ、正義感である。
「本当ですか⁉ 絶対にダメって言うと思ってました」
雷武がはしゃいでいたので、
「勘違いしないで。あなたを私の奴隷にするのは奴隷から解放するためなの」
と、引き出しを漁りながら伝えた。
奴隷は主人が認めれば自由の身になることができる。
そのために必要なことが首輪をはずすことだった。
「え? それじゃあ僕はこれからどうすれば……」
と、雷武が落ち込んだ。
当然の反応だろう。
奴隷から解放されたからといって、何も身を守る手段がなければ盗賊などに襲われて、また奴隷に戻るかもしれない。
「安心して。私の次の目的地まで送ってってあげるから。そこで仕事でも見つけるといいわ」
と言うと、
「ありがとうございます!」
元気な声が返ってきた。
「それと、流石にそんなボロボロな服で出かけるわけにはいかないから、そこにかけておいた服の中から好きなのを着てちょうだい」
と、さっき私が適当に用意しておいたソファにかかった男用の服を指さしながら、着替えるように促すと、
「服?」
そう言って雷武がソファの上にかかった服を見る。
「こ、こここんなに豪華な服、着ていいんですか⁉」
それほど豪華な服は用意してないはずだが、奴隷にはこれでも豪華に見えるのだろう。
「えぇ。気に入ったのがなかったら言ってね。用意するから」
と私が言うと雷武が服を選び始めた。
しばらくすると、
「ところで、さっきから何で引き出しを漁ってるんです?」
なんて言い出してきた。
なにを言っているのかな?
先ほど教えたばかりのはずだが……?
この記憶力のなさにはさすがに驚いた。
「もう忘れたの? あなたの首輪の鍵よ。さっき言ったでしょ」
と呆れながら言った。
「あぁ! それなら小さい方の鍵です」
と思い出したように言う。
おいおい雷武……知ってるんだったらもっと早く言ってよ……。
「あ、雷武、知ってるのね……んで、小さい方って?」
「最初に僕たちが出会った部屋にあった2つの鍵の小さい方です」
「ありがとう。取りに行ってくるわね」
そう言って、小走りで首輪の鍵を取りに行った。
⋄◇────────◇⋄
私が鍵を持って執務室に戻ると、Yシャツの裾をベルトをした長ズボンから出して着ている雷武がいた。
「これ、前のと比べて、すごく肌触りがいいです!」
と目を輝かせながら雷武が言ってきた。
前の服と比べりゃ当たり前でしょうが……。
「そりゃそうでしょ。前の服が普通じゃなかったの」
と、言ながら、首輪をはずしてあげた。
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