君は……。
「アジトはどこ?」
口ひげのおっさんののど元に剣を突き付けながら言う。
「チッ……」
おっさんが舌打ちを一つ。額には汗を流している。
「………ついてきな……」
口ひげのおっさんが喉元に剣を突きつけられながらそう言って歩き出した。
一応、いつ逃げ出しても対応できるように剣を鞘にしまわずに手に持ったままついていく。
――10分ぐらい歩いて着いたところは森の中にある小さな木造の小屋だった。
おっさんが無言で小屋の中へ入り、
「ここだ」
とだけ言う。
「そう……」
そう言って剣を鞘にしまうとおっさんは全速力で走り去っていった。
ここら辺はあまり治安が良くないため盗賊が多い。
別の盗賊の輪にでも入れさせてもらうつもりなのだろう。
アジトの中は食いかけの食べ物が大量に置いてあってテーブルの色もわからない。
その横には、ぐちゃぐちゃすぎてこれまたよくわからない物がおいてあるイス。
ついでに、床もぐちゃぐちゃすぎてよくわからない。
あとは部屋の隅に木箱があるぐらい。
二階はない。
「………」
よくこんなところで三人も暮らせたなと思うほどだった。
あまりの汚さに呆れていると、部屋の隅に置かれている木箱に目が留まった。
木箱には武器が入っていた。
おそらく誰かから盗んだのだろう。
剣が数本と槍が数本入っている中に一際目立つ武器があった。
それは片刃の剣で鞘がついている。
作りから見てお高い代物なのは素人の私にもわかったのでもらう(盗む)ことにした。
ついでに今後役立つと思って大きめのバッグももらった(盗んだ)。
⋄◇1日後◇⋄
森がだんだん開けてきた。
久しぶりに木以外のものを見た気がする。
隣村のリリウム村に到着したのだ。
――その光景は、どこかで見たことのある悲劇をそのまんま映しているようだった。
家は燃えていて、そこらへんに死体がゴロゴロ転がっている。
もちろん人の姿は見当たらない。
セラス村が襲われた理由がわからない以上、この可能性も考えていたが実際に目にするとあの日を思い出してしまう。
流石に、狩猟用の服装のままでは長旅はできないだろうと思い、自衛団の訓練所らしき広場に行った。
この村を襲ったのがレペンス帝国の兵士だったのならば制服だとばれると思い、自衛団の制服の予備であろう、胸部と両膝に黄色の線が引かれている白い金属の鎧が付いているものを着た。
そのあと、何か食べ物や使えそうなものがないかと探していると、村長の家だと思われる1番大きい家を見つけた。
大きいと言っても、田舎の村なのでそれほど大きくはない。
扉を開け、中に入る。
燃えていて、屋根はほとんど無かった。
しばらく、漁っているとフード付きの白いマントが合ったので頂戴することにした。
ずっと顔を隠すものが欲しかったからだ。
家の中にあった少し大きめのバッグに同じく家にあった食料を詰め込んだ。
いろいろと探していると、書類が山積みになった執務机とそこそこに高そうなイスがある部屋にたどり着いた。
村長の執務室だろう。
執務机の上にろうそくが入っていないランタンとろうそくが入った箱が置いてあったので暗いところで使おうと思い、ろうそくの箱とランタンをバッグに詰める。
ついでに、村長のへそくりらしきずっしりと重い袋が引き出しの奥の方に入っていたためもらった(盗んだ)。
これで当分はお金に困らなそうだ。
その後、執務室の端にある本棚に私が好きな本を見つけたので興味本位に抜くと、
「ん?」
奥に小さいボタンのようなものが見えた。
私は不思議に思い、そのボタンを押してみると……
――ガガガという大きな音を立てながら本棚の横側の床が動いて、いかにも牢屋がありそうな雰囲気の石で作られた階段が出てきた。
隠し部屋だ。
すると、隠し部屋が現れる音で気づいたのか、
「誰かいるんですか?」
扉の奥から青年の声がした……。
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