こんな世界で出会えた君は?
正義感……。
⋄◇あの悲劇から2日後◇⋄
あれから2日もずっと歩き続けている。
方角は隣村の「リリウム村」がある南東に向かっている。
そこが一番近いため物資を調達しようと思っているからだ。
まぁ、リリウム村が無事だったらの話だけどね……。
物資の調達と言ってもレペンス帝国の兵士には顔が割れているため、何か顔を隠すものが欲しかったからである。
水は初歩的な魔法で出せるし、兎や鹿を狩って肉も食べることもできる。
問題は、肉しか食べてないので栄養が偏っていることと、このままいけば体力が尽きて倒れてしまうかもしれない事だ。
そんなことを考えながら、私は山に隣接する森の中の獣道を歩いていた。
――しばらく歩いていると、後ろの草むらの方で何かが動く音がした。
不審に思い、警戒しながら歩くことにした。
神経を張り巡らせながら歩いていると、
道の端の草むらから3人の男が現れた。
「よぉ! ねぇちゃん」
と、真ん中の大剣を背負ったガタイのいい口ひげを生やしたおっさん。
「上玉じゃないっすか」
と、右側のバンダナをまいた細身の男。
「これは高く売れますね」
と、左側のスキンヘッドのタンクトップを着た細身の男。
なるほど。
高く売れると思って私を誘拐しに来たようだ。
盗賊の姿を見た瞬間、私は勝てると確信を持った。
なぜなら、まず細身の2人は明らかにこの稼業を始めたばかりだろう。
盗賊で細身なのは新人ぐらいしかいない。
真ん中の男は新人を教育中、とでも言ったところか。
――そうなると、口ひげのおっさんが2人に縛らせに行かせるから……
とすぐに作戦を思いついた。
私は、おとなしく両手を上にあげて降参の意思を示した。
「ニヒニヒ……」
それをみた口ひげのおっさんが、アゴをしゃくって両脇の男2人に指示を出す。
その後、両脇の2人がニヤニヤしながら縄をもって私に近づいてきた。
ニヒニヒって……気持ち悪い……。
二人は私の手を縛るために、上にあげていた手をつかもうとした。
それを見た口ひげのおっさんが急に、
「バカヤロー! 先に武器を奪えっつっただろーがぁ!」
と大きな声で怒鳴った。
初心者にありがちなミスだ。
本当なら、剣を渡す寸前に行動する予定だったが、嬉しい誤算だ。
怒鳴られた2人は 「「え⁉」」 という顔で口ひげのおっさんを見ている。
なんというか……お馬鹿さん……。
私はその隙を見逃さなかった。
その場で足払いをして一回転すると2人まとめてすっころんだ。
その後、なんのためらいもなく剣を抜き、タンクトップの男の胸部を刺した。
すると、先ほどまで勝った気でいた男の力が抜け、膝から崩れ落ちて動かなくなった。
一瞬だった。
数日前までは、どんなにクズでも生きていれば罪は償えると思っていたけど、今では「こんな価値のない人間、死んで当然」とまで思うようになっている。
故郷を失った経験からか、悪人を見ると耐え難い怒りがこみあげてくるようになってしまった。
意外とあっさりと人を殺せたことに驚いていると、
「てめぇ……!」
と言いながら口ひげのおっさんがズカズカ歩いてきた。
一旦距離を置くためにバックステップをすると、仲間だからだろうか、
「大丈夫か?」
と肩を貸す口ひげのおっさん。
「えぇ、何とか……」
と言いながら起き上がるバンダナの男。
本当だったら起き上がるまで待つべきなのでしょう。
それが、せめてもの礼儀というもの。
私だって、自衛団に所属していた時はそうしていた。
しかし私は、何の躊躇もなく走り出し、バンダナの男の首を切り落とし、そのまま一回転して口ひげのおっさんの喉元に剣を突き付けた。
「アジトはどこ?」
きっと今の私はものすごい顔をしていると思う……。
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