【完結!】チートな不死能力でダンジョン攻略! 相棒の最強聖女が隙あらば俺を昇天させようと狙ってくる件

ぽんぽこ@書籍発売中!!

第1章 地獄の沙汰も宝玉次第 

第1話 金の亡者が“呪いの宝玉”で正真正銘のアンデッドになり、そこへ天敵である聖女がやってくる話


『ねぇ、奥さん。聞きました? 昨晩、あのジャトレさんの家に強盗が入ったんですって!』

『聞いたわよ~! あの屋敷の成金男、遂に殺されちゃったらしいじゃない? アタシ、怖いわぁ~』

『でも賊は何も盗らずに逃げたんですってよ? なんでも、その成金男がよみがえって反撃してきたんだとか!』

『まぁ、恐ろしい!』



 屋敷の窓越しに聞こえる、近所のおばちゃん連中の声。

 昨日の出来事なのに、もう噂になっているようだ。


「相変わらず、好き勝手言ってくれるねぇ。しっかし、流石さすがおばちゃんインフルエンサー。情報共有が早いわ」



 あのおばちゃんたちが言っていたことは本当の話だ。

 昨日の晩、武装した強盗たちがこの屋敷に押し入ったのだ。


 狙いは間違いなく、俺の財宝の数々。

 俺が必死こいて集めたそれらを、奴らは奪いに来たのだ。



 それも奪われかけたのは、財宝だけじゃない。

 

 家主である俺の存在が邪魔だったのだろう。


 寝室でグッスリ寝ていた俺を、剣で腹を綺麗に一突き。

 ピン留めされた虫の標本みたいに、ベッドに串刺しにされちまった。


「アレはマジで死ぬかと思ったぜ。いやぁ、まさかあんな奇跡が起こるとは」



 ――意識が朦朧とし、死を覚悟したその時。



『――願いを』


『(なんだ? 誰の声だ!?)』


なんじの願いを、我に教えるのだ――』


 俺が溜め込んでいた財宝の山から、不思議な声が聞こえてきたのだ。



『紅い宝玉……? チッ、何でも良い……今すぐ俺に寄越しやがれ!! 誰にも宝を奪わせない、守る力を……!!』


 形振なりふりなんて構っていられない。

 魂からの願いを、あの紅い光へと叫んだ。



 その瞬間。

 部屋は紅い光で満たされた。

 そして俺の願いは、見事に叶えられたのだ。


 ――再び、この世界によみがえった。



 文字通り俺は、になったのだ。



 まぁ正確に言えば、死んだままの状態であるアンデッド亡者になってしまったのだが。



「クックック。アイツらの間抜けヅラは、マジで最高だったぜ。ありゃあ当分、悪さはできねぇだろうな」


 奇跡の復活劇のあと。

 お陰で俺は、無事に盗賊共を追い返すことができた。

 不死の身体は便利なモンで、多勢に無勢な状況でも勝てたのだ。



 ちなみにアンデッドになって良かったのは、なにも戦闘のことだけじゃない。

 なんと、食事やら睡眠、排泄までもが要らなくなったのだ。


 元々金以外に興味の無かった俺にとって、まさに理想のボディを手に入れることができた。



「ただなぁ。弱点もあるんだよな、アンデッドは」


 見た目は人間でも、種族としてはノーマルなゾンビだ。

 聖なる気のたぐいに触れると昇天する。


「ま、それもなんとかなるだろ。金さえあれば、飛ぶ鳥も落ちるっていうしな!」



 そんなわけで、俺の第二の人生がスタートした。

 当面の目標は財宝を守り抜くことだな。



 そしてそれは順調に進んでいた。

 敢えてあの盗賊たちを生かして帰らせたのが、さっそく効いていたのだ。


『お隣りの家にも、あの屋敷には近付かないように教えてあげましょうよ!』

『それが良いわね! じゃあ私は、お向かいのお宅に行ってくるわ!!」 


 口ではそう言っていても、ちっとも怖がる様子がないおばちゃんたち。むしろ話のネタができたと、喜んで駆けていく。


 だが、それこそが俺の狙いだ。



「よしよし、頼んだぜおばちゃん! 上手いこと動いてくれよな!!」


 このまま昨日の話が広まれば、余計なやからが俺の屋敷に近付くこともあるまい。



「誰にも俺の金は譲らん。悪魔が来たって渡すもんか」


 クックック。

 今の俺は不死身だ。


 どんな奴が来ようと、返り討ちにしてくれるわ!!



「すみませーん、ジャトレさんは居ますかー?」

「……??」


 おばちゃん達がいなくなったと思ったら、今度はなんだ??

 玄関の外から、女の声が聞こえてきたぞ。


 いったい誰だ。

 誰かと会う予定は無いはずだが……。



「あのー、わたしぃー。教会の方からやって参りました、聖女のミカと申しますがー」

「……あん? クソがめつい教会の聖女が何の用……え?」



 教会の聖女ってアレか?

 神聖な浄化魔法を使う、アンデッドの天敵である、あの聖女なのか――!?


 扉の向こうの人物は、間違いなくその“聖女”だと名乗った。


 自分ん家の玄関で固まる俺の背中に、冷ややかな汗が流れた気がした。

 アンデッドは汗なんてかかないはずなのに。



「もしもーし? 居ないんですか~? 勝手に入りますよ~?」


 もう泣きそうだった。

 新手の詐欺だと信じたかった。

 実は教会方面からやってきた普通の人ってオチにならないか、俺は初めて神に祈った。



 おそるおそる、玄関にある隠し窓からミカと名乗った人物を確認する。


 見えるのは、ロングの銀髪で胸の大きな女の子。たぶん、18歳ぐらいだろうか。

 ふーん、歳の割に育っているな……。


 ――って違う、今はそんな部分を気にしている場合じゃない。

 身の回りは魔法発動用の杖、聖女特有のローブ。そしてあの聖の気を纏ったたたずまい。



「ま、まずい!! ありゃ本物の聖女じゃねぇか!! コイツ、俺を浄化しに来たのか!?」


 クソッ。俺がアンデッドだと知って、わざわざやって来たのか!?

 だがしかし、俺も屋敷の財宝を残したまま逃げるのは嫌だ!!



 ――バンッ!!


「ひいっ!?」

「あっ、こんにちはー。なんだぁ、やっぱり居たんじゃないですかぁ!!」


 そんなことをしている間にも、ニコニコと笑顔を浮かべた聖女が俺の屋敷に突入してきてしまった。


 おいおい、聖女が不法侵入してくんなよ。お陰で見つかっちまったぞ……ど、どうする!?



「あの……突然すみません、貴方がジャトレさんですよね? 私、貴方にお願いがあってやって参りました!!」


 は? 俺にお願いだって……?



 ――ズザァッ!!


「お、おい。急に何を……」


 問答無用で浄化されるのかと思いきや。

 コイツは突然、玄関の床に這いつくばり始めた。


「お願いします!! 私のカラダを好きにしていいので! どうか私を、助けてください!!!!」


 地面に頭を擦りつけ、ついでにケツを突きあげながら、この女は突拍子もないことを言い始めた。


「え、あ……はあっ? 助けるって、お前をか?」

「ここでですか!? 分かりました! さっそく脱ぎます!!」


「ちょ、やめろ!! 脱げなんて言ってない!!」

「脱ぐだけじゃ足りない……!? や、優しくしてくださいね?」

「だから何を!? ちょっ、近所のおばちゃんに見つかったら死ぬ!! いや、死んでるけど、マジで社会的に死ぬんだって!!」


 やめて!! 浄化されるよりマジでつらい!!

 社会的に死んだら、俺は復活出来ねぇぞ!?


「さぁ、どうぞ!!」


 だから他人の家の玄関で服を脱ぐな!!



 

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