好きな子が彼女になりました。俺は中二病能力に目覚めました……ん?

一般決闘者

プロローグ:当事者にはなりたくなかった

「声が小さいみょん! もっと腹に力をいれるんだみょん! そんなんじゃ、奴らには対抗できないみょん!」


 拝啓、一か月前の俺。

 俺はきっと、能天気に告白のことでも考えているのだろう。

 そこはいい。そこまではいい。だって、その告白は成功するから、それだけは絶対に実行しろ。

 でも、その後のクチンだけは、絶対に打たないでほしかった。

 過去に戻れるなら、絶対に打たせなかった。

 あのワクチンには―――秘密があった。


「わ、我がひ、ひひ、左てにねむりしじゃ、じゃ、邪竜よ、我がは、はは覇道をはばみし敵をほ、葬り……」

「今度は嚙みすぎだみょん! どうして50文字たらず、すらすらと言えないみょん!?」


 俺は今、変な口調のぷにぷにとしたスライムに辱めを受けていた。

 死にたい。


(おいおい相棒、そんなんじゃ、俺の力は引き出せねえぜ?)


 ついでに、俺のことを相棒呼ばわりする、『俺の左腕』からもダメだしを食らっていた。

 死にたい。


「君の中二病パワーはそんなもんじゃないみょん! 君の常軌を逸した中二病は、世界中探してもいなかったみょん! みょんの目に狂いはないみょん! 君は中二病の天才みょんな!!!」


 馬鹿にしてるの? 馬鹿にしてるよね? 馬鹿にしてるといってくれよバーニー。

 しかし、残念ながら、俺の肩に乗っているスライムは、至って大真面目。

 せめて、冗談とか罵倒であってほしかった。

 こいつは、俺のことを大真面目に評価して、大真面目に中二病のことを褒めちぎっている。


 もう一度言う。

 死にたい。


「君の中二病は日本を、如いては世界を救うみょん! そこをちゃんと理解するみょん!」


 俺の中二病は日本を救って、世界すらも救えるらしい。

 すげえな中二病。がんばれ中二病。

 俺じゃなければ心底応援できたのにな。

 ああ、俺じゃなくてよかったって、思いながら……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る