第68話 乙女心と素直な気持ち

 おや、ロザリンドの様子が…




 ロザリンドが前回のを引きずっているために、基本はディルクのターンになります。


 スーパーイチャイチャタイムが発動。苦手な方はスルーでお願いします。






本文編集

 先日、ディルクに胸キュンしてから、私はディルクに会えていません。




 ディルクが足りません。しかしお城に行けない…まだ文官さんがしつこいそうです。聖獣様は遊びに来てくれるので、もふもふは足りているのですが、ディルクが足りないのです。お手紙をお弁当につけているので、それが唯一のやり取りです。忙しい中、それでもくれるお手紙です。わがままを言ってはいけません。学校に行けば、また会えなくなるのですから。




 私は手紙を読みました。そこには、明日休みだからお出かけしないかというデートのお誘い!ディルクに会える!




 私は早速了承の手紙をラビーシャちゃんに届けてもらうのでした。
















 翌日。ラビーシャちゃんは忍者だけでなくメイドとしても素晴らしい進化を遂げていたことを体感しました。


 美少女ロザリンドが更に可愛く…いや、綺麗になっています。大人っぽく見えるようにしたのでしょう、これならディルクの隣でも違和感はないはず!髪も清楚で大人っぽい結い方です。服も落ち着いたワインカラーのワンピース。




「ラビーシャちゃん、ありがとう!すっごく素敵な仕上がりだよ!」




「ロザリンド様は元がいいですから。素敵ですわ」




「えへへ」




 くるりと回るとスカートがふわりとした。久々に会えるから、確実に浮かれてます。




 窓の外にディルクが居るのが見えました。玄関でそわそわ…気分はご主人を出待ちするわんこです。




「お嬢様」




 う、マーサに苦笑された。本当ならお部屋待機でゆったり出てくるべきなのは理解してます。でもでも、早く会いたいんですよ!毎日会ってたのに、1週間以上手紙だけですよ?仕方ないと思うんです。




 ノックと共に玄関の扉が開きました。




「ロザリンド、こんにちは」




「あ、こんにちは…」




 え?あら?私、ディルクに抱きつくつもりだったのに、ふんわり微笑まれたら動けませんよ?




「あ、これよかったら…で、デートなら花は必要だって言われて」




 花束はリッカの花と鈴蘭だ。きちんと私の好みを理解してくれている。ディルクは照れながら私に花束をくれた。ぎこちなく、私は花束を受け取る。




「ありがとう…」




 いや、もっと喜べよ私!嬉しすぎてリアクションが取れない!うああああ、しかもこの花、指輪の花だよ!ディルクからのラブコールですよ!




「気に入らない?」




 反応が鈍い私にションボリとしたディルク。慌てて否定する私。




「違う!嬉しすぎてどうしたらいいかわからない…すごくすごく嬉しいの。ありがとう、ディルク。大事にする」




 どうにか嬉しさを伝えようと顔を上げ、へにゃりと笑って見せた。




 ん?ディルクはなにゆえ顔を背けて口元おさえてプルプルしているの?マーサとラビーシャちゃんまでプルプルしている?え?私なんか変な事言ったか?




「ロザリンドが可愛すぎる…」




「お嬢様…なんと可愛らしい…」




「お嬢様…可愛い…」




「ち、違う!な、もおおお!お花は飾っておいて!ディルク、行くよ!」




 何が違うかは不明だが、やたら恥ずかしい私はディルクの手を取って自宅を後にした。
















 とりあえず、街に行くことにして数分。…気まずい。今までは基本毎日会っていたが、こんなに期間があいたことがないので話したいことはたくさんあるはずが、何を話したらいいやら解らない。




「ロザリンド、今日は綺麗だね」




「へ?」




「あ、いや…いつも可愛いけど、今日はなんか綺麗だし大人っぽくて…ドキドキする」




「あ、ありがと…」




 むしろドキドキしまくってるのは私ですよ!期間はあったはずなのに、前回のディルクの『奥さん』発言のダメージが抜けてないんですよ。




「ロザリンド…?」




 ディルクが気遣うような声で…あわわわわ、やめて!今、今覗き込まれたら…!




「あ…」




「え?ロザリンド、顔が真っ赤だけど具合悪い?」




「体調は大丈夫。わ、私もなんかドキドキしちゃって…あんまり見ないで…お願い」




 私は恥ずかしさのあまりに涙目である。ディルクも真っ赤になって硬直した。




「か、可愛い…」




 ちょ、ディルクさん見ないでって言ったのになんで私をガン見しますか!?こぼれた私の涙を舐めた!?舐めましたよ!?




「あ…やめて…」




 しかもまた…今回は私、何もしてないのにフェロモンが!抵抗できない!力が抜ける!死ぬ!心臓破裂して死ぬからぁぁ!


















「うう…ディルクのいじめっ子」




 あの後散々いじられた私はヘロヘロです。ディルクは逆に上機嫌。尻尾もゆらゆらとご機嫌である事を示しています。




「可愛いけど、何かあったの?ロザリンド」




「私にもよく解りません」




 上手く説明できる自信がない。私自身この感情を持て余しているし。きっかけはディルクの発言だろう。彼からの優しさと未来の肯定が、おかしくなるぐらい嬉しくて…駄目だ。それ考えたら叫ぶ。なんか奇声を発しそうだ。


 思考を逸らすために繋いだ手を見る。手汗が気になりちょっと外そうとしたら、逆にギュッとされた。




「駄目。繋いでいたい」




「う…」




「嫌?」




 困った表情は、いつの間にか大人びていた。まだ少年と青年の境だが…ディルクは確かに年上の男性になっていた。




「いや、じゃない。ディルク、ずるい」




「ん?」




 首を傾げるディルクはいつもの可愛い彼だ。見慣れたしぐさにほっとする。




「その聞き方はずるい。私だってディルクと手を繋いでいたい。ディルクがかっこよすぎて、どうしたらいいかわからないからちょっと立て直したかっただけなの」




 ディルクがしゃがみ込みました。何?どうした?




「ロザリンドが可愛すぎて辛い…」




 今日はやたらプルプルする日ですね?私、なんか変な事言った?困ると言っただけだよ?


 とりあえず、ディルクが落ち着くのを待ちました。




 お気に入りの雑貨屋さんに到着。可愛い小物やアクセサリー。テンションが上がりますが、ディルクは居心地悪いだろうから買い物を手早く済ませようとしたら顔見知りの店主のおじさんに声をかけられました。




「よお、久しぶりだなお嬢さん」




「はい」




「めかしこんで、彼氏とお出かけか?」




「…はい」




 彼氏に見えるらしいですよ!やりました!ラビーシャちゃんありがとう!私は内心ガッツポーズです。


 照れながらニッコリ笑いました。




「兄ちゃん、せっかくのデートだ。可愛い彼女になんか贈り物でもして甲斐性あるとこみせてやんな!」




「か、彼氏…!」




 ディルクは尻尾をピンとさせ、嬉しそうに笑いました。年齢差があるから、普段は魔法でごまかさないと恋人には見えないからね。おじさん、商売上手だね。


 ディルクは髪留めをいくつか手に取り私にあてた。




「…あ、これが可愛い」




 ディルクが選んだのは鈴蘭モチーフの可愛いヘアピン。今の髪型でも大丈夫でしょう。揺れる鈴蘭が上品でもあります。ディルクはさっさと会計を済ませると私につけてくれた。




「うん、可愛い」




 満足そうな笑顔は、私のよく知る笑顔だった。




「ディルクはよく笑うようになったね」




 彼は当初とまどっていることが多かった。うん、主に私のせいでね。こんな風に笑うようになったのはいつからかな。




「…そうかな。そうだね。ロザリンドに出会ってから、色々あって…今は毎日楽しいからね」




 前を見ながら、彼は口元を緩めた。毎日楽しいのはいいことだ。


















 ランチを取って武器屋のほうに行くことにしたら、足首に痛みがあった。


 身長差を補うためにヒールの高い靴をはいていたから、靴擦れをおこしたようだ。まあ、我慢して後で傷を治そうと思っていたら、いきなり抱っこされた。




「きゃあ!?」




「どこか痛めた?血の匂いがする」




 お、お姫様抱っこですよ!人前ですよ!?ディルクは心配そうに私を見ている。ぎゃぁぁ!目線近い!恥ずか死ぬ!!そんな場合ではないのは理解しているけど、動悸息切れが…!




「く、靴擦れ…」




 どうにかそう言うと、ディルクは公園のベンチに上着を敷いて私を座らせた。靴と靴下を脱がされる。ディルクが顔をしかめた。




「どうしてこんなになるまで我慢したの?」




 うげ。靴も靴下も血まみれです。




「いや、武器屋さんに着いたら傷は治そうかと…」




「ロザリンドはいつもそう」




 ディルクは私の膝に頭を落とした。彼が怒っているような気がしたが、顔を上げた彼は私を再び抱っこして靴屋に行った。




「彼女が靴擦れしてしまってね。彼女に合う靴を。靴下もありますか?」




「は、はい!ただいま!」




 靴屋のおじさんは慌てていくつか靴と靴下を持ってきた。ディルクは私を椅子に下ろす。気が利くおじさんは、濡らした手ぬぐいも持ってきてくれた。ディルクがそれを受け取る。




 え?






「あ、あの、自分で…」




「俺がやる。じっとして。ダメなら血を舐めとるよ?」




「お願いします!」




 ディルクの本気を感じ取り、私は足を差し出した。すでに傷は治した。うう…くすぐったい。恥ずかしい!


 丁寧に血を拭われ、靴下をはかされた。ディルクはいくつか靴を私にはかせ、私が楽だなと思ったものを選んだ。


 いや、もうとんだ羞恥プレイでした。スカートが捲れないよう必死に押さえてましたよ。




 選んだ靴はローヒールのパンプス風なもので、色あいもワンピースにピッタリだ。ディルクはさっさと支払いを済ませると私の手を取り歩きだした。




「あの、お金…」




「これくらいは払わせて。彼氏なんだから。それに毎日お弁当作ってもらってるし」




 ディルクが楽しそうだから、水を差すべきではないかなとありがたく受けとった。




















 私達は町外れの花畑に来ています。3年前にここでプロポーズしたんだよね。




「ロザリンドに話があるんだ。周囲に目くらましと防音結界はってくれる?」




「うん」




 特に疑問も持たず、結界をはった。ディルクは私にひざまずくと、私を抱きしめた。まるで、縋るような抱擁だった。




「全部話して」




「え?」




「ロザリンドはいつもそう。自分が我慢して、与えるだけ」




「いや、私はそんないい人では…」




「俺は返せないぐらいロザリンドに貰っているよ。今の幸せは君のおかげ。君が俺のためにカーティスと組ませたり、騎士団に差し入れしてるのも知ってる。何か動いていることも。だから巻き込んで。隠さないで。何があっても、俺は一生君の味方でいるから」




「うん…」




 私はリンの知識、ロザリアの予測、そして現状導き出されるものを彼に隠さず伝えた。そして、私の弱点は間違いなくディルクだから、自衛のために渡すものは必ず受けとって欲しいとお願いした。




「わかった」




 色々難しい話しをして、ディルクは考えこんでいる。ここぞとばかりに観察する。睫毛長いな…




「ん?わ!」




 距離が近いからビックリしたもようです。目が合うと、また動悸が…




「な、何?」




「いや、ディルクを観察してた」




「なんで観察?まぁいいけど」




「きゃあ!?」




 胡座をかいたディルクのお膝に座らされる。




「好きなだけどうぞ?」




 無茶いうな!近い近い近い!!ほお擦りはやめてください!恥ずか死ぬ!




「あ、あうう…」




「ロザリンド、いつも可愛いけど今日は一段と可愛い…今日はどうしちゃったの?」




 うっとりしたディルクを見て、私は覚悟を決めた。確かに普段なら私がベタベタしたがるもんね。彼を不安にさせたのは私だ。隠さないでとお願いされたんだ。




「この間、ディルクに笑っててって言われて私が寂しがってるのに気がついてくれて嬉しくて、奥さんって言われて…私はディルクと結婚するんだ、当然だよねって言われたみたいで胸がギュッてなった。最近会えなくて、寂しくて会いたくて…久しぶりに会ったら、ディルクが好き過ぎて恥ずかしくて…上手く出来なかった。今も恥ずかしい。ディルクがどうしようもないくらい…すきなの」




 ディルクさんや、私が頑張ったのに何故固まる。わ、私ごと倒れた。




「あーもう反則!どんだけ俺を好きにさせれば気が済むの!普段意地悪で可愛いのが素直で可愛くなったら破壊力が凄すぎる!!俺の心臓がもちません!!」




 試しに心音を聞く。ああ、同じぐらい速い。




「ふふ」




「俺も好きだよ、俺の奥さん。俺、決めたから」




「ん?」




「ロザリンドは自分を大事にしない所があるから、俺が甘やかす。もうデロデロに甘やかすから、覚悟してて?」




 いたずらっぽくウインクをしたディルクは、可愛いのに男らしくて…ディルクは私を萌え死なすつもりじゃないかと思いました。

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