第11話 感情∪感覚
では、何かあったら呼ぶがよい。と言い残して、
『
それと同時に僕の胸から出てきた光も形を為すと、アウラに変化した。
見た目は今まで見たものとそっくり同じである。
ただ契約者になった今なら自分のものとそうでないものの区別がつく。一つだけうっすらと繋がりのようなものを感じるし、アウラを通じて力のやり取りがあるのがわかる。これが魔力ということなんだろう。
亜子先輩が口火を切った。
「...まずは無事に契約できてよかったな。ようこそ、『愉悦の眷属』へ。改めてこれからもよろしく頼む。」
「はい!ありがとうございます。...でもまさかいきなりあんなことをするなんて思ってませんでした。」
亜子先輩が盛大にため息をついた。
「あれか......あれはなぁ。あの『
悪魔だからな。といった。
「気を付けろよ。あれに性別なんて概念はないから、女形体も存在する。半裸で変なポーズするぐらいなら全然するぞあいつ。」
男性が呼び出すとそういう方法がとられがちだな。とのこと。
・・・・・どうりで誰が呼び出すかで、押し付け合いになるわけだ。
「まぁそんなことはいいんだ。これで晴れて伊吹も
腕組みをして考え出した。
「......そうだな。とりあえずは苦手意識の克服から行こうか。伊吹、試しに私の目を見て話してみろ。」
ドキリとした。僕はこの部屋に入ってから、というかさっき廊下で青葉先輩と目を合わせてしまった時以外、今日は誰とも顔もあわせていないのだ。
言われて顔を向けようとしても、固まったかのように首が動いてくれない。
まるで動作不良を起こしたロボットのような気分だった。
「......まぁいきなりは難しいよな。悪いが少し荒療治をするぞ。」
そういうとつかつかとこちらに近づいてきた。
「いったん目を閉じろ。」
言われたとおりにした。
すると亜子先輩が、両の手で僕の両頬を挟むと、グイっと自分の方に向けた。
「!??」
驚いたのと、恥ずかしいのでパニックになりそうだった。見えていないが今、目を開けたら顔が合うと思っただけで、顔もどんどん熱くなっていくような気がする。
「...落ち着け。大丈夫だ。思い込みを捨てて、冷静に今の自分の感覚だけ信じろ。深呼吸してもいい。」
言われるがままに深呼吸をしようとして気が付いた。冷静すぎる。今までの僕だったらこんな状況に陥ったら、パニックで人のいう事なんか聞こえてもいなかった。
「いいか?お前がパニックになりそうになっているのは、今までの経験からくる思い込みだ。『頭で』、パニックになるはずだと思っているからそういう反応が出るだけだ。
今のお前はもう眷属だ。羞恥心はもうお前を苦しめない。」
深呼吸をして考えた。そうだ、今の状況でパニックを起こしていないのだ。
女性に触られているという事を意識すると、一瞬頭の中にかっとエネルギーがあふれるのだが、数秒で胸の真ん中から何かが抜けていく感覚がある。それと同時に頭の中の感情の波が静まっていくのだ。
胸から抜けたなにかは、そのままアウラに吸い込まれていった。そしてアウラを通じて何かが戻ってくる。そして、契約の時に僕の中に沈んでいったものに吸い込まれて蓄積していった。
「...魔力転換の感覚をつかんだな?よしそれでいい。それが『愉悦の眷属』の魔力の生成法だ。」
喜ぶ亜子先輩の声が聞こえてきた。
「じゃあ、レッスン2だ。目を開けてみろ。」
......大丈夫だ。冷静になれと自分に言い聞かせながら恐る恐る目を開く。
するとこちらを見て笑う先輩と目が合った。
「!?」
今までの比ではない位に頭の芯が燃え上がったような気がした。
確かに感情は変換されているのだが、それ以上に生成される分が多い。
結局10秒も保たずに目をそらした。
「よし、上出来だ!よくやった。」
無理をさせてすまなかったな と亜子先輩に謝られた。
「青葉から聞いていた通り、伊吹の苦手な行動は、とりあえず2つだな。1段階目は『顔を合わせる』こと、2段階目は『目を合わせる』こと。どちらも『
「伊吹、ちょっと酷かもしれないが、今後の日常の中でこの動作をしていくことになる。
それに、君自身の望みでもあるのだろう?と先輩は笑う。
「これならコミュニケーションの練習も出来て、一石二鳥だ。魔力も順調に蓄積できるだろうしな。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます