Prelude To Blues(私の推薦盤)

さとみ・はやお

●アルバート・キング「BORN UNDER A BAD SIGN」(Atlantic)

ブルースとよばれるジャンルのレコードやCD、これまでいったい何点がリリースされてきたことだろう。


そのすべてを購入し、聴くことなど、当然不可能である。


いやいや、たったひとりのアーティストに絞ってみたところで、その全てを収集することさえ、容易ではない。


まさに、亡羊の嘆き、である。


さて、このHPではこれまで、いわゆる「三大キング」については、まったく触れずにきていた。


理由はごくシンプルである。


いずれもあまりにビッグな存在であり、発表されている音源が多すぎて、重要作だけでもハンパな数ではない。


いってみれば、各人をテーマにしただけでひとつの研究書、ひとつのHPが出来てしまうくらいである。


どれか一作を適当にピックアップして、気軽に紹介できるような対象ではない、そういうことである。


しかし、だからといって彼らにまったく触れずしてブルースを語るわけにはいかない。


そこでまずは、個人的には三人中一番気に入っているアルバートを取り上げてみたい。


彼のアルバムも、編集ものを含めれば40枚をゆうに越えている。


だが、その中から誰もが納得行くベストな1枚をとなると、結局この「BORN UNDER A BAD SIGN」ではないだろうか。


1966~67年の録音。彼の出世作ともいうべきタイトルチューンをトップに、11曲が収められているオリジナル・アルバム。


バックをつとめるのは、No.1インスト・グループ、ブッカ―・T&MG'S。ホーンはこれまた一流の、メンフィス・ホーン。


だから、出来の悪いわけがない。


MG'Sのツボを押さえたシンプルなアレンジをバックに、アルバートのシブーい歌と、トレードマークの泣きのギターが全開である。


彼のギター・ワークは金太郎飴、といってしまえばそれまでなのだが、ハマると実にくせになるヤクのような魅力がある。


一聴して彼の音とすぐわかる、ナチュラル・ディストーション。クォーター・トーン使いまくりのベンディング・プレイ。


もう、たまりません。


タイトル曲、邦題「悪い星の下に生まれて」や「CROSSCUT SAW」のサウンドは一世を風靡、クリームも「ストレンジ・ブルー」などでまんまパクったのは、有名な話である。


そのほか「OH,PRETTY WOMAN」「AS THE YEARS GO PASSING BY」、いずれもベリーグッドな出来ばえ。ファンキーなブルースが炸裂!である。


リーバー=ストーラー・コンビの名曲「KANSAS CITY」、ZEPが「HOW MANY MORE TIMES」でパクった「THE HUNTER」のオリジナルも収められていて、これまた聴きもの。


ラストになぜか、レイ・ノーブル作のスタンダード「THE VERY THOUGHT OF YOU」まで歌っていて、アレレという感じはあるが、これはシャレということで、笑って見逃していただきたい。


この一作でアルバートは、ソウル時代のブルースの、文字通り「王座」についた。


彼が他界してはや8年以上が過ぎたが、いまだに彼をリスペクトするミュージシャンは数多い。


まだまだ、このアルバムが忘れ去られる心配はなさそうだ。なんとも、「強運」の一枚ではある。


(2000.11、原文ママです)

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