掌編 詰め合わせ パック
小瓜 幾
足跡の墓標
人魚の亡き骸を埋めた。
全て泡になってしまって、波にさらわれる前のそのひとすくいの泡をかき集めて墓をたてることにした。
穴を掘るあいだにも泡はひとつ、また一つと消えていって、埋めるころにはなんだかよくわからないものになってしまっていた。
泡がはじけるように、記憶のひとつひとつがぱちんと音をたてて消えていくのを感じた。
埋め終わったときには、その穴を何故掘ったのかもわからなくなっていた。
泥塗れになった手をはたいて、同じく泥濡れになった服を見て、自分は本当に何をしていたのだろうと顔をしかめる。
帰ろうとして、自分が埋めたばかりの地面を踏んでしまいバランスを崩してたたらを踏む。
とんだ災難だ。
やれやれ、と帰路についた。
足跡のついた墓標が、静かに波の音を聴いていた。
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