第31話 フィリスの街と⦅魔導鎧⦆
◇◇城塞都市⦅フィリス⦆の市街地──
「おお、すごい賑わいだな」
「ええ、辺境と聞いて侮っていましたが……一見するに
セリエは門を出て直ぐに広がる光景に驚いている。自らの出身地である王国の大都市⦅レーヴェン⦆でも、門を入ったすぐ側まで街の住人が溢れ返ることはないからだ。
「そんなに驚くことはない。もっと街の中まで進めばこの賑わいが嘘みたいに静かになるぞ?こんなに賑わっている理由は、この街一番の⦅大広場⦆がここにあるからさ。」
あれからフィンとセリエは何事もなく検問を終えて⦅黒門⦆を通過し、フィリスの城下街に足を踏み入れていた。
流石は現在大陸で最も
「っえ!?ここが街の⦅大広場⦆ですの!?普通、広場と言えば街の中心部にあるものではないんですの?」
セリエはシパシパと大きな目を
「そう、普通はな。これはこの
フィンはセリエにそう応えた。何もフィンとて現実世界でリセマラばっかりやっていたわけではないのだ。
ただ、
彼は公式サイトやら掲示板をチェックしたり、公式の出版したファンブックなども持っていたので、何気に自分でプレイしたことのある以上にこの世界について知っている。伊達に、抜き打ちで行われたものを含んだ学園都市の試験を⦅全て満点⦆とれるわけではないのだ。
フィンは。あらゆる国の大まかな国情や、国境不問で常識と言えるほどに出回っている情報についてはこの世界の一般的な⦅学者⦆のそれを凌ぐほど持っている。
この街の⦅大広場⦆が黒門の直ぐ側にある理由は、この街が戦時を意識した作りになっており、戦時にはここが出撃を待つ軍隊の待機場所兼ねて、練兵場や配給場所にも使用されるからだ。
非常に合理的な様であるが、この作り──実は門を抜かれた場合には街の中心部まで一気に敵に攻め込まれる危うさを有している。
絶対に⦅黒門⦆が
◇◇◇
「私、これまで貴方に尋ねたことはありませんでしたけれど、フィンは
セリエはまた彼を試すような顔をしてフィンに尋ねた。
「いいや?全然違うけど?」
フィンは真顔で即答する。
「ふぅん。なら、どうしてそんなに色々知っている風に見えるんですかしらねえ。いずれ、貴方の故郷とやらにも行ってみたいものですわ。だって──」
セリエは謎に包まれたフィンのプライベートに興味深々である。
だが、彼女がそこまで口にしたところでフィンの顔を改めてよく見れば、彼は少し困ったような表情で彼女に笑みを返している。
「セリエ……。そうだな。いつか、セリエを連れて行ける日が来るといいな」
フィンの笑顔から、何処か悲しみにも似た感情を察してセリエは言葉を失う
(本当に
セリエはそんな言葉をつい口にしたくなったが、結局彼に伝えることはできなかった。
彼女は思いがけず暗くなってしまった雰囲気を誤魔化そうと、再び自分の周りに目を遣る。すると、王国ではあまり見かけない形の⦅鎧⦆を身につけた冒険者達が彼女の目に飛び込んできた。
「ねえフィン、あの方達が身につけている⦅鎧⦆──なんだか面白い形をしていますわね」
そう言ってセリエが目で合図を送った方へとフィンも顔を向ける。
言われてみれば、街の中には独特の装具をつけた人間がチラホラ歩いているような気がする。
「ああ、アレは⦅魔導鎧⦆だ──学園で習ったろ?帝国の魔術師は面白くって、自らの魔力をああして
近年益々発展を続ける帝国は、大陸の中で最も魔導科学の発達した国だ。とはいえ、やはりゲームを元にしたこの世界はその技術進展の仕方が独特で、本来あるべき段階を踏まずにポンと新しい技術が生まれていたりもする。
魔導鎧というのもその一種で、帝国の秘匿した技法により作られたメカメカしい鎧だ。基本的に帝国の領内からは
「へぇ、アレがそうですのね。なんだかカッコいいわね。魔力を纏う……というならフィンにも扱えるんではなくって?お金ならありましてよ?」
セリエはワクワクとした表情でフィンに迫る。
「わわっ、なんだよ無理だって。アレは帝国に所属した魔術師しか使わせて貰えないし、そもそも俺はあんな
セリエの言葉にフィンがそう返すと、彼女はガッカリとした様子をしつつもプクと頬を膨らませている。
「もう、せっかくフィンの喜ぶ顔が見たいのに……残念ですわ!」
セリエはそう口にして、なんとかフィンの気を引こうと次の
◇◇◇◇◇◇
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