第2話 特典と魔法

「よく言いました!ご主人様!!エオリス様、さっそく始めちゃいましょう!!」

 すっごく嬉しそうに話を進める召使いとそれに微笑みかけるエオリスだった。


「ふふふ、ではまず肉体を作り直しましょう。」

 そう言うとエオリスは手をすっと俺に向け、なにか光を俺に向けて照射してきた。その瞬間俺の意識は薄くなっていき、世界は暗転した。


「ごしゅじ~ん…もう起きても大丈夫ですよ~?」

 頬を爪でつんつん突かれる感触と召使いの声が聞こえてきて俺はゆっくりと目を開いていく。


「もう、おわったの?」

「はい、肉体の再生と新しい能力の付与は無事完了いたしました。」

「ご主人は神様の加護で普通の転生者より能力高めでございますよ!」

 エオリス様と召使いがそう伝えてくる。


「年齢的には18歳で向こうの世界では成人年齢です、少し外見も変わってるかもしれませんが新しい体はいかがでしょうか?」

 エオリス様はそう言うと姿見を呼び出し、俺に新しく生成した体を見せてきた。

その体は細身だが筋肉質で引き締まっていて正直理想的なスタイルだった。顔も自分の18歳の頃雰囲気で違和感も抵抗もなかった。


「パンツ一枚だけなのと髪色がちょっと青紫のような色をしていて不思議ですけど、すごくいい感じですね。」

 そう言うとエオリス様はふふふと笑い次の準備を始めてくれた。


「ただいま衣服も用意しますね、向こうの仕様で少し違和感があるかもしれませんがそこは慣れてくださいね?」

 衣服は想像通りのよくアニメやマンガにある布の服に皮鎧と鉄のブレストプレート、グローブにブーツと冒険者な雰囲気の衣装だった。


「大丈夫です、この服はイメージ通りでした。」

「なんとなく雰囲気も明るく若くなってかっこよくなったじゃないですか、いい感じですよ?ご主人様~!」

 召使いもニヤニヤしながら見つめてきた。


「ところで、気になっていたのですがこの左腕の金色の腕輪は何ですか?明らかにほかの衣装と雰囲気が違うのですが?」

 そう肉体が再構成された時から左腕についていたこの腕輪は明らかに雰囲気が違く外せる気配もなければただの装備でもない気がしていた。


「それは転生特典でございますよ、ご主人には最初から最強の剣とか無いので代わりのアイテムでございます。」

 武器が無い代わりの何か能力のあるアクセサリーのようだ。


「その腕輪は武器を何でも10本まで格納できる次元の腕輪と封魔の鎖グレイプニルを組み合わせた特別製の腕輪で申し訳ないのですが外すことはできません。」

「ちなみに、グレイプニルが格納枠を一つ消費してるので実質9本まででございます。」

 特典なのにちょっと損した気分になってしまった。


「グレイプニル…鎖、なんですか?」

「はい、貴方の魔力を消費し無限に伸び続けることができる鎖で捕らえた者の魔力を封じる力もありますので試しに出してみたらいかがですか?」

 俺は腕輪の中のグレイプニルを意識し、丁度いい的になりそうなカワイイ召使いが居るのでそれに向けて体の奥底から力を左腕に流し込み、鎖を飛ばすイメージをしながら腕を思いっきり前に振り出してみた!


「ちょっと!?ご主人なにをするのでございますか!!早くほどいてくださいよ!!きついです~!!!」

 金色の鎖は目標にイメージ通りに飛んで行った、先端が鷲の足のようになっていて何かを掴んで引っ張ったりすることもできるみたいだ。

 騒いでる召使いを見るに俺のイメージ通りに飛んでいき魔力さえあれば無限に伸び続けるらしい。


「武器としてはいまいちかもしれませんが、いろいろと便利に扱えるとは思いす。」

 エオリス様は微笑みながらそう答えてくれた。


「ご主人~~~~!!」

 召使いがうるさいので解くイメージをすると、鎖は光になってスッと消滅していった。


「緊縛プレイはあたくし好きじゃないので勘弁してくださいませ!」

 何を言ってるのだこの召使いは…。

 確かに武器としては難しいけどいろいろ想像通りの冒険が待っているなら便利なアイテムなのは確かだろう。


「それでは、最後に魔法について説明しますね。」

 異世界の定番、魔法!ある意味一番楽しみなところだ。


「簡単に言いますと、魔法というのはその人の認識とイメージで後は魔力を流すだけでございます。さっきの鎖と基本は同じですね。」

 そういいながらムシュフシュは両手で火の玉と雷の玉を作り出して見せてきた。


「ファイヤーボールとか火炎球とか名前が違くてもイメージが一緒なら全く同じ魔法になりますね、要はイメージと魔力量次第でございます。」

 両手の玉をパンッと手を叩いて消して見せながらわかりやすく説明してくれた…案外優秀な召使いなのかもしれない。


「イメージね、やってみるよ。」

 俺は手のひらに火の玉を思い浮かべながらさっきの感じで魔力を流してみる、すると手のひらにイメージどおりの火の玉が現れメラメラと燃え上がっていく。


「いい感じですね、それを更に強く大きくイメージして前に飛ばして見てくださいそれが俗に言うファイアーボールでございますよ。」

 召使いにそう言われ火力をあげようとしたその時だった。


「っちょ!?」

 そのまま火の玉が急に弾けて消滅してしまったのだ。


「ご主事、イメージするの下手っぴですか?」

 ニヤニヤとそう言ってくる召使いにムッとしつつもう一度火の玉をイメージしてみるのだがどうしても一定以上の大きさにしようとすると弾けて消滅してしまうのだった。


「火と相性が悪いのかもしれないですね、他の属性で試してみたらどうです?」

 そう言われて試してみたのだが結果から言うとすべて一定以上の大きさになると弾けて消滅してしまった。


「発生は問題なくできるのに大きくしようとすると弾けてしまう…ひょっとして、グレイプニルの効果が自分にも?」

「それだとそもそも発生自体できないのでご主人のセンスが無いってだけじゃないのでございます?」

 やれやれというポーズの召使いにあっさりと否定されてしまった。


「魔力は大量にあるはずなので、何かの拍子に使えるようになるかもしれませんしゆっくり試してみてください。」

 俺と召使いのやりとりを微笑みがら見守っていたエオリス様にそう言われ、魔法は渋々諦めることにした。


「それでは、そろそろ異世界への扉を開こうと思うのですが覚悟はよろしいですか?」

 いよいよ準備が終わり新しい世界に行く時が来たみたいだ。


「はい、よろしくお願いします!」

「それでは、タカユキ様を異世界エヴェルガリアへ送り届けて差し上げましょう。どうかご武運を!!」

 エオリス様がそう言うと俺の足元に魔法陣が展開されだんだんと光に飲まれていき意識が薄くなっていく、エヴェルガリアでの新しい生活がこれから始まるのだ。


「あ、言い忘れておりましたがタカユキ様の思考と言いますか感性に少々こちらで修正した部分がありますのでご了承を。」

「え、ちょっとまってそれって!?」

 そこで完全に光に飲まれ意識が途絶えてしまった、最後の最後にすごいことを言われた気がする。

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