夏休み特別SS とある夏の一日(※生存報告)

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お久しぶりです。体調不良や書籍の作業、それからプライベートがかなり忙しくて更新止まっております。

お待たせしてしまって申し訳ありません。また余裕が出てきたらweb版も再開します。

ひとまず生存報告もかねてSSを書きました! どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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 ――夏休みのしほはぐーたらである。


「しぃちゃん? もうそろそろ起きなさい」


「あふぅ……もう少しぃ」


「もうお昼の十二時よ。夏休みだからだってだらだらするのはやめなさい」


「……はぁい」


 母親に起こされて布団から出たしほは、あくびをこぼしながら部屋を出た。

 その顔はまだまだ眠そうである。


 夏休みなのでたっぷりと夜更かしをしている彼女にとって、十二時はまだまだ朝だった。

 もう少し惰眠を貪りたいところだが、母親の機嫌を損なうわけにはいかないので仕方ない。


 顔を洗って食卓に座ると、母親がオムライスを出してくれた。

 その瞬間、起こされて不機嫌だったしほはたちまちに笑顔になった。


「やったー! オムライス♪」


「ちゃんと起きたしぃちゃんにご褒美よ」


「ママ、ありがとう! いただきまーすっ」


 霜月家の教育方針は『溺愛』である。

 娘を愛しているさつきはなんだかんだしほを甘やかしていた。


 おかげでしほはとても嬉しそうである。


「もぐもぐっ。ごちそーさま!」


 よく噛んで食べると時刻は十三時となっていた。


「しぃちゃん、今日はどうするの?」


「今日は……とりあえず幸太郎くんのところに行くわ!」


「今日『も』でしょう? 毎日行ってるじゃない」


「えへへ~」


 お昼の後は大好きな彼の家に行くことにしている。

 これはもう日課と言っても過言ではない。母親もそれを把握しているようで、微笑ましそうにほおを緩めていた。


「じゃあ、準備ができたら送ってあげるわね」


「うん! すぐ着替えるからちょっと待ってて!」


 急いで身支度をして、家を出るしほ。

 母親のさつきはすでに車に乗り込んで娘を待っていた。


 これもまたいつものことである。幸太郎の家は少し距離が遠いので、さつきがいつも送迎をしていたのだ。

 娘を乗せて、車が発進。だいたい二十分くらいで彼の家に到着した。


「ママ、ありがとう! いってきま~す」


「いってらっしゃい。しぃちゃん、幸太郎によろしくね」


「はーい!」


 車から降りて、幸太郎の家のインターホンを押す。

 毎日このくらいの時間帯に来ているおかげか、中山家もしほの到来を分かっているようですぐに出迎えてくれた。


「……なんで来たの?」


「あら、あずにゃんったら♪ 本当は嬉しくせにツンデレしててかわいいわ」


「ツンデレなんてしてないもん! ふーんだっ」


 扉を開けてくれたのは幸太郎ではなく、義妹の梓だった。

 彼女は毎日のように訪れるしほに敵意を見せているが、しほはそんなことまったく気にせずのほほんとしている。


「とりあえずゲームでもしましょう? 今日もボコボコにしてあげるわね」


「はぁ? 昨日はたまたま梓が負けたけど、総合成績はこっちが上なんですけどぉ~」


 というわけで、二人はゲームで対戦することに。

 なんだかんだ仲良しなのは相変わらずで、毎日こうやって遊んでいた。


 中山家では、どちらかというと梓がしほの遊び相手になることが多い。

 幸太郎は話し相手にこそなってくれるが、ゲームはあまりしないのだ。


「あ、もう来てたんだ。しほ、いらっしゃい」


「幸太郎くん、お邪魔してるわ♪」


「ゆっくりしていって」


「霜月さん、早くして!」


 彼の朗らかな笑顔に癒されつつ、梓にせかされてすぐにゲーム対戦を始める二人。

 それからは幸太郎の家で夏休みを満喫した。


 梓とゲームをして、幸太郎が用意してくれたおやつを食べて、負けてふてくされた梓が部屋に逃げて、幸太郎とオシャベリして……そうしていたら、いつの間にか夕方の十九時になっていた。


「……あ! もうママが来てるって」


 スマホにさつきからの連絡が入って、しほはソファから立ち上がる。

 もう帰宅の時間だった。


「幸太郎くん、ママが夜ご飯のおすそ分けで唐揚げを持ってきてるらしいわっ」


「おー。梓も喜ぶよ……ありがとうって言わないと」


 幸太郎と一緒に外に出ると、ちょうどさつきも車から降りていた。

 からあげを手渡して、さよならの挨拶を交わしてからしほは車に乗り込んだ。


 窓越しに、彼が見えなくなるまで手を振る。

 そして家に到着したらすぐにごはんを食べた。


「ごちそうさま♪ からあげ美味しかったぁ~」


「お粗末様。パパが帰ってくるまでにお風呂に入っておきなさい?」


「分かった!」


 大好物のからあげをたくさん食べた後、お風呂に入って部屋に戻る。

 そのころにはもう夜の二十二時を回っていた。


 普段であれば学校に備えて寝る準備を始めるところだが……夏休みなので、まだまだ夜は終わらない。


『幸太郎くん、やっほー♪』『ひまぁ』『返信して~』『おーい』


 とりあえず幸太郎にメッセージを送って、返信を待つ間にゲームをする。

 これが彼女の夜の日課だった。


『ご、ごめん! 夜ご飯の後片付けをしてて今気付いた!』


『遅いわっ。まったく……許してほしかったら幸太郎くんの写真を送って?』


『自分の写真は撮ってないからないよっ』


 幸太郎も最初の方こそすぐに返信してくれるのだが、彼は早寝早起きなのでしばらくすると寝落ちして返信がなくなる。


 その次は、しほと同じように夜更かしをしている梓にメッセージを送って、今度はどちらが先に寝るかと言うチキンレースをしながら夜を過ごした。


『あずにゃん、そろそろ眠いでしょ? もう寝てもいいのよ?』


『別に眠くないし! 霜月さんこそ寝たら? 負けることは恥ずかしいことじゃないよ?』


 お互いに煽り合いながらも、朝方の四時ごろになるとさすがに眠くなるわけで。

 同じタイミングで二人とも眠りにつくので、勝敗は決することなく終わりを迎えた。


 そしてお昼の十二時になり、さつきに起こされる。

 そうやって、夏休みのしほはとてもぐーたらな毎日を過ごしていた。


 とても幸せな毎日は、しほにとってかけがえのない思い出である――。





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お読みくださりありがとうございました!

『霜月さんはモブが好き』5巻の発売が決定しております。

また、コミカライズ1巻も発売しておりますので、ぜひよろしくお願いしますm(__)m

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