きつねとたぬきの化かし愛
ヘイ
可愛らしいあなたと
ある所の狐と狸はどちらがより上手く化ける事が出来るか、人を化かす事ができるかで競争をしていました。
「やい!
狐の
狐太郎の言い分としては狸子は俺の次に変化がうまい。他の狐も狸も化かしが下手くそだとの事です。
「また来たんだ」
「ふん、来てやったぞ」
狸子としては呼んでもいないのに、とも言っても良いところだが野暮な事を言うつもりもなかったようで。
「ご飯は食べてきた?」
と、尋ねれば。
「まだだ」
などといつも通りに答えが返ってきます。なら良かったと狸子は押し入れからカップを取り出して『赤いきつね』を狐太郎に差し出しました。
「ほら、いつものね」
ニコリと笑った狸子に狐太郎は少しばかり申し訳なさそうな顔をして一言だけ告げました。
「きょ、今日はそっちのが食べてみたい」
狐太郎が指差したのは狸子の手元にある緑色のカップの『緑のたぬき』でした。
「でも、狐太郎。こっちは油揚げないよ?」
「今日は油揚げの気分じゃないんだ」
ツンとしたように鼻を鳴らして狐太郎は外方を向いてしまいます。それが狸子には愛くるしく映って、くすくすと失笑が漏れてしまいました。
「うん。こっちも美味しいよ」
慣れた手付きで蓋を半分まで開き、
「天ぷらはね、お湯を注いでから乗せると良いよ」
「……そうか」
やけに素直な狐太郎を見て、微笑み
「今日の化かし合いは負けないからな」
「勝つまで続けるの?」
「ああ」
「そっか」
なら、ずっとこのままだ。
狸子には分かっていたようです。
狐太郎は素直ではないからか、化かし合いも何かと理由をつけて自分の負けと言うことにして、何度も何度も訪ねてくる理由を作っているのです。
今日の化かし合いは狸子が勝ったようで、「明日も来るからな」と捨て台詞を吐いて返っていく狐太郎を嬉しそうに見送るのでした。
めでたしめでたし。
きつねとたぬきの化かし愛 ヘイ @Hei767
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます