第二部 ジル編
1話
ロイス家といえば、優秀な騎士を数多く輩出する名門一族だと誰もがそう口にするだろう。
そのため、過去100年に渡り、ハーマン帝国の白・赤・緑・青・黒の5つある騎士団団長の座の内の、最低1つの席はロイス家の者が務めていた。
それがロイス家の誇りであり、『皇帝の剣』としてその役割を忠実にこなしていた。
だが、その誇りも数年ほど前から、雲行きが怪しくなってきた。
ハーマン帝国は侵略国家。
国の経済を、農業、林業、漁業、製造業などの他国ではごく普通に営まれている事で回さない。
――蹂躙。土地があれば戦争へ。
戦争で得た利益のみで、経済を回して、繁栄し、世界で一、二を争うほどに強国に成り上がった。
そして、それはまだ幾つか滅亡せずに存続する弱国からの激しいマークにあうことを意味する。
帝国も大量の人材を注ぎこみ、侵攻しようとしたが――。
勝利こそしたが、引き換えに失ったものがあまりに多かった。
死者多数。
最前線で奮闘したロイス家の者も大勢亡くなり、中には次期騎士団長と期待されていた若手もいた。
ロイス家はこのままでは100年にかけて守ってきた『一族の誇り』を失うだろうと、周囲から噂されていたが、噂をかき消すかの如く、当主であり黒の騎士団団長ロック=ロイスは騎士団全員の集会で発表した。
隠し子の存在を。
そして、
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