第24話 青の神剣

「よぉし、かなり進んだよな! これで最後くらいかな?」


「おかしい……こんなのなぞなぞじゃない……」


俺は張り切って腕を回し、ノースは何故か頭を抱えている。


今回ぶつかった壁は今までと違くて、とても豪勢な感じだった。


これはボス部屋前のやつと解釈してもいいのかな?


「よぉし、問題こいやっ!!」


俺はぱちんと自分の二の腕を叩いて、壁に書かれた文字を読む。


「『増える事はあっても、減る事はないものなあに?』」


「これは……難しいですね」


俺が読み上げた文章に、ノースがつぶやく。


「いいや、簡単さ。こんなの秒だろ。」


これまでの難易度と比べればたしかに難しいが、少し考えればわかることだ。


多分、うちの団員なら全員わかるだろう。


「へ? ほ、本当ですか?」


ノースは驚いたような顔で俺を見る。

そうか。こいつは女だからわからないのか。


これは男女差別とかではなく、ただそれを気にしないということ。

いや、逆に当事者たる彼女は最も気にしているのでは…………?


「マジだ。こんくらい余裕のよっちゃんイカだ。」


俺は頭に浮かんだ悲しい考えを消して、サムズアップする。


「正解はっ!!!」


驚愕の表情を浮かべるノースに背を向け、俺は壁に向けて大音量で、




「おっぱい!!!!!!!」





そう叫んだ。


言ったぜ。言ってやったぜ。

ノースにセクハラで訴えられないか心配だが、言ってやった。


増える事はあっても、減る事はないもの。そんなのおっぱいに決まってる。


小さい胸は成長する可能性を秘め、大きな胸は退化する心配がない。なんで素晴らしいんだ。


確かに時が経てば垂れたり形が悪くなったりするかもしれない。しかし、それは退化ではなく、成長。


時間が経つに連れて変化していくのもまた、おっぱいの特徴なのだ。


あぁ、なんで素晴らしきかな。おっぱい。


俺がおっぱいについて熱く語っている間に、扉は鈍い音とともに開いていた。


「や、やっぱりおかしい。こういうのは年齢とか、そういうのが答えのはずだよ……」


ノーズがやっぱ何がつぶやいているが、俺は気にせずに扉の向こう側を見る。


「ボス部屋っぽい感じだな」


今までの薄暗い階段と違い、この扉の奥は見た感じ開けている、大きな部屋みたいな感じだ。


もちろん段差もなく、地下なはずなのに光もある。


部屋の奥にはなぜか知らんが半円型の池?みたいなのがあった。海の下ってのを意識してるのかな。


「行くか……」


「は、はい!」


俺とノースは頷き合って、その部屋に足を踏み入れた。


その瞬間、ゴゴゴといかにも重いものが動いているという効果音とともに、部屋の奥に丸い台座が浮き上がる。


そしてその上には……………



「“青”の神剣」



俺はいつになく真面目な顔でつぶやく。


これが、青の神剣。

俺たち海賊が一生をかけて求める、七つの大財のうちの一つ。


「ヤッベェな……」


「す、スゴイ……」


俺とノースは薄暗い部屋の中で眩いばかりの光を放つ青の神剣を見つめる。


それは神剣と呼ぶには、少しばかり質素なものであった。


大きなサファイヤなどの宝石も、職人の手がこもった装飾も、何が目を瞠るようなものはない。


素人目に見れば、ただのそこら辺の剣と変わらないだろう。


そう。一目でわかるような、その尊厳を全面に押し出すような見た目ではない。


ただ、その代わりに。


「ヤバェ」


俺は今一度、つぶやく。


神剣は、圧倒的なオーラを放っていた。


ただの剣。長くも短くもない銀色の刀身に、申し訳程度に色付いた青色のライン。


質素たるそれは、研ぎ澄まされたがゆえのものである。


無駄を一切省いたその姿は明らかに別世界な、別格なオーラを放っている。


人の身にして操らせないというような確固たる意思を感じさせてくる。


俺がこれをどうにかできるのかと不安に思い始めたとき―――――






「やっほー。驚いてくれて何よりだよ!」





―――――そんた、間の抜けたおちゃらけたような、明るい声が響いた。

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