第4話 Aye!! 寄港と保安官
「さてと、今回は楽でいいな。」
俺は自分の操作する船の前をゆく、
港に入るには検閲を受けなければならず、それで海賊とバレれば港に入れない。最悪の場合、捕まってしまう。
だから、毎回港に寄るのは結構神経を使うのだが、今回ばかりはその必要はない。
なぜなら、この港は海賊にも寄港許可を出すような珍しい港だから。
陸の上で問題行動を起こさないという条件付きではあるけど、俺らだってそんな常日頃からカッカッしてるわけじゃないし、そんな簡単に警察沙汰にはならない。
なので、問題はナシ。
全部の港がこのスタイルならいいのだが、悲しいことに海賊に優しい港なんて数えられるくらいしかない。
しかも、その大半が同一国にあるので、ほぼすべての港で細心の注意を払うしかない。
ったく、そんなんだから寄港回数が少ないんだ。もっと海賊に優しくしろ。陸に上がらせろ。そして俺に息子の世話をさせろ。
俺はそんなことを思いつつ、検問をパスして港へと入る。
今回寄ったのは大都市でもなければ田舎でもない、普通の街の普通の港。
海賊が寄れること以外にはなんの変哲もない、のどかな街。
港町ってのはなんでこんなにキレイなんだろうな。
山の中で過ごすのもいいけど、やっぱり海の近くがいいよ。
うんうんと俺が一人で頷いていると、すでに陸につけている船長の船から信号が飛んでくる。
なになに、『すぐに保安官、話す?』
港についてすぐにこの船のことを話すかと。
ゆっくり休みたいのは山々だが、こういうのはあとから話すと面倒くささが増すことで有名だし、なるはやのが良いだろう。
『早めがいい』
俺が送ると、
『
短く返事が帰ってくる。
俺が船長の船の横に船をつけて、錨を下ろしていると。
「保安官だが、プラタか?」
横に立った男が、訝しげな視線とともに小さめにつぶやく。
プラタとは、悪魔の着る服のことではなく、俺たち海賊の隠語だ。
海賊を意味する、
「あぁプラタだ。今回は結構訳あり。」
俺はそうつぶやいて、保安官を二人船に乗せる。
ちらっと横を見れば、本船の方にも保安官が二人乗り込むところだった。
本船の上で仁王立ちする船長と目が合う。
彼女は何やらまばたきをしている。
えっと、『正直に言え、隠さなくていい』。
なるほど。最初はパチパチやってるから目が乾燥してるのかと思ったけど、モールス信号ね。
『
俺もパチパチと目を閉じて、それだけ送る。
あんまりやってても怪しまれるだろうし。
船長が伝えたかったのは、戦いのこととかも合わせて話せということ。
本来敵の立場である保安官に、海賊って謎の対抗意識燃やして戦闘とかお宝とか隠したがるから。
俺も別に積極的に見せようとは思わない。
「コイツラは?」
船を歩き回っていた保安官が、俺が一箇所にまとめて結びつけておいた男どもを指さして言う。
「元々のこの船の持ち主。最近名を上げてきた若手の海賊で、女攫いなんてあだ名で呼ばれてる奴らっす。」
俺は未だに気絶している男のうち、一人の頬を叩いて起こしながら言う。
「ほら、名乗りましょうね〜。」
「え? ヤトナ海賊……。」
叩き起こされて混乱した男が、つい癖で自分の海賊団の名前を言う。
「ありがとっ!!」
俺は感謝しつつ、男の腹に軽いひざげひ噛まして、気絶させながら言う。
相手海賊だし、女攫いだし。別に許されるだろう。
「ヤトナ海賊団多分ほぼ全員。煮るなり焼くなり好きにどうぞ。金かかってたら早めに下さい。」
俺はモゾモゾ動くヤトナ海賊団の皆さんを見て若干引いている保安官に告げる。
まだ若いけど最近有名だったし、一人二人は懸賞金かかってると思いたい。
コレが高いのだと、マジでウッハウハなんよな。
それを生業にするやつもいるほど、海賊狩りは儲かるらしい。まぁ命がけの仕事だろうけど。
「あぁ、本当の要件はこっちです。」
俺はヤトナ海賊団達を戸惑いながら引っ張っていこうとする保安官さんたちに、そう声をかけて地下へと続く階段を指差す。
「要件とは?」
首を傾げる保安官さんに、
「まぁ来たらわかりますよ。」
俺はそう笑いかけて、階段を降りていった。
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