第7話 悲惨な過去。
私が現世に戻り1ヶ月が経った。
長い時間をかけ、ようやく私もフェリシアという体に馴染んできていた。
やはり使い勝手のわからない他人の体というものはとても不自由なもので、最初はひどいものだった……。
目覚めてからの数日は、落馬事故による後遺症のために体を動かすことすらできなかった。
私が原因ではないが、元よりフェリシアは運が悪ければ死んでしまうほどの重大な事故に遭遇していたのだ。
全身打撲、そして頭部強打……。
当然のことながら体へのダメージは甚大だ。
椅子に座る、茶碗を口に運ぶなどの些細な動作ですら悪戦苦闘せねばならない状況。
「そんな体で伯爵一家に会ったって体の負担になるだけだ。面会謝絶ってことにして療養したらいいよ。第一、きみ自身もすごく混乱しているように見えるし、落ち着く時間が必要だろう?」
と見かねたレオンにほぼ自室軟禁を強いられることになった。
結果、これはとても良い効果をもたらしてくれた。
(家族に殺されて目覚めたら見ず知らずの他人の人生を乗っ取っていました……なんて現実的ではないものね)
フェリシアの中身はエリアナ・ヨレンテです!と声高に訴えても誰が信じるだろう。
そもそもこの世界には生まれ変わりという概念はないのだ。
過去の私も一笑に伏して終わるはずだ。
(でも実際に戻ってきた)
私の力ではなく、あの御方の力によって……。
フェリシアという女性の人生を横から掠め取ってしまったのだけど……。
(とにかく受け入れて感謝しましょう。チャンスを与えていただいたのだから)
この療養の間で現実を受け入れ腹を決めることができた。
クールダウンが必要だと判断してくれたレオンの観察眼には感謝しかない。
(おかげで見えてきたわ)
フェリシアのこれまでの人生が想像以上に悲惨である、ということを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます