絶対復讐幼女と少年騎士の異世界道中~幼女に転生した元プログラマー、オリジナル魔術を開発し虐待家族へ復讐します。ついでに家出して冒険に出ます~
浅見朝志
幼女絶対復讐編
第1話 おはようございます、幼女です
「はぁ――っ!」
止まっていた呼吸を再開する。
目を開ける。
見知らぬ天井がそこにはあった。
「ここは……どこ……?」
上体を起こしてあたりを見渡そうとするが、しかし、できなかった。
身体中に痛みが走ってできなかったのだ。
自分の身体を見る。
雑に包帯でグルグル巻きにされ、消毒液の臭いが漂っていた。
「そうだ、私はまた兄様たちにいじめられて……」
――おらっ! 俺の火属性魔術をくらえ!
――ヒヒッ! ほらほらっ! 避けてみろっ!
思い出した、あれから何日経ったろう。
私に対するその日の【いじめ】は、苛酷を極めていた。
両親も使用人も誰も私を助ける人のいない中で私は兄たちの覚えたての魔術の実験台、もとい遊び道具にされたのだ。
そしてそのせいで私は死にかけて、ここにいる。
いや、もしかしたら私は本当に1度死んで、そして生まれ変わったのかもしれない。
なぜならいまの私の記憶に、別世界でこの私とは違う人間として生きそして死んだ記憶、つまり【前世の記憶】が引き継がれるという普通ならあり得ない現象が起こったのだから――。
* * *
――さて、整理がてら記憶を振り返ってみようかしら。
まず私の名前は【シャルロット・ディルマーニ】。
ディルマーニ家という貴族の家に末娘として生まれた6歳の幼女だ。
少々巻き髪なのかふわふわとした肩口くらいまである金髪、欧風の顔立ちをしている。
家族構成は末娘である私の他に健在な父母と長男と次男、そして長女という6人家族。
――そして、その家庭環境は私にとって最悪のものだった。
両親は私には無関心。しかし天才肌の長女を溺愛しており、通常は家督を長男に譲るものだが、それを長女に渡そうかどうかと迷っているほどだ。
長男はそんな風に特別扱いされる長女が妬ましいのだろう。しかし長女に直接手を出せないものだから、その代わりに次男を引き連れて私のことを虐めてくる。
両親は【出来損ない】である私に同情などは一切しない。
むしろ兄たちに「魔術のいい練習台があってよかったな」とすら言っていた。
――そんな私も実は4歳までは普通の扱いを受けていたのだ。
しかし、その環境が一変した理由がある。
5歳の誕生日に受けた【属性魔術の適性鑑定】により、私は【属性】の適正を1つも持っておらず、魔術が使えないということが明らかになったのだ。
この世界には火・水・風・土の属性を持つ貴族だけが使える魔術がある。
そのため魔術が使えるということは貴族であるための絶対のステータス。魔術が使えなければまともな嫁ぎ先も見つけられないということで、両親はそれ以来私のことを見放した。
――まあ、そんな経緯があって魔術の才能だけはあった長男や次男のいじめのターゲットにされることになったというわけよ。
「泣いたって相手が喜ぶだけだわ……ちゃんと対策を考えなきゃ」
だが、もう好き勝手にやられるつもりはない。
なぜなら、いまの私には【前世の記憶】がある。
生まれてから27歳まで同じ女として生きてきたし、なにより同じく【虐められてきた経験】もあるのだから。
とても辛い記憶だけれど、だからこそソコから得た教訓もある。
「やられたら【絶対】にやり返さなきゃいけないのよ。そうしなきゃ永遠に虐めのループから抜け出せないのだから」
――それは復讐の徹底だ。殴られたら殴り返す。噛まれたら噛みつき返す。私は絶対にこの人生でそれだけは間違ったりしない。
絶対安静として家の医療室のベッドに寝かされて1週間、身体の回復に努めながら考えた。
この幼女の身で私にいったいなにができるのか。どうすれば復讐を徹底できるのか。
そして1つの結論を出した。
――強くならなきゃ。魔術が使えないなら勉学でも、腕力でもいい。とにかく誰にも侮られない強さをなにか身につけよう。
すべてはきっと、そこから始まるのだ。
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