第50話 マッドパーティー
数ヵ月後
マッシュルームに茎がついたような植物方増殖細胞が、幻想的な森を作っている。
薄暗い森の中に、怪しい胞子や蛍のような光るものが浮遊している。
しゃれたテーブルセットがあり、そこに何人かが座って、お茶を飲んでいる。
ヴァイオレット、デーモンのボス、黒い帽子の男(ナイトメア)、翼の男(ブリット)、カリバンである。
翼の男、ブリットがぽつりとつぶやく。
「そろそろ時間だな」
帽子のナイトメアが目ざとく何かに気付く。
「おや、便利屋さんのおでましだ」
すると近くの木陰がガサガサいって、スラッとしたリタ、無愛想な大男のハンド、ライダースーツのエルンストが来る。
リタが元気に声をかける。
「遅れてごめんんなさい。みなさんお揃いね」
カリバンがチョコチョコと動き出す。
「すぐ、お茶を入れますので、お待ちください」
ヴァイオレットが自慢げに言う。
「お父様のハーブティーよ」
カリバンも愛想がいい。
「レベッカ様のお母様ご自慢のクッキーもございますよ」
リタがにんまりする。
「ええっ!ローゼンクロイツ博士のハーブティーと、テレサおばさまのクッキー、最高の取り合わせね。うれしいわ」
ブリットが金色の翼を光らせて文句を言う。
「予定時間を過ぎているぞ」
デーモンのボスが意味ありげに叫ぶ。
「フギャア」
ナイトメアが仕切ろうとする。
「静粛に。司会はいるのかね」
ヴァイオレットは、まったく聞いていない。
「ごめんなさい。クッキーが足りなかったかしら」
「いいや、クッキーではなくて司会者なんだが……」
リタが無視してしゃべりだす。
「人間サイドの答えを今お見せするわ。ハンド、お願い」
隣にいたハンドがテーブルの上に小型モニターを置き、右手を上げるとそこに映像が現れる。
「リモコンハンド」
そこには、画面いっぱいに包帯姿の情報局長が映る。
ブリットが意外そうな顔で言う。
「あれ、情報局長、まだ生きていたんだね」
ヴァイオレットは、局長の包帯に興味があるみたいだ。
「すごい包帯ね。このミイラ男さんが人間の代表なの」
スクリーンの情報局長が話し出す。
「我々は、いくつもの検討委員会を立ち上げ、あらゆる立場からいろんな意見を出し合い、増殖生命体と人類の未来について話し合った。中にはゴミの集積場周辺をこれからも封鎖地域にしたり、野生動物として受け入れるなどの意見もあった。だが、圧倒的に多かったのは以下の結論だ。長期的に見て、増殖細胞体と人類は共生することはできない。いかなる条件でもだ。以上」
みんな、顔を見合わせて黙ってしまう。
ヴァイオレットが怒り出す。
「共生することはできないって、どういうことなの」
ナイトメアが苦笑いする。
「フフ、もう、話し合いの余地はないってことだ……。最終決戦だな」
リタも怒り出す。
「何を無責任なこと言ってるのよ。あんたたちのせいでしょ」
ブリットが反論する。
「私たちは、頼まれて仕事をしているだけだ」
カリバンがなだめ役にまわる。
「まあまあ皆様、クッキーでもいかがですか」
リタは機嫌を直す。
「悪いわね、もう少しいただくわ。ああ、おいしい」
エルンスト、黙ってクッキーを食べる。
二人のおいしそうにクッキーを食べる音が響き渡る。
ヴァイオレットが立ち上がる。
「わかったわ。最終決戦なのね、ミイラ男さん」
デーモンも叫ぶ。
「ギャウ」
リタも立ち上がる。
「あなたたちとは戦いたくないけれど、戦わずにはいられない。そこの、帽子と羽根!あんたたちツァイスも、責任とって協力してもらうからね」
「我々にそのような義務は……」
「何のためにここに呼ばれていると思っているのよ」
ハンドが急にしゃべりだす。
「ツァイスの犯罪記録の入ったカエサリオンは、マービン電気からこちらに移りました」
ナイトメア、思わずハーブティーをふきだす。
「マービン電気? うそだろう、何であのタヌキ親父のところに……」
「わかったら、ごちゃごちゃ言わないの。ヴァイオレット、正々堂々と戦いましょう。私のロボットと1対1で決着をつけるってのはどうかしら」
ヴァイオレットは少し考えてから答えた。
「いいわ。でもこっちの森の王は大きすぎるから、そっちは二人でもいいわ。あなたも戦いましょう」
ヴァイオレットは、エルンストを指差す。
「あら、自信があるのね。こっちはもちろんオーケーよ」
「そのかわり、森の王が勝ったら、こっちの条件も聞いてもらうわ。正々堂々と戦いましょう。そうだ、ミイラ男のひとにこれを渡しておいてね」
ヴァイオレット、不思議な白い花を差し出す。
リタ、花を受け取り、握手する。
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