第10話 ガキンチョの前世

「じゃあお願いします」

私は制作物を郵便局に出した。


「いいなあまほうつかいは」

元旦那現ガキンチョは羨ましそうに言った。


「ふふん」

私は偉そうにした。魔法使いじゃないんだけどね。


「おれ…わたしもまほうべんきょうしようかな」

うむよろしい。ようやく一人称も改まってきたか。


「便利だぞ」

私は正しい事を言った。


「…どうも、なにか」

ガキンチョは少し考えている様子だった。


「まえにつかえたようなきがする」

むむ?それは前の転生の時の事か?


「よくわからんけど」

ガキンチョの前世の記憶は曖昧なのだ。


「何も覚えてないの?」

私は少し優しく訊いてみた。


「なんか、どういったものか」

ガキンチョは手で何かをもつ素振りをして親指を動かした。


「…こんなことをしょっちゅうやってたような…」

そんな魔法みたことないぞ。


「…なにかそれはすごくだいじなことだったような…」

それが何の動作であっても何の役にも立たなさそうに見えた。


「夢じゃないの?」

私は常識的な事を言った。


「…ス、マホウ?なんだっけな?」

なんじゃそれ。


「何の役にも立たなさそうだけど?」

私は正しい事を言った。

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