君も同じ月を見てるんだね

アオヤ

第1話

突然、俺の元に妹の瑞希から長めのメッセージが届く。


~~~~~~~~~~~~~~~~

お兄ちゃん!


今度の金曜日、町の公民館でお祭りするから帰っておいで。

グランドには屋台も出るし、夜は月見そばがみんなに振舞われるんだって。

公民館に設置されてるプラネタリウムは無料で見られるし、その日は月食があるらしいんだけど・・・

天体望遠鏡で月食を観察する事ができるらしいんだ。

それにね、それに・・・・

お兄ちゃんがずっと片思いの神山美穂さんも参加するらしいよ。

チケット取っといてあげるから、お兄ちゃんも帰ってきなよ。

じゃ~ね、待ってるね。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

俺は妹のメッセージに『了解』と素っ気ない返事を返す。

コロナ明けの町興しのイベントだろうか?

瑞希め、余計な気をまわしやがって!



俺は渡部岳、16歳の高校生だ。

この春から生まれ育ったこの町の2つ隣の市の高校に通うようになった。

地元から結構離れているので、下宿先から高校に通っている。


俺の生まれ育った町には自慢できるモノは少ない。

でも、町の公民館に天体望遠鏡とプラネタリウムがセットになった施設がある。

この施設は数少ないこの町の自慢だ。


俺は妹のメッセージにあった神山美穂という名前に少しドキッとなった。

神山さんはプラネタリウムに勤めている町の職員だ。

去年、大学を卒業して配属になったばかりらしい。

俺が中3の夏休みにプラネタリウムで星座教室が開かれた。

その時、神山さんに初めて出会い一目惚れした。


何しろ"Fテレビの朝一テレビ"のMCやってるあの女子アナにそっくりだったから・・・

顔はもちろん、流れる様な話し方。

話題も面白いし、近くに居るといい匂いがする。

俺が気をひこうと変な質問したのに顔を紅くして真面目に答えてくれる。

そんな彼女の姿がイッパツで好きになってしまった。

家に帰ってからも彼女の話しを何回か家族に話していた。

そんな俺を妹の瑞希は呆れてみていたはずなんだが・・・


・・・彼女も参加するんだ・・・

彼女と話しをするチャンスがまわってきた。

絶対に参加するぞ。

妹への素っ気ない返信とは裏腹に俺のココロはウキウキだった。


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