第66話 帰って来た開拓村2

 この後、エルフの長との面会となった。

 話を直接聞いていたらしく、全面的な協力を約束してくれた。


「一応の確認なのですが、亜人族や魔人族と交流を持っているのですよね? 大陸の北と中央になるのかな?

 岩瀬さんは、言及しませんでしたが、そちらはどうしますか?」


「……住む場所も、食べる物も異なるのだ。趣向品の交易はあるが……、正直不干渉で良いだろう。

 まあ、助けを求められたら、もちろん手を貸す事は決まっている。

 それと〈ハグレ〉だが……。人族の領土に出没した場合は、対応して貰う事になる。

 我々も、個の管理まではできないからね。それがエルフであってもだ。これは、我々も同じなのだ。人族の〈ハグレ〉が来た場合は、保護するか追い返すかはその時による」


 ふむ……。まあいいか。

 現状維持だけど、結果として最上と言える。

 俺個人であれば、エルフ族の協力も得られるのだし。


「魔晶石の採掘はどうしますか?」


「……果樹園に撒いた魔晶石だけでも数年分の採掘量なのだ。必要になれば、回収して再利用する。

 正直、あり余っていると言えるので、心配は無用だよ」


 ……採り過ぎたか。まあ、鉱石だし、腐ることもないんだろう。

 その後、文章にて相互協力の約束を交わした。条約になるのかな?

 文章の中身には、『人類領に干渉しない』と『俺が窓口になる』事を入れて貰った。

 エルフ族としても、脅威と見なすのは、俺だけみたいだ。

 歌川や岩瀬さんの仲間は、もうエルフ領に来ないだろうから、これで十分なはずだ。

 最後に、連絡手段の確認だ。


「何かあれば、海岸で狼煙を上げる……ですか。そうですね、直接互いの領土に乗り込むよりは安全かもしれません」


「うむ。緊急時には直接行かせて貰うが、定期交流と狼煙から、まずは始めたいと思う」


「分かりました。この方法で行きましょう。それと、一人だけエルフを捕えています。戻ったら開放しますね」


 エルフ族全員の表情が曇る。

 捕虜の返還なのだけど……、開放しない方がいい?


「……そうよな。戻って来て貰うか」


 ……まあ、処遇は任せよう。開拓村に住まわせるわけにもいかないし、王都に連行しても悪い結果にしかならないだろうし……。

 最後にエルフの長と握手して会談を終わりとした。




 また、"空飛ぶ馬車"で移動だ。送って貰う。

 移動系のスキルのない俺には、とてもありがたかった。

 そして、エレナさんの"空飛ぶ絨毯"の参考にもなったな。

 開拓村が認められたら、エルフの里で魔法を学んでみるのもいいかもしれない。


 そんな事を考えていると、開拓村前に着いた。本当に速い。

 エルフ族とはここで分かれる。


「エルフさん、お世話になりました。何かあれば連絡をください」


「あはは。世話になったのは、こちらだ。だが、君の知人が接触して来たら、連絡しよう。ここからは手を取り合うべき状況だというのは、誰しもが理解している」


「……分かりました。彼女達の事は、責任を持って引き受けます。

 開拓村も無関係ではないですしね。

 交渉が上手く行かなければ、彼らの計画を潰しに行く必要もあるかもしれません。

 本音言うと、戦争は避けたいのですけどね……」


 エルフさんが、大きく息を吐いた。


「それは、強者の言葉だ。今の君は、自分の力に飲まれているね。

 外見からは想像もできないほどの強大な力を秘めている事は理解しているが、精神が追い付いていないみたいだ。

 それでは、自分の大切なモノまで壊してしまうぞ」


 少し驚いた。

 俺は……、飲まれているのか……。


「今の言葉は、覚えておきます」


 こうして、握手して別れた。

 見送りを行い、送迎とする。後は、定期連絡だな。定期連絡は俺が出向かなければならない。その前に、海への道を完成させて、港を作り……、簡易的な宿泊施設……。狼煙台の設置……。


「やることが山積みだ……」



 考えながら開拓村前まで歩いて、手を上げて合図を送る。

 ザレドさんが、応答してくれて門が開いた。

 歩を進める。


「数日だったけど、やっと帰って来れたな。

 歌川とか、かなり危険だったけど、なんとか乗り切った。

 これから、場合により世界規模での話が来るかもしれない。有用なモノを"収納"しておかないとな……。

 戦争は……、できれば避けたいな」


 独りで呟いていた時だった。

 エレナさんが、俺の前に立ち塞がった。顔は無表情で、感情が読めない。

 これから、村長宅へ行き、ヴォイド様に報告しようと思ったのだけど……。


「……ただいま戻りました」


 ──パン


 平手打ちされてしまった。

 かなり痛い。精神に……、心に響く感じだ。

 怒っているのが、伝わって来る。


『この〈痛み〉は、"収納"できそうにないな。そうか……。〈感情〉は"収納"できなんだな……』


 ここで風が吹いた。

 暖かい……、南風だった。





 ここで、一度更新を止めます。

 考えてから、物語のラストの更新を行いたいと思います。

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