第53話 エルフの襲撃4

「エルフ族との交渉は可能ですか?」


「……なにを話し合うというのだ?」


「妥協点を探したいですね。森の破壊の許容範囲とか、もしくは国境線を引くとか」


「無理があるな。エルフ族と人族では、住む場所が異なるのだ。この地のように開拓までされると、流石に黙ってはいられない」


 そんなもんかな? ここは森の外周部の沼地だったのだけど。

 それでも、許容できないのか……。


「昔の人族が行った、魔法陣について教えて貰えますか?」


「……伝わっていないのか。

 森だった地を平地に変え、城塞都市を築いたのだ。

 その後、その土地の魔力を根こそぎ持って行く魔法を続けて使っていた。

 そして、土地が枯れたら放置だ。 自然と共に生きる我々エルフには理解しがたい行動なのだよ」


 召喚魔法のことだよな……。

 そうか、最終的に土地を放棄するのか。


「その土地は、魔力が回復しないのですか?」


「100年単位でなら回復するだろうが、魔物は生まれないし寄り付かなくもなるだろう」


 害獣がいなくなるのか? それでいて、植物が育つのであれば、住みやすい土地になりそうなのだけど……。

 先日見に行った廃墟は、草が生えていた。

 あの地を開拓しない理由がありそうだな。

 魔力の有無が、生活にどう影響するか……、か?

 それとなく調べておこう。


 それと、現王都だ。

 遠からず遷都すると思う。

 そのために、各地で開拓を行わせている。それは理解できる。

 だけど、召喚魔法を行い続ける意味が分からない。

 それと、戦争だ。亜人族領土に攻め込むと言っていた。


 この世界を知れば知るほど、人族の行動が理解できない。

 最終的な目的はなんになるんだ?


「私からも質問してもいいかな?」


 エルフを見る。


「……答えられる範囲であれば」


「君は、水・氷系の魔法使いなのかな? だが回復もしていたよね?」


 あ~。そう見えるか。


「違うとだけ言っておきます。

 本来の用途は、大規模工事向けの魔法ですね。

 少し変わった使い方をすると、戦闘にも応用できます。

 まあ、初見殺しなのでしょうが」


「……そうか。大規模工事向け……、なのか? 破壊活動には向いていそうだが、戦闘能力も高そうだね」


「その認識で合っています」


 詳細を教える利点はない。

 とにかく俺の魔法は特殊だと思う。理解されなければ、攻略もされないと思うし。


「エルフ族は、追撃に来ますか?」


「……来るだろうね。ここまで、遠征に来なければならないほど、追いつめられている。

 冬前の収穫時期に実りが少なかったのだよ。

 そして、オーク族と諍いになった。オークも食糧難みたいだ。

 我々エルフ族も後がない。

 もう、奪うしか一族が生き残る道がないほどだ」


「仮にの話をします。 俺が短期間で植物を育てられるとしたら、受け入れて貰えますか? もしくは、目的の魔物を狩れるとか」


 驚く、目の前のエルフ。


「この季節に食糧を作れると?」


「なにを食べるのかにもよりますが、まあ大概の物であれば可能でしょう」


 エルフは考え込んでしまった。

 考えはある。

 海への道を作る時に、大量の生木を"収納"した。

 それらの植物は、俺の収納魔法のなかでまだ生き続けている。

 これは、まだ"解放"していないオークも同じだ。そして、エルフの心臓も……。

 その〈生命力〉を植物に付与すれば……。

 俺の収納魔法は、考え方次第だ。

 土壌の改良でもいい。ビニールハウスを作って〈熱量〉を開放しても植物は育つはずだ。

 いや、もっと単純に〈太陽光〉を収納してみるか? 紫外線のみの"開放"とか……。

 現時点でも色々なことが思いつく。


 エルフは、すぐには答えられないみたいだ。

 俺は立ち上がり、一度その場を後にする。


「さて、除雪しようか」





「トール。エルフとなにを話したのだい?」


 今は村長宅でお茶を頂いている。

 エレナさんと、セリカさんの視線が痛い……。


「え~と。朝にお湯を与えました。

 それで、エルフ族がまた攻めて来そうなのですが、理由が食糧難なのだそうです。

 そこでなのですが、俺を派遣して貰って食糧を生産できれば、平和的に行けるかなって」


 ザレドさんの表情も険しくなる。


「ふう~。トールは、人族とエルフ族の歴史を知らないからそのようなことが言える。止めておいた方がいいよ」


「棲み分けができているのであれば、平和に解決もできそうなんですけどね。 言葉も通じるし……」


 次にエルフ族が来た時が、分かれ目かな。

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