救世主になりそこなったので、神器を回収しようと思います

くらの

序章

第1話 昨日のこと

     ☆


「女神様。やっぱり僕、嫌です。転移なんてしたくありません。元の世界に返してください」


「どうしてですか?」


「だって、転移特典ですってこんなもの渡されて、『ありがとーございます! わー楽しみだなー』とか言ってホイホイ異世界に転移するアホがいますか!? 僕が知っている異世界転移はもっとこう……ワクワクするようなものなんです」


「やはりそうですか……」


「記憶や能力はそのままに異世界へ転移できるとはいっても……これはないですよ! 僕に清掃員にでもなれって言うんですか!?」


「そうですよね……」


「とにかく、絶対に転移したくありません!」


 今回も失敗ですか……。


 これでもう三百九人目です。


 いいかげん疲れましたよ。


 こうなれば、異世界転生・転移のシステム自体に何か大きな変更が必要な気がしてきました。


 何とかして本人に同意させ、かつ「やっぱり異世界に行きたくありません」と言うすきを与えないようなシステムを急いで再構築しなくてはなりません。


 ですが、数十年前にフトホスさんに借りたまま読んでいないあの漫画も読みたいですし……でものんきに漫画を読んでいると天使に降格させられてしまいかねませんし……。


 ――ああ創造神様、私はどうすればいいのでしょうか。


「女神様……? 聞こえていますか? どうしてそんな死んだ魚のような目をしておられるのです? 日曜午後の僕みたいな表情ですよ」


     ☆

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