第4話 料理研究家、その名はイガー・ジェルナンド・レオクローム


「イガー、、、、、オマエにコレを渡しておくよ」


「やったー!ありがとうー♪」


ん?コレは小さい頃の俺だ


話してるのは父さん?


「いいかい、コレはとても大事な物だからね!他の人に見せてはいけないよ」


「また見せちゃいけないの?収納も鑑定も魔石も、、僕は、、ぼくは、、存在しちゃいけない?」


「そうじゃない、、オマエがとても大切だからだよ


とても大切だから悪い人に見つからないように


わかるね」


「わかんないよ、、わかんない、、僕はもっと自由に飛び回ってたいんだ」





「、、ん、、クアー、、夢か」


ポリポリ、、頭を掻きながら起きるイガー


随分昔の夢だった


アレはまだ父さんが生きてた頃の



ん?今日は雨か

雨の日は狩りが出来ないんだよなー


仕方ない、今日は仕事の後は貯めてる食材から料理しよう





「おはようローム」


「おはようイガー、昨日の料理も美味かったよ!

ここ最近どんどん美味しくなるよ!

今や王都の飯屋より美味いな

この村に来て正解だったよ」


「褒め過ぎだよロームさん、、でも、、嬉しいけどな」



門番のロバ獣人に挨拶をして

急いで養殖場へ向かう


村の中では使わなかったけど


ポケットの中の緑色の風の魔石を発動させると

イガーの周りに風が舞い

雨に濡れなくなった


他の人に見られちゃいけないってのが厄介だよなー


せっかく便利なスキルなんだからさ

村の人にも配りたいくらいなのに




村では皆んなが助け合うのが当たり前

困ってる人がいたら

ほっとくなんて出来ないし

そんな奴は仲間じゃない



なのに父さんは「絶対に見せるな」って何回も言ってたし


はあ、めんどくさい




今朝の夢のせいか独りゴチるイガー




「みんなおはよう、魚は元気?」


仕事場に着いたイガーは狼獣人のアルフじいちゃんに話しかけた


他にも獣人はいるんだけどね


奥の方で作業してるから


じいちゃんはずーっと魚の前から動かないし

歳が離れ過ぎてて逆に話やすい



「ああ、おはようイガー。今日は雨だからな

朝飯を撒いたら上がっていいぞ」


「本当?ヤッホー」


「ああ、どうせまた狩りに行くんだろ?

オマエの飯がどんどん美味くなるって評判だぞ」


「え、ここでも?さっきロームさんにも褒められたよ

、、なんか怖いな!

皆んなで俺をハメてないだろな」


「?!イガー、、素直に喜ぶのがオマエの良いところだったのに、、変に歳食ったな、、はぁー」


「べー」




あんな事を言ったが内心めっちゃ嬉しい


昨日の唐揚げってやつはなかなか評判良いらしいな


もう少し改良しなくちゃな


あの豆を後から取らないといけないのがめんどうだし、、なんか良い方法ないかな、、




奥の作業場から用意されたバケツを20個運び


生簀に満遍なく撒く


そうするとデッカい魚が我も我もと暴れながら飯を食う


随分デカくなったな


そろそろ食い頃なはず



「なあじいちゃん、、ここのってそろそろ?」


「ああ、そうだな!近々人間と魔族、、それに王都から魚を買いに来るじゃろな」


「じゃあ忙しくなるね!俺はまた隠れてなきゃいけないの?」


「、、、、そうだのう、、村長に聞いてみるよ!オマエも良い歳だからな」



「え?ホント?俺魚の取引見たこともないから楽しみだよ」



「これこれ、まだ分からんからそう急くな

それにまだダメかも知らんし」


「ちぇっ!期待しちゃうぜ」


「そうだのう、、、」



ヨシッコレで最後っと




盛大に生簀の真ん中に飛ばしたら


4メートルはある魚がバッシャーンと飛び跳ねて

空中でキャッチした


「うっそー」


「、、、」


「「「えっ?」」」




皆んな口を開けてあんぐりしてる!


フフフ、じいちゃんも驚く事あるんだな


あの顔面白かった




「こらーイガー、飯をあんな高く投げるやつがあるかー」


「やっべ」




怒られそうになったからビューンと逃げた



説教長いんだもんじいちゃん






仕事場を出てちょっとしてからまた緑色の風の魔石を発動させ


たまに木の実やフルーツをもいで帰った


今日はすぐ家に帰るし


収納に入れちゃえば持ち運びしなくていいから楽ちん♪


あーあー、コレも見せちゃいけないなんて不自由だよな




鑑定も使いながら木の上にある香りの良い葉っぱや

食べた事ないフルーツ、木の実をたくさん採取して帰った



結局家に着いたのは昼過ぎ


いつもなら夕飯の準備するけど

今日は雨だからみんなの家に配る


それなら普段やらない料理にしても良いかなって色々考えたんだ




えーっとこの前漬けたうさぎ肉、、あった


コレをぶつ切りにして

デカイ鍋に入れて、トマト、玉ねぎ、芋、、、それとさっき採取したこの葉っぱ


めっちゃ良い香りするし

鑑定したら「煮込みに最高」って出たし


あとは隠し味の甘味でこのオレンジ色のフルーツ


へへっコレも鑑定で甘いフルーツって出たから

試しに食べたらめっちゃ美味かったんだよな


煮込みにフルーツは合うからな


ちょっとだけ入れちゃおう




これだけ煮込みに最高な環境なら

もう今日は雨で寒いし煮込みだなってなっちゃうよね



鑑定様様だよ


本当は誰かこれ操ってんのかな?


スキルが煮込み知ってるって、、、深く考えるのやめよ




水を入れて、。と、、あとは煮込むだけ


たまに味みて、、灰汁を取れば完成



ああ、そうだ、、仕上げにバターって牛のミルクの濃い奴が欲しいんだ



まあいいや、最初に牛獣人のトムさんのとこ行って

バターもらってから皆んなのとこ行こう





それにしてもまだ2時か、、




そうだ、、そろそろ俺はデザートって甘味の世界に脚を踏み込もうと考えていたんだ




そんな事を思いながらジャムにしたり


貯蔵室の在庫を紙に書いてるうちにもう4時になってしまった


そろそろ夕方の餌やりだから

もう少しでみんな帰ってきて晩飯だな


そろそろ仕上げなきゃ




木を少しくり抜いたようなスープ皿に


またまた葉っぱを敷き詰めて


トロトロに煮込まれたうさぎ肉の煮込みを


たっぷり盛りつける


牛獣人のトムさん宅は4人だったな


どれ、こんなもんだろ


上に雨に濡れない為の葉っぱを載せて、、ソレッ




家を出ると丁度他の人達も色んな家に運んでる最中だった


イガーが出る時に近所のおばちゃんが蒸した芋をもって向かって来たから

勝手に入って置いといてって言っといた



村の中だから魔石使えないから濡れちゃう

トホホ


虎だから濡れても嫌じゃないけど

身体が冷えるのは嫌いだ



「トムさーん、、」ドンドンっ


「はーい」


「お待たせしました、今日はうさぎの煮込みだよ。

熱いうちに持って来たけど、冷えてたら

また温めてね」


「はーい、いつも悪いね、」


「いえ、あ、、バターちょっと分けて欲しいんだ

煮込みの仕上げにちょっと載せると美味しいから」


「ハイハイ、ちょっと待ってねー」




「コレ位で足りるかい?」


お皿に山盛りになったバターを持ってくるトムさんの奥さん


「うん、むしろ多いくらいだよ」


「よかった、、持ってって」


「いつもありがとう」


「何言ってんだい、こちらこそ、、風邪引かないでよー」


「うん」





家に着いたら一回部屋の奥で緑と赤い魔石を持って発動



暖かい風が全身を巡る


うん、コレでバッチリ



次はお皿に盛ってから、、バターを少し載せて、、村長のとこへ  




そんな事を20軒もやってたらすっかり夜になった


コレで最後!


熊の家だ、、、


トントンッ



扉を叩くと返事がない


アイツもお届け中かな?


と思ったら扉が開いた


「悪い、今スープを温めてんだ、入ってきて」


「、、。あいよ」




中に入り部屋を見渡す


俺のゴチャゴチャした部屋とは違い


入り口に模様の入った帽子を飾ってたり

マジックバッグみたいなのが何個かぶら下がってたり


あとは盾やら剣やら色々狩りに使えそうなのがチラホラ、、



「ごめんね、、お待たせ!これから家まで運ぶとこだったんだよ!逆に来てもらって悪いね」


温めてくれたスープを器に入れて目の前の机に置いてくれた熊獣人



「あ、いや、、別に」




部屋のアレとか、、武器とか、、聞こうと思った


、、、さっきまでは


でも言葉が出てこない




「あ、、、いや、、、コレ、、煮込み置いたから、、じゃっ」




そのまま逃げるように走って飛び出した



なんだか今日は口喧嘩もしない雰囲気だった



優しく話しかけてくれたし



俺もそれに合わせて普通に話せば良かった



ただ、、それだけ



たったそれだけの事なのに

全く出来ない自分がいた


意識するな、意識するなと思えば思うほど

言葉が出なかった



雨が降ってる中

ビシャビシャに濡れながら

料理が濡れないよう気をつけて帰ってきた自分の家の扉を勢いよく開けて

バタンッと閉めた




「フー、、フー、、フー」


わかんねえ、わかんねえ、わかんねえ



「だー!クソっ」



机に置いてある蒸した芋を口に押し込み

鍋の煮込みを食い


アイツにもらったスープを流し込む



「、、くそッ、、ウメェ」





茶色いスープ、、具は白いプニョプニョした物と、、


緑色のぴらぴらした、、よくわからん


でもなんだかホッとする味



アイツの作る飯はいつもウメェ




「はぁ〜、、寝よ」



緑色の魔石と赤い魔石を発動させ

濡れた身体を乾かしてベッドに飛び込んだ


寝れば忘れる


寝ればまたいつも通りの明日


明日はまた口喧嘩が出来るさ


今日のアイツはちょっと変だった


、、うん、、アイツが変なんだ







いつもは口喧嘩しかしないのに


普通に、、ただただ普通に話しかけられただけで

何も話せなかった自分に困惑する虎獣人のイガー




その夜また夢を見た


「いいかいイガー、、、イガー・ジョエルナンド・レオクローム


コレがオマエの本名

ただしこの本名は絶対に誰にも言っちゃダメだよ


秘密にする事が多くて嫌になるのも分かる

だけどお願いだ。お願いだから誰にも言わないでくれ


それとコレを渡す


ペンダントだよ!収納に入れて隠しておいてくれ


きっといつか、、きっといつか必ず、、わかる時がくるから


自由にさせてやれない我々を恨んでくれて構わない


だから、、だから、、、イガー、、」





眠るイガーの眼から涙が溢れる、、、






「「「イガーの貯蔵室の在庫一覧」」」


うさぎの塩漬け、、壺4個


イノシシの干し肉、、壺6個


イノシシの塩漬け、、壺3個


オーク肉の塩漬け、、壺8個


火鶏の塩漬け、、壺1個


大豆の塩漬け、。壺2個


岩塩、、壺10個


ジャム、、壺2個


色んな葉っぱドッサリ


色んな木の実ドッサリ


近所のおばちゃんに渡す予定の胡椒の木


さっきもらったバター


ミルク、、小瓶3本


蒸した米の残骸


ニンニクのカケラ




小さい魔石各種


赤、空色、青、土色、緑、黄色


赤は火


空色は水


青は氷


土色は地面


緑は風


黄色は雷


イガーが覚えた順番


今後のスキルレベルアップに期待

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