#04 最初からこの街が悪い




 ラナが客を取るようになってから1年ほど経った。


 俺は成人して、今では俺は一人前の用心棒として雇われている。



 そしてラナは売れっ子となっていた。一番若い娼婦だからな。それだけで売れる。


 でも、ラナは変わった。


 ご多分に漏れず、ラナも他の娼婦たちと同じように、如何に男を夢中にさせるか、如何に金持ちを捕まえるか、如何に他の娼婦よりも売れるか、そんなことばかり考え、見栄や虚栄心を恥ずかしげもなく晒す様になった。



 それでもラナに呼ばれれば、会いに行った。


「ねぇカカ? いい加減わたしのコト、抱きたくないの? わたしこれでも売れっ子なんだよ? 男たちはみんな私を抱きたくて、お金用意して順番待ちしてるのよ?」


『いや、俺は遠慮しとくよ』


「はぁ、つまんない男ね。そんなんだからいつまで経ってもドーテーなのよ」


『そうだな。でも気にしてないからいいさ』


「・・・・そんなことより!今度ミレーザ商会のパーティーに呼ばれるかもしれないの! お貴族様をご接待するんだって。もしお貴族様に気に入ってもらえれば、一生囲ってもらえるかもなんだよ!」


『そうか、凄いな』








 俺は、ラナのことは妹の様に可愛がってきた。


 じゃあ、異性として好きか?と問われれば、答えはNOだ。



 だって、水揚げ前に手を出せば娼館からリンチにあうし、娼婦になってからなんて、いつ性病うつされるか分かったもんじゃない。

 これほど面倒で厄介な女、出来れば関わりたくない。



 それに、こんなドヤ街の娼婦に高い金払って抱く男どもの気が知れないし、俺はタダでだってゴメンだ。


 どうせ娼婦を抱くなら、もっと高位地区の娼館で、キチンと健康管理されてて衛生面もしっかりしてる娼婦だね。





 でもラナのことはかーちゃんが可愛がってたからな。

 それに俺もラナも同じ娼館で働いてるし。


 要は、ラナに機嫌よく客の相手をさせるために、仕方なく話し相手をしている。





 ラナの言っていた商会のパーティーがどうのこうのも、どうせその商会の下っ端が、ラナに取り入ろうと見栄はって調子が良いこと言ってただけだろう。


 この町の娼婦がお貴族様の接待に呼ばれるなんて、ありえない。

 接待どころか、お貴族様を怒らせるだけだ。


 この町じゃこんな奴ばかりだ。

 本物なんて居やしない。




 俺だってそうだ。

 俺は1年前、ラナに向かって『この町で生まれた俺たちは、夢を持つと辛くなる』と言った。

 本当はそんなこと思っていない。


 本音を隠して、嘘の仮面で用心棒をしている。






 俺は冒険者になるのが夢だ。

 今、その夢を叶える為の計画を進めている。


 春になり温かくなれば、俺はこの町を出る。

 このゲ〇臭いドヤ街とも、気持ち悪い香水の匂いを振りまいてるラナともオサラバだ。















 ラナ編 完



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