#02 娼婦




 朝食を食べ終わると、ラナはかーちゃんの仕事を手伝い始め、俺は近所の娼館に行く。


 娼館では用心棒の仕事をしている。

 仕事っていっても、俺は子供だからまだまだ見習いで雑用ばかりだけど、昼間は仕事なんてほとんど無いから、用心棒の先輩たちに戦い方を教わったり、体を鍛えている。

 この町の男の子供は、みんなこんな感じ。

 腕っぷしが全て。

 金が無い男たちは、何でも暴力で解決するしか無いからだ。



 そして女は、体を売る。

 暴力の代わりに奉仕のテクニックを磨いて、夜な夜な一人でも多くの男に抱かれることが女にとって重要。


 ラナもあと1年もすれば娼婦として体を売ることになる。

 別にそれを可哀相とも悲しいとも思わない。

 ラナの母親だって、そうやって生きてきて、その結果ラナが産れて、今もそうやって生活してるんだし、この町じゃそんな女はそこらじゅうに溢れている。


 因みに、俺が用心棒をしている娼館でラナの母親も働いている。





 そんなラナの母親が病気になった。


 全身の肌は黒くなり、顔も腕もそこらじゅうに発疹が出て、起き上ることが出来なくなった。

 もうこうなっては娼婦の仕事は出来ない。


 用心棒の先輩が言うには、典型的な性病の症状らしい。

 性病になった娼婦は、娼館からは見捨てられ、当然治療も受けられないからのたれ死ぬ運命。

 運が良ければ、教会に引き取って貰えて、病気に苦しみながら死ぬまでの短い余生を過ごす。


 ラナの母親は、運よく教会に引き取られた。

 残されたラナは、1年後の予定だった水揚げが前倒しになり、この歳で客を取ることになった。



 このことが決まってから、ラナはウチに来なくなった。

 娼館で男に奉仕するテクニックを教わる為だ。






 ラナが初めての客を取る日の前日、いつもの様に用心棒の先輩に稽古をつけて貰っていると、ラナが俺のところにやってきた。



『休憩か?』


「うん・・・」


『どうした? 明日だろ? 不安なのか?』


「うん・・・」


『そっか』


「カカ、お願いがあるの」


『なんだ?』


「ここじゃ言えない」


『わかった。 夜になったら迎えにくる』


「うん」



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