娼婦の娘 ラナ編
#01 酒と女と暴力の町で
このグレイズカノン王国の王都グレイズは、何重もの城壁に囲まれている。
その中心には王様やその一族が住む城があり、その城の城壁の外には貴族様が住んでいる。
更に次の城壁の外には、下級貴族や学者先生、騎士様、更にその次の城壁の外には、商人や職人たち、と、城壁によって身分や職業も区別されている。
そして俺が住むこの地区は、王都でももっとも外の城壁の更に外。
酒と女と暴力が溢れ、住んでる人間も、娼婦やゴロツキ、お尋ね者に病人。
要は、まともな人間なんて居やしない、そんな地区だ。
俺のかーちゃんは、小さい飲み屋をやっている。
毎晩酔っ払いに安い酒出して、少ない稼ぎで俺を育ててくれている。
この町では、まともな方だと思う。
女が体を売らずに貧しいながらも生活出来ているんだから。
俺の朝は、井戸から水を運ぶ作業から始まる。
飲み水や水浴びをする訳じゃない。
ゲ○やしょんべんで臭くなった店先を綺麗に掃除する為だ。
「カカ、おはよう」
俺が店先の掃除をしていると、声をかけてきたコイツはラナ。
俺の1つ年下で、毎朝ウチに来る。
『先に喰ってろ』
「うん」
ラナの母親は娼婦。
ラナはまだ自分で稼げる歳じゃないから家では朝飯を食べられず、可愛そうに思ったウチのかーちゃんが「ウチに食べにおいで」と声をかけて、それ以来毎日来るようになった。
今ではウチでメシを食べさせてもらう代わりに、かーちゃんの仕事を昼と夜と手伝っている。
店先の掃除を終わらせ店に入ると、かーちゃんが作ったスープをラナがテーブルに並べているところだった。
『先に喰ってろ』と言っても、毎回俺が来るまで待っている。
俺がテーブルに座ると、ラナが二人分のパンを持って来て俺の隣に座る。
二人で硬いパンをかじりながらスープを啜る。
かーちゃんはそんな俺たちを余所に、店の仕込みの仕事をしている。
昼間は食堂もやってるから、朝から忙しい。
俺もラナも父親は居ない。
この町じゃ珍しくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます