赤い君と緑の僕
碧色
戦争じゃん。
「ねえ、赤いたぬきと緑のきつね、どっちが好き?」
「…なんか違くない?」
「赤いきつねと緑のたぬきだ!んで、どっち?」
学校の帰り道、いきなり聞かれる。
この質問、とてもくだらないことのように思える。だが、2択の質問は戦争の種だ。とあるお菓子ではいつまでも血で血を洗う戦いが起きている…らしい。この質問もまた戦争の火種に成り得る。選択を間違えれば取り返しがつかない。
「えぇーと、あのーんー」
「何その声?鳴き声?」
どうする…どっちが正解なんだ…!?
いや…ここは後悔のないように正直に言おう。ここで嘘をついてこの後の人生隠しながら生きていくのはとても苦しいことだ。
「赤いきつね…かなぁ?」
「…ふーん」
やっちまったあああああああああ
緑のたぬきが正解だったのか…どこで道を間違えてしまったのか。後悔しかない。
「コンビニ寄ろ」
「あぁ、うん」
コンビニに入ると他の商品に脇目も振らずまっすぐカップ麺売り場に向かう。
「はいこれ」
「ああうん」
赤いきつねを渡してくる。もう一方の手には緑のたぬき。やっぱり緑のたぬき派閥だったか…もう絶交なのだろう。最後の晩餐というわけか。最後に赤いきつね…悪くないか。
購入しお湯を入れて近くの公園に向かう。お湯をこぼさないように慎重に向かい、着いた時には食べ頃だった。
「どっちも食べたかったから赤いきつね好きでよかったー」
「え」
「ん?ひとくち食べちゃだめ?」
「それはいいけど…いや、戦争じゃないの?」
「何言ってんの?」
「ナンデモナイデス」
なーんだ、全て勘違いだったようだ。安心する。世界は平和だ。カップ麺のように暖かな世界。いや、カップ麺が世界を平和にしているのかもしれない。
「じゃあ少し緑のたぬき貰っていい?」
「いいよ〜」
厚揚げをひとくち食べる。美味い。思わずもう一口食べる。緑のたぬきもいいな。
「赤いきつねも美味しい!って食べ過ぎ!戦争だよ!!」
「いやそっちも食べ過ぎでしょ、戦争じゃん。」
赤い君と緑の僕 碧色 @chan828
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