筋肉女子の弱点

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第一部 筋肉女子の弱点

腹筋女子と、くすぐり女子

「すううう、ホッ!」


 わたしは、思いっきりお腹に力を込める。


 我ながら、見事なシックスパックができあがった。


「わーすごいすごーいマユ」


「どうよ、シノ! 三ヶ月でダイエット成功ばかりか、腹筋まで割れたし!」


 三ヶ月で5キロ痩せたらラーメンおごるという約束は、こうして果たされそうだ。

 さすが、女性週刊誌にも紹介されたフィットネス動画である。

 効果は、バツグンだった。


「さわっていい?」

「いいとも!」

「ホント、めっちゃ硬い」


 板チョコみたいになったわたしのお腹を、シノの指がつまむ。

 

「だろ? 羨ましいだろ」


 体育をしている女子はたくさんいるが、お腹が割れるくらいまで鍛えた女子はいまい。

 

 シノが、わたしの腹筋に指を這わせる。


「つー」

「んはあん!?」



 かなり力を入れていただけに、変な声が出てしまった。


「ちょ、今の声なに、フヒヒ」


 シノが笑い転げる。

 

「なんでもない! なんでも!」


「うそ、いま『あはあん!』とか言ったし」

「言ってないし。そこまでじゃなかったし」

「じゃあ、もっかいね」


「よしよし」

「つー」

「あっはぁん!?」


 だめだ。コイツの指使いが絶妙すぎて、声が出てしまう。



「マユ、ヤバいって!」

「わたしのせいじゃないし!」

「でもヤバい! これは鍛えた意味ないし」

「いやいや、わたしただのくすぐったがりで!」


 弁解すればするほど、墓穴をほっていく。

 

「じゃあさ、今からお腹を三分間コチョコチョするね。三分耐えたらギョーザ追加してあげるよ」

「おっ言ったな? 耐えてやろうじゃないの」

「そのかわり、声出たらそっちがギョーザをゴチね」

「わかったよ。来い!」


 わたしは、再びお腹に力を入れた。



「じゃあ、この砂時計が落ちきっても耐えたらギョーザね。スタート」



 シノが、小さい砂時計を傾ける。


「つー」



 やっぱり、爪がくすぐったい。


「う、ふう、ふうん」

 

 

 さすがに、慣れてきたな。

 来るとわかっていたら、こんなもんだろう。



「平気?」

「うん、これくらいなら」

「そっか。じゃあ、これは?」

 

 

 今度は、本格的に腹をくすぐってきた。

 しかも両手で。


「く! くうう!」


 これは、たまらん。

 声は出さないものの、息が漏れてしまう。



「何本目に死ぬかなぁ?」


 シノが、くすぐる指を増やしていった。


 ヤバい。それ以上来られると耐えられないかも。


 その後も、シノはシックスパックの輪郭をなぞったりして、くすぐり続けた。


 わたしは耐えに耐え、自我を保ち続ける。


 ギョーザがかかっているのだ。真面目に取り組む。


 そして、砂時計が落ちきった。


「はあ。三分経った! わたしの勝ちだ!」


「あーあ。ちぇー。ちょん」

 


「はへええ!?」



 へそぉ!?

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