第130話 新年も仲良しな二人
ラブラブ洗いっ子をして体中を念入りに洗ってもらい、一緒に湯舟に浸かる二人。すぐ近くに親がいるというのに、こんなに堂々と一緒にお風呂でイチャイチャとは大胆過ぎだ。
「んんっ……ちゅっ」
当然、湯舟の中で抱き合ってキスする。
「お姉ちゃん、早く出ないとバレちゃうよ」
「大丈夫だよぉ、テレビ観てるし」
「ダメだって、こんなのバレたら……」
「ふへぇ~バラしちゃおっか?」
「もう何なの、このエロ姉」
まだまだキスをし足りない百合華を何とかなだめる。
「後で何でもするから、今はやめてよ」
「ん? 今、何でもって?」
「後で(親が北海道に戻ってから)何でもするから」
「うん、分かった。後で(すぐ後で)たっぷりサービスしてよね」
見妙にニュアンスが違うまま合意する。
「じゃあ、ユウ君は先に出て待っててね」
「うん」
ガラガラガラ――
静かに浴室を出る。
親がテレビを観続けているのを祈りながら。
ガチャ!
何もなかったように、さり気なくテレビを観ている両親の近くを通り、冷蔵庫からお茶を取り出す。
「あれ、悠君、お風呂長かったね」
「ギクッ! え、えと、寒いから温まろうかと」
「風邪をひかないように温まって寝ないとな」
「う、うん」
幹也との会話を無難に済ませ、二階の自室へと上がる。
トタトタトタ――
パタン!
「あ、危なかった……バレてないよな……いや、バレたのか……? どっちなんだ? あんなの恥ずかし過ぎるよ」
思い出しただけで腰の奥の方がウズウズと震える感覚がする。もう引き返せない、エッチ姉の調教で変態道を極めてしまっているのかもしれない。
「はあぁ……凄かった……お姉ちゃんの指……あんな綺麗な指が俺の……」
コンコン!
「ユウ君」
ドッキィィィィーン!
「うわっ、ビックリした!」
ドアを開けて百合華が入ってくる。
「どうしたの? イケナイコトしてたの?」
「し、してないから!」
いつも部屋でイケナイコトしているのは百合華の方だ。姉の部屋を開けるときは注意しなけらばならない。昔のように、ノック無しで突然開けると、盛り上がってる最中の百合華と『こんにちは』してしまう。
「とにかく、親の前ではやめてよ」
「ふぅ~ん、ユウ君だって興奮してたくせにぃ~」
確かに興奮していた。背徳感が高まれば高まるほど、バレてはいけないと思えば思うほど燃え上がってしまうのだ。
「いけないんだぁ~ユウ君ってば、お父さんやお母さんの前で興奮しちゃうなんて、すっごくエッチでいけないんだぁ~」
イケナイのは百合華の方なのに、いつの間にか悠にされてしまう。恐るべきエロ姉マジック。
「ほらぁ、キスしよっ!」
抱きついて体を預けてくる。
風呂上がりのしっとりとした感触と、ボディソープやシャンプーの香りがして、一気に気持ちが昂ってしまう。
「お姉ちゃん、さっきお風呂でいっぱいしたのに」
「えぇ~っ、全然足りないよぉ。もっともっとするのぉ」
甘えた声で上に乗って体重をかけてくる。姉の柔らかな体や重みを感じるのが、たまらなく心地良く愛おしい。
「はあ……お姉ちゃんがオネダリすると、何でもしてしまいそうな自分が怖い」
もはや愛の奴隷だ。
「ユウ君、今年も新年になるまでキスし続けて、年が変わる瞬間はキスで繋がっているんだよ。来年も再来年も、その先ずっとずっと新年はキスしたまま迎えるの」
「うん、俺もお姉ちゃんと毎年キスして新年を迎えたい」
二人の体が重なりくちびるとくちびるが触れ合う。もう何回したか分からないほどのラブラブなキスをする。
「お姉ちゃん、まだ新年まで一時間くらいあるよ」
「もちろん一時間キスしたままだよぉ」
「マジか……」
「マジマジぃ~」
そして、本当にそのまま一時間キスし続けた。お互いに大好きな気持ちがあれば、時間を忘れて没頭してしまうのかもしれない。激しく唇を吸い合っていると、一時間では足りないくらい燃え上がってしまう。
ゴォォォォーン!
ヒュゥゥ~ドォーン!
何処かで鐘の音と新年を告げる花火の音が鳴った。
「あけましておめでとう、お姉ちゃん」
「あけましておめでとう、ユウ君」
「「今年もよろしくね」」
年が変わる瞬間はキスをしたまま、両手も恋人つなぎでギュッとして、またラブラブな一年になるように願いながら年を越した。
「えへへっ、ユウ君」
「お姉ちゃん……」
「大好き、ユウ君」
「俺も大好き、お姉ちゃん」
ぎゅっぎゅぅぅ~っ!
もう離れたくないと主張するように、強く抱きしめ合う。お互いの胸のドキドキがハッキリ伝わるほどに。
「じゃ、ユウ君、私の部屋に行こうか? オシオキ始めだよ」
新年早々とんでもない事を言い出すエロ姉。
「は?」
「さっきお風呂で言ったでしょ。後で何でもするって」
確かに悠は言った。何でもするのだから、ド変態な事でも超キツいオシオキでもしなければならない。
「あの……後でっていうのは、親が戻ってからって意味なんだけど……」
「やだなあユウ君、時間は指定してないでしょ」
まるで計画通りと言わんばかりに、ニマニマとエッチな顔をした百合華が迫る。
「うっ……しまった……」
「断るのならぁ、親の前でオシオキしちゃっても良いんだよぉ」
「あああ……」
もはや退路は断たれた。
ここで断れば、本当に親の前でド変態プレイをしかねない。普段やっているような強制密着プレイや
「うわあああ……お、お手柔らかに……」
「それはユウ君次第かな?」
悪魔姉の微笑みがやたら可愛くて、更に恐怖が増してしまう。
ギシン、ギシン、ギシン――
わざと一階まで音が響くように、激しくベッドを軋ませる百合華。悠の上に乗って思い切り
「わぁぁぁ~バレちゃう! バレちゃうから!」
「バレちゃえバレちゃえぇ~っ!」
ギシン、ギシン、ギシン――
悠が反撃できないように、手錠で繋ぐ念の入れようだ。今、百合華は騎乗スキル全開で敵に突撃する女騎士のように輝いていた。さしずめ、
「もうだめだぁぁーっ!」
「ユウ君、大好き! 全部全部私のもの! 誰にも渡さないんだからぁーっ!」
その夜、二人の絶叫と共に、美しき女騎士は人馬一体となって新年を駆け抜けた。人々は言う、元旦の奇跡だと。
――――――――
元旦番組がテレビから流れるリビングに、こそこそと静かに悠が入る。
朝方まで百合華に攻められっぱなしで、寝不足や疲労でフラフラだ。途中から手錠は外してくれたが、その後も時に激しく時に優しく、アメとムチを使い分け念入りに躾けられてしまった。
「お、おはよう……」
さり気なく幹也に挨拶する。
「あ、お、おはよう悠君……」
少しぎこちない空気が流れた。
きっと、夜のアレは聞こえていたはずだ。
新聞をペラペラとめくりながら、それとなく聞いてみた感じで幹也が話しかけた。
「あ、あの、悠君……やけに二階が騒がしかったみたいだけど……?」
ううっ!
き、来た……
どうやって誤魔化そう……
「えっと……最近、お姉ちゃんがプロレスや総合格闘技にハマっちゃったみたいで……」
もう本当にプロレスという事にしておく。
「そ、そうか。プロレスか。全く、百合華にも困ったものだな……」
「そ、そうなんですよ……」
お互いプロレスごっこという事にしておく。何となくバレてはいるのだが、気まずくいて誤魔化したい雰囲気なのだ。
「百合華はしょうがないな。ご近所の手前もあるのに」
「で、ですよね……」
ガチャ!
「おはよぉ~ふぁぁ~」
噂の百合華が大きなあくびをしながら入ってくる。
「あ、お母さん、お雑煮ですか? 私も手伝います」
「そ、そう、ありがとう」
何やらキッチンで絵美子と話し始める。
「あっ、そうそう。お母さんも早く孫の顔を見たいとは思いますが、ユウ君が卒業するまで待ってくださいね。その辺はキチンとしてますから」
「え、ええっ、そ、そうね……」
「「ブッフォォォォッ!」」
悠と幹也が、飲んでいたお茶を吹きそうになる。
あああああっ!
もう台無しだぁぁぁぁ!
上手く誤魔化したのかと思ったのに。
てか、清い交際は何処に行ったんだぁぁぁぁ!
たたたっ!
「ユウ君、もぉ~早くぅ、おはようのキスはぁ~」
朝一番で抱きついて、いつものようにキスを要求する。親がいない時は、毎日している日課である。もちろん、おはようのキスの他に、行ってらっしゃいのキス、ただいまのキス、いただきますのキス、おやすみのキスも義務化されていた。更に、ありがとうのキスや、ごめんなさいのキスや、特に意味はないけどキスなど、一日に数え切れないほどのキスをしなければ許してもらえない。
「ほらぁ、むちゅ~っ!」
「んんんっ…………」
あああ、親の前ではやめてぇ~っ! もう、恥ずかし過ぎてしんじゃいそうだぁ~っ!
「ううっ、朝から娘の痴態を見せられるのがキツい……」
「ああっ、何だかまた
やっぱり両親までダメージを受けてしまった。
「んんぁん、ユウ君……」
百合華が抱きついたまま耳元に顔を寄せる。
「ねえ、またしたくなっちゃった。ここでしよっか?(ぼそっ)」
「そそそ、そんなのダメに決まってるだろ!」
あんなにしたのに、まだ足りないと言わんばかりの百合華。本気なのか冗談なのか、底なしの
「ほ、ほら、お姉ちゃん、初詣行こうよ」
「えっ、姫始め?」
「全然違うから! 『は』しかかすってないから!」
「もぉ~冗談だよぉ。姫始めは、もうしたでしょ」
「「「ブッフォォォォッ!」」」
三人揃ってズッコケそうになる。
ダメだ、この姉もう手遅れだ……
新年を迎え新たなイチャイチャで始まる明石家。もはや進撃する姉を止められる者は誰もいない。
色々と親バレして、悠も両親も気まずい雰囲気の中、百合華は幸せいっぱい夢いっぱいな新年の始まりだった。
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