第76話 恋人みたいなプールデート

 悠と百合華を乗せたクルマは人気のレジャーランドに到着した。


 屋内外に様々なプールやアトラクションがある施設だ。大きな流れるプールやスライダーなども完備し、売店や飲食店も立ち並び一日中遊べるようになっている。


 途中のサービスエリアで想定外の時間を使い、予定より少し到着が遅れてしまった。

 クルマの中で昂ってイチャイチャが止まらず、隠れてキスしまくって遅れるというのが実に二人らしい。


「やっと着いたぁ~」

「お姉ちゃんがキスし過ぎなんだよ」

「そ、それは、ユウ君がハラハラさせるからぁ」

「ちょっとだけって言ってたのに、結局ちゅっちゅちゅっちゅしまくるし」

「も、もぉ~ユウくぅん」

「でも、無事到着して良かったよ」


 クルマを降りて入場する。

 仲良く手を繋いで恋人っぽい感じの二人だ。

 地元を離れ誰も知らないここでは、少しだけ伸び伸び出来るのかもしれない。


 更衣室に入る手前で、名残惜しそうに手を放すのを躊躇ためらう。

 水着に着替えるだけなので、ほんのちょっとの時間なのだが。


「うう~ん、ユウ君と一緒の更衣室が良いよぉ」

「お姉ちゃん……すぐ会えるから」


 余り入り口でイチャイチャしていては後続の人達の邪魔になるので、悠は姉を説得してどんどん入って行った。




「うおっ、これは凄い広いな」


 先に着替えて施設内に入った悠が、長大な流れるプールやスライダーに目を奪われる。

 この広さなら一日遊んでも全部回るのは大変そうだ。



「「「がやがや…………」」」

 悠がプールを眺めていると、後ろでどよめきが起こった。


「うおっ、す、すげぇ……」

「たまらねぇ……」

「ああ、たまらんな」


 周囲の男達が口々に囁く声が聞こえてくる。


「えっ?」


 悠が振り向くと、そこには此の世の者とは思えないほど魅惑的で幻想的な雰囲気を漂わせる女が歩いていた。


 他者の追随ついずいを許さない圧倒的な美貌と、男どもの根源的本能を揺さぶり破壊しそうなほどの魅力と、悪魔の如く可視化出来るのではと目を疑うくらいのフェロモンを放出し、次元振動で空間転移を起こしそうな存在感を放っている。


 そう、常勝不敗地上最強の姉が現れたのだ。

 百合華が水着で歩いているとも言う。


 そして、何故か百合華はビキニだった。

 少し透けた素材のレイヤードビキニで、トップスは下に着ている水着が上のレース素材に透けて、まるで下着のようなセクシーさを醸し出してしまっている。ボトムスに至っては下がTバック水着になっており、重ね着した上のレース素材が尻や大事な部分が見えないように加工されているのだが、透けたレース部分が余計に想像力を掻き立ててしまい、想像を絶するようなエッチさになっていた。


「ちょ、ちょっと! ダメだって」


 悠がタオルをかけて姉を隠そうとする。


「ユウ君、どうしたの?」

「だって見えちゃうだろ」

「ふふっ、見えないから大丈夫だよ。重ね着して見えないようになってるから。お風呂で着てるローライズよりは隠れてるでしょ」


 確かに重ね着するデザインの水着で、ボトムスのTバック部分も上に穿いたレース水着の内側に布があてがわれて隠れている。


「違うんだって。チラリズムの問題なんだよ。パンモロよりパンチラの方がエロいみたいに、少し見えているTバックの紐部分が想像力を掻き立てて、透けているんじゃないかと思ってエロい目で見ちゃうんだよ」


 悠が切々と語る。


「もぉ~ユウ君のエッチ」

「俺じゃなくて、他の男も見ちゃうだろ」

「ふふふっ、ユウ君ったら、お姉ちゃんを独占したいんだぁ~」

「ううっ、俺だけのお姉ちゃんなのに……」


 百合華の、悠の独占欲を刺激して自分だけの女にしたい欲望を刺激する作戦が大成功だ。

 前は水着になると男達の視線やナンパが迷惑だったのだが、今は大好きな悠と一緒なので少しだけ悩殺したくなってしまう乙女心だった。


 ただ、レイヤードビキニは普通にファッションとして問題無く、百合華が着ると何でもエロいだけなのだ。


「ユウ君、他に何か言うコトあるでしょ」

「それは……お姉ちゃんの水着姿が一番可愛いよ」

「うふふぅ~えへへ、ありがと。ユウ君」


 百合華が抱きつく。


「あっ、そういえばユウ君。ここでは私のことは百合華ちゃんだよ」

「は? 何で?」

「当然でしょ。公衆の面前で姉弟がイチャイチャしてたらどう思う?」

「あっ、そういえば……」

「ここでは私達は恋人同士なの。いい?」

「う、うん」


 百合華に言いくるめられ恋人同士にされてしまう。

 もう完全に姉の計画通りで、プールの中でイチャイチャする気満々だ。


「はい、練習して」

「え、えっと……ゆ、百合華ちゃん」

「はい、よくできましたぁ~」


 頭をなでなでされる。


「はい、もう一回ね」

「百合華ちゃん……」

「うふふっ、ユウ君えらいね。その調子だよ」


 百合華の顔が近付きキスされそうになるが、周囲の視線が気になりストップした。

 キスが来るものだと思ってくちびるを出した悠がガッカリする。


 もう完全に調教済みだ。

 セクシーな水着で独占欲を刺激させ、恋人としての呼び方を受け入れさせ、ご褒美をおあずけして焦らしまくる。この短時間で、悠は完全に虜にされ堕とされていた。


 お姉ちゃん……

 大好き過ぎておかしくなりそうだよ……

 まだ、これからプールで遊ぶのに……

 こんな状態で宿に泊まったら、我慢できる自信が無いよ……



「ほらほら、ユウ君。流れるプールに行くよ」

「う、うん」


 二人乗りの浮き輪を持ってプールへと向かう。


 ザバァァァァン!

「きゃっ!」

「わあっ!」


 二人で浮き輪に乗って流れて行く。

 悠は、周囲の男達に姉のカラダを見られたくなくて、少し自分のカラダをかぶせてしまい密着する。


「ユウ君のエッチ。いくら私のコト好きでも触り過ぎだよ」

「ち、違うから! 見えちゃうだろ。他の男に」

「ううぅん~もう、考え過ぎだよぉ」


 百合華が、わざと尻を突き出す恰好を取る。

 超魅惑的な尻がレイヤードビキニでより刺激的になり、周囲の男達の視線が集まりそうになった。


「うっわ、ダメだって!」


 ガバッ!

 悠が百合華の尻に抱きついた。

 必死に隠そうとしているのだが、周囲からは彼女の尻にスリスリするバカップルにしか見えない。


「ちょっとぉ、ユウ君エッチ過ぎだよ。夜まで待って」

「違うのに。そんなんじゃないのに」


 まるで彼氏が我慢出来ないみたいだ。

 百合華の後ろに抱きついたまま浮き輪に乗って流れて行く。

 そのまま二人は、暫し抱き合ったままプールの上を漂う。


 ううっ、お姉ちゃんとキスしたい!

 滅茶苦茶キスしたい!

 俺は、どうしちゃったんだ……


 百合華の水着姿や焦らし行為により、悠がウズウズムラムラして止まらなくなってしまう。


「あ、あの、お姉……百合華ちゃん」

「ん? 何かなユウ君」

「き……キスしたい……ううっ」

「ふふっ、ユウ君。ダメだよ。他の人が見てるでしょ。ガマンして」

「そ、そんな……」


 真っ赤になっておねだりする悠を見つめ、ニマニマと悪魔姉の笑みを浮かべた百合華が『計画通り!』といった顔になる。

 とことん追い込んで焦らしまくり、夜のお布団で我慢できなくなった悠と合体する作戦だ。


 やがて二人を乗せた浮き輪はトンネルになっている陰に差し掛かる。


「ちゅっ!」


 一瞬だけ陰になり周囲から見えない場所で、百合華が悠にキスをした。

 すぐに浮き輪はトンネルを抜け、再び見晴らしの良いコースへと流れて行く。


「えっ、あの……百合華ちゃん……」

 悠が茫然とした顔をする。


「あれあれぇ~ ユウ君どうしちゃったのかな?」

「今の……」

「もぉ~ユウ君ってばぁ、そんなもの欲しそうな顔しないでっ」

「ううっ……」


 その後も、物陰に入った一瞬を狙ってキスされたり耳をはむはむされた。

 どんどん追い込まれる悠を、ニッコニコになった百合華が攻めまくる。

 悠が我慢できずにキスしたがると断るという徹底ぶりだ。


「うううぅ……もう許して」

「えへへぇ、ユウ君ってば可愛いいんだからぁ」

「もう限界だから」

「しょうがないなぁ~ じゃ、次はスライダーね」


 浮き輪を降りた百合華が、悠を引っ張ってプールから出ようとする。


「ちょっと待って! 今は大変なコトになってるから」


 百合華が悠のあそこを見つめる。

 にまぁ~っと嬉しそうな顔になった。


「私にくっついてれば見えないから大丈夫だよぉ」

「大丈夫じゃねぇ、余計に恥ずかしいって!」


 結局、百合華がニマニマ見つめていては収まるものも収まらないので、そのまま二人は密着したままスライダーへと移動した。

 抱き合いながら歩く熱々カップルのようだ。




 次はウォータースライダーで遊ぶ為に順番待ちをする。

 階段で待っているカップルの列に加わると、自分たちまでカップルに見られていると思い少しだけ恥ずかしくなる悠だった。


 ふと気づくと、周囲の男たちの視線がチラチラと百合華に集中していた。


「ん? ユウ君、どうしたの?」

「おね……百合華ちゃん。見られちゃうから」


 悠が包み込むように百合華に抱きつく。


「もぉ、余計に恥ずかしいよぉ」

「だって……俺だけの百合華ちゃんなのに」


 超絶熱々で百合華のフェロモンまで漏れまくり、そこだけピンクパープルの靄がかかったような雰囲気になってしまう。

 周囲のカップルたちは、彼氏が百合華をチラ見していたのがバレて、怒られたりつねられたりの大騒ぎだ。


 暫く待ってから、やっと二人の順番が回ってきた。

 スタッフの指示通りに乗り込む。

 百合華が前に乗り、後ろから悠が抱きしめるスタイルだ。


「もっと腕を回して密着してください」

 スタッフの女性が注意する。


「えっと、こうですか?」

「ダメです、もっと彼女さんとくっついて」

「こう……」

「もっと、もっと! 脚で挟んで腕はもっと抱きしめて」

「は、はい」


 ギュッと百合華を抱きしめて、悠の腕は百合華の下乳のプニプニと当たっている。


「はい、出発!」


 二人を乗せたスライダーが、凄い勢いでチューブ状のコースの中を流れて行く。


「きゃぁぁぁぁ! 怖い」

「うっわ、けっこうなスピードだ」

「ユウ君、もっと抱きしめて!」

「う、うん」


 ぎゅうぅぅぅぅ~


 悠の手が百合華の胸を鷲掴みにする。

 不安定な水の上を滑っている為に、偶然モミモミしているだけだ。

 決してエッチなイタズラではない。


「あああぁ~ん、ユウ君のエッチぃ~!」

「うわああっ、偶然だから!」


 悠の手が更に百合華の水着に滑り込み、おっぱいを触ってしまう。


「ああああぁん! だめぇぇぇ~っ!」

「わざとじゃないからっ!」


 ドボォォォォォォーン!


 長いコースを滑りきってプールの中に二人が落ちる。

 百合華のビキニのトップスがズレて胸が露出してしまい、悠が必死に後ろから手で掴んで隠す。


「もぉお、ダメ! ユウ君のエッチ!」

「違うから! わざとじゃないのに」

「いつまで揉んでるのよぉ~」

「でも、離したら見えちゃう」

「ダメぇぇぇぇ~」


 無意識にエッチな手つきの悠が百合華の胸を隠し続け、勝手に盛り上がって陥落してしまう姉。

 途中まで攻め攻めだったのに、最後はやっぱり堕とされる百合華だった。

 まだ今日は長いのに、既に気分は二人共エチエチでどうにかなってしまいそうだ。

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