第936話 やられた?やっちゃった?
「げ。
またやっちゃった・・・」
のんびり美帆さん(と言うか正確には夫の恭弥さんの会社のと言うべきだけど)の霊泉に浸かって運転と草刈りの疲労を溶かし出し、暫し雑談と樹くんをあやしながら涼んでから家に帰った私はタブレットを確認して思わず呻いた。
「どったの?」
碧が部屋の段ボール猫ハウスで寝ている源之助をそっと挨拶がわりにおでこを撫でながら静かに尋ねる。
「◯マゾンのプライム契約の無料体験の契約解除が1日手遅れだった。
先月の23日に何か買ったときに無料体験しませんかって出たから申し込んで、ちゃんと1ヶ月が過ぎる前に解約するつもりだったんだけど、あれって『1ヶ月』じゃなくて『30日』だったみたい」
なんか毎回これに引っ掛かってる気がする。
前回の時はまさか有料サービスの開始前にお知らせが来ないとは思ってなかったから知らせが来たら解除しようと予定していたら、クレジットカードのチャージが発生しましたと言う知らせで時間切れになったのに気付いた。
今回はそうならないように気をつけてたんだけどなぁ。
2日ぐらい前に解約すれば良かった。
「あらま。
今キャンセルしてもダメなの?
ああ言う期間的なサービスってキャンセルしたら日数分の返金は法律で義務付けられてんじゃ無かった?」
碧が聞いてきた。
「ちょっと待ってね。
キャンセルしてみる」
つうか、昨日見た時は『現在のサービスの有効期限』か何かそんな日付が6月22日になっていたから、21日じゃなくて22日にキャンセルすれば間に合うと思ったんだよねぇ。
小さな何かを買ったときに配達料金を払わなくて済むのは助かるから、ギリギリまで待っていようと欲張ったのが失敗だったようだ。
昨日見た時は有効期限が今日となっていたのに、今日見たら7月22日になっている。
なんかこう、最近のサブスク系な契約って費用が発生するギリギリ期限に解約しようとする人間の裏をかこうとする表示方法とか決まりが多くってちょっと嫌になるなぁ。
そんでもってプライム契約をキャンセルしようとすると・・・。
「今日チャージされた筈なのに、600円の月額チャージのうち300円しか返ってこないんだって」
日割り計算になってないじゃん!!
まあ、300円程度で大騒ぎする程でもないけど。ちょっとムカつく。
しかも、今日にキャンセルしようとすると継続停止にして次の有効最終日までそのままプライムサービスを使い、期限3日前に契約終了の知らせを受けてはどうかと提案されてきた。
無料お試し期間の終了は知らせてこない癖に。
300円は絶対に返ってこないんだから、このまま600円の月額使用料を払って7月22日までプライムサービスを使い、その便利さに抜け出せなくなる事を期待しているっぽいね。
「なんかこう、600円とか300円って言われると微々たる金額な気はするよね」
肩を竦めながら碧が言った。
まあねぇ。
300円だったらスタバの日替わりコーヒーと似たり寄ったりな値段じゃ無いかな?
600円だって2週間に1回ぐらい食べてるクレープよりは安いし。
まあ、あのクレープもちょっと割高だよね。
美味しいんだけど。
「いや、悔しいから今すぐ解約する。
どうせ買い物はそれなりにまとめ買いすれば配達料はタダになるし、プライムビデオは何があるのか探し難いから見る気も失せたから要らないし」
ある意味、プライム契約していたらこないだのスマートウォッチみたいな嘘っぽい割引サービスに関して実際に直近で一番高い売値が幾らだったか表示してくれるとか言った感じの現実的な利点があるならまだしも、単にもっと買わせる為の仕組みしか無いサービスはさっさと辞めておきたい。
「なんかさぁ、月600円で送料無料ってどう考えてもペイしない気がするんだけど、大抵のプライム会員は3000円以上毎回買っているのか、それとも他の無料会員からふんだくって赤字分をカバーしているのか、どっちなんだろうね?」
碧が源之助の側に座りながら呟いた。
「・・・まあ、◯マゾンで買い物するのに慣れてきたら高額な買い物もそっちの方が信頼できるとか、ポイントが貯まっているからって感じで使って最終的にはペイするようになるんじゃ無い?」
ちょっと洗脳されているっぽくって怖いが。
なんかなぁ。
ソーラーパネルやスマートウォッチは中国製ばかりだし、買い物は◯マゾン、AIやクラウドサービスも米系会社が殆どって話だし、どんどん海外の企業に日本の根幹産業も握られるようになっているみたいで、ちょっと怖い。
大丈夫なんかね?
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