お手軽?!
第821話 まじ?!
「大江さ〜ん、終わりました!
最後なんで、ちょっとお茶をご一緒しませんか?」
碧が監督用コンテナハウスのドアをノックしてドアを開けながら声を掛ける。
解体現場は色々と煩いので、ノックをしたら返事を待たずに開けてくれて良いと言われているのだ。
基本的に現場で色々と作業の指示を出したりしている事が多い大江さんだが、それなりにペーパーワークとかもあるらしく、私らが来る日の到着予定時間と午後はコンテナハウスで書類作業(今だったらPC作業だろうけど)をする様にスケジュールを組んでくれているっぽいんだよね〜。
出来る女は気遣いもさり気ない。
「終わりましたか。
急いでいただいた様で、ありがとうございました。
そうですね、最後ですしケーキでも食べに行きましょうか」
大江さんが立ち上がりながら応じた。
「あちらのホテルだったら駅へ帰るのにここを通りますから、私達の車で行きましょう」
隈がやばい事になっている呪われ中の大江さんに別行動で車の運転をさせて、目の前で事故られたりしたら心臓に悪いし。
即死しなければ碧が救えるとはいえ、崖から車ごと落ちて炎上とかしたら救いに行ける前にご臨終しちゃいかねない。
それに自動車という巨大な凶器でうっかり崖とか対向車とかにぶつかった場合、即死するリスクもゼロではないし。
「宜しいのでしたら、お願いしますね」
自分の疲れを自覚しているのか、大江さんもあっさり合意したのでさっさとレンタカーの方へ向かう。
私たちのレンタカーに盗聴器が付けられているとは思わないが、ホテルまでの距離は短いので話が途中で途切れるのも面倒だし、道中は適当に雑談をして済ませた。
で。
ホテルの喫茶店でケーキとお茶を頼み、それが届いたところで本題へ。
「大江さんは悪霊とか呪いとかってどの位信じていますか?」
不動産関連の業界だったら悪霊は基本的に誰でも信じるようになると青木氏が以前言っていたし、退魔師として派遣されている我々に悪霊なんぞいないと言い切る事は無いだろうが、呪いも信じているかどうかで話の持って行き方が変わる。
「この案件に関わって悪霊を信じていない人間は居ませんよ。
霊感ゼロで悪霊なんて気のせいだって豪語していた奴でも、この案件では絶対に日が暮れる前には帰る様になりましたからね。
それが綺麗さっぱり消えて清々しくすらなるんですから、今回は退魔師の凄さっていうのも実感できた案件でした。
ちなみに私個人は元々京都の方から出てきた一族の出身で、先祖には陰陽師だったと言われる人間もいたので呪いも実在すると教わっています」
大江さんが答えた。
「では・・・大江さん、呪われている自覚ってあったりします?」
碧がズバッと尋ねた。
どうやら大江さんは旧家に所縁のある家の出身らしい。
工事現場で働く女性としてはちょっと予想外な背景だが、考えてみたらゼネコンとかの大手は退魔師系の旧家と繋がっていても不思議はないか。
と言うか、雇われではなく創業者関連の人なの??
単なる偶然かもだけど。
どちらにせよ。
ゼネコンとかだって、悪霊とかで問題がある場合に内部で対応できる方が早いし安いし融通がきくと考えて退魔師の旧家と繋がりを持ちたがろうとしても不思議はない。
本当にヤバいところへ手を出す前に教えてもらえるかもだし。
まあ、ここの案件に手を出した時点でちょっと誰かが迂闊だったか、楽観的過ぎたかだろうけど。
「やっぱりですかぁ・・・。
ノイローゼなのか呪詛なのか、どっちかなぁと悩んでいたんですよね」
やるせ無さそうなため息を吐きながら大江さんが言った。
なんかこう、ノイローゼの方がマシっぽい雰囲気??
間に合ってお金を払えるなら、呪いの方が変な精神病より後腐れなく解決できるよ?
「退魔協会に私へ指名依頼して頂いてもいいですし、信じていただけるなら私へ直接呪詛返しを依頼して頂いても結構です。
一応相場前後の対価を受け取らないと退魔協会に睨まれるので、無料という訳にはいきませんが」
まあ、私に頼みたくないなら無理にサービスを押し売りするつもりは無い。
「ちなみに誰に呪われたのか、心当たりはありますか?
呪詛返しは倍になって返るとは言っても、現時点の程度だったら死にはしない程度だと思いますから、下手をすると再度呪われるとか、もっと直接的な手段で危害を与えようとしてくるかも知れません」
工事現場で働いている間に呪われるのはかなり危険だろう。
再度呪われる可能性があるんだから、心当たりがあるなら何らかの手段を講じて相手を訴えるなり逮捕させるなりした方が良い。
大江さんが深くため息を吐いた。
「完全に自覚がないところで恨まれている可能性はゼロではありませんが・・・私を呪える程身近でかつ恨んでいて呪師に伝手がありそうな人間となると・・・妹の可能性が高いんですよねぇ」
はぁ??
妹さん?!
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