第804話 どうなるかね?

「結局あの病院跡地って、単に取り壊してバカなアホ共が屯しても悪霊に取り憑かれないようにするだけなのかな?

それとも何かに再利用するつもりなのかね?」

今回は適度に田舎かつ比較的ちゃんと整備された道だし以前来た事がある場所なので、最寄駅からは私がレンタカーを運転してきた。

やっぱ練習しなくちゃ上達しないからね。


不便なところでの仕事も多い可能性があるんだし、私も問題なく車で移動できないと不便そうだ。

将来的にキャンピングカーをマジで買うとなったら、大型免許を取る為にも車の運転に慣れておかないとだし。


そこまで碧と一緒にずっと生きていくかは不明だけどね。

碧が誰かに惚れ込んで結婚したら仕事をその人と組んでする様になるかも知れないし、相手が退魔師じゃ無かった場合は仕事は私とパートナーのままだとしても夫に源之助の世話を頼む事になるだろう。


と言うか、碧が結婚したら当然私とのハウスシェアは終了になるし、源之助は碧が連れていくよね。

源之助のお母さん(それともお姉さんだった?)は碧だ。


まあ、碧は微妙に結婚に興味が無いっぽいし、晩婚化の進んだ今だったら30過ぎまで結婚しない人も多いから、下手をしたらその前に源之助が寿命で死んでいる可能性もあるけど。

・・・いや、それは無いか。

碧がいるのだ。

源之助はギネスブックに載るぐらい長生きする可能性が高いね。

ギネスに申請しなければ載らないだろうけど。


それはさておき。


「う〜ん、まあ土地としては良い感じに広いし幹線道路に近いから、物販の集荷センターみたいのを建てる可能性とかもあるかもねぇ。

建てるつもりが無いならマジで普通に木を植えて森にでもしちゃう方が良いだろうけど」

碧が肩を竦めながら言った。


最近は温暖化対策およびトラック運転手の人材不足対策として海運とか鉄道をもっと活用してトラック配送を減らす方向に企業も動いているらしいから、こんな内陸に集荷センターを作ろうと考える企業がいるのかは不明だが、まあ少なくとも津波被害は心配しなくて済むから災害対策的には悪く無い場所なのかも?

そこそこ古い病院跡地ってことは多分川の氾濫とか土砂崩れの危険も少ない場所なんだろうし。


まあ、折角の危険が少ない良い場所なのに最初の悪霊避けで手を抜いたか何かで悪霊溜まりになっちゃってんじゃ意味ないけど。

何かここに建てるなら、取り壊しで綺麗にした後に今度こそしっかり悪霊避けを設置するんだね〜。


そう言えば。

「ちなみに、もしもここの跡地に何か建てるって事になった場合、悪霊避けの結界設置の依頼がウチらに来るなんて可能性はあるの?

私は魔石無しに何十年も保つような結界の設置方法を知らないんだけど、碧は知ってる?」

前世の場合は悪霊避けと言うよりも魔物避けを村とか街の中心地や外壁に設置したし、私もそれの一部をやったことはあるが、前世の技術は基本的に核になる地点に魔石を埋め込み、それへ定期的に魔力を充填する事で魔物を寄せ付けない結界を展開する形だった。


魔術師を雇えないような小さな村だったら周囲や住民の魔力を少しずつ吸収する事で弱い結界を維持する形の物もあったが、それにしたって核の術に魔石が必要だったので、魔石が無い地球では再現できない技術だ。


「そう言うのは基本的に京都の旧家が独占してる技術だからね〜。

まあ、旧家の分家が鎌倉とか東京に出てきて本家より成功しているケースもあるけど。

藤山家のは白龍さまの抜けた牙とか鱗を使うだから、自分たちの領地とか家以外には使わないし使えない技術だね」

碧が苦笑しながら言った。


あ〜。

確かに白龍さまの鱗だけでも十分魔石代わりになるんだから、そっち系の技術になっちゃうね。

自分の領地を持っていた戦国時代とか、街全体の氏子さんたちを守っていた時代ならまだしも、現代で悪霊避けをお金を受け取る依頼の為に設置するのは割に合わないし、長期的には鱗から魔力が抜けた際に他の退魔師に修理できないんだから依頼した側も困る事になるだろう。


「じゃあ、そんな話が来てもその技能がないから無理です〜って事だね。

しっかし、悪霊祓いをして結界も張らずにすぐに元の木阿弥に戻っちゃうような仕事をする退魔師に、本当に長期的な悪霊避けを設置できるのかね?」

前回の大型緊急依頼はそこそこのランクの術師が集められた筈だけど。


どの業界も後継者不足に悩まされているらしいし。

退魔師業界は大丈夫なんかね?

悪霊なんぞ信じないとか、自分が売った後はどうなろうと知ったこっちゃないなんて言う無責任な業者とかが増えて悪霊避けを設置しない施設が増えたら、悪霊祓いの依頼は需給バランスが崩れるレベルで大量にあっても、新規敷地用悪霊避けの依頼が減ってそっちの技術を受け継ぐ人間が居なくなったりしない?


「今のところは旧家が『自分たちにしか出来ない』ってプライドを持って独占して、技術も受け継いでいるから大丈夫な筈だけど・・・長期的にはどうなるかは不明だね〜。

何と言っても少子化問題はどの家も抱える悩みだし。

歴史を誇る旧家に限って嫁に対する姑の態度が悪いから、結婚そのものが難しいらしいよ」

碧が薄く笑いながら言った。


ああ〜。

プライドが高い旧家じゃあ嫁虐めも色々とありそう。

そんな事をして跡継ぎの奥さんに金目当てなロクデナシしか来ない状況に陥ると、跡継ぎの資質が下がって困る事になりそうだねぇ。


まあ、少なくともぽっと出な退魔師の私には絶対にお見合いの話も来ないだろうし、他人事だけどさ。




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