第802話 報告
携帯が鳴った。
「もしもし?」
『あ、高木だけど。
さっきちゃんと退魔協会裏の猫にチュールを出して来たから、一応報告しておこうと思って。
今回は色々と、ご協力ありがとう。
何か今後手伝えることがあったら、いつでも言ってくれ』
通話の相手は蓮君だった。携帯を弄っている最中だったから名前の部分が小さくて気付かなかった。
今時の若者にしては、義理堅いね〜。
いや、携帯やチャットで済むなら今時の若者の方が中年よりもさらっと気楽に連絡してくるのかも?
却って昭和の義理堅さは薄れているのに、チャットや携帯やメールにイマイチ慣れてない今時の中年の方が『お礼状なんて仰々しいけど、携帯電話なんて軽すぎるかも?』とか考えてドツボに嵌ってお礼のアクションも遅れがちになりそうな気もしないでも無い。
実家に住んでいる時にちょくちょく母親が仕事関係とか近所の人とかが何かやってあげたのにその後なしの礫で上手くいったのかも分からないなんて失礼な!と怒っている事があったんだよね〜。
まあ、ここ数十年で世の中の常識が色々と社会の技術の変化と共に急激に変わりつつあるから、『当然』も個々人によって差異が生じて不満を持つ人が多いのかも。
それはさておき。
「どういたしまして〜。
コムギちゃんは家に帰ったら落ち着いた感じだった?」
『ああ。
妹の膝の上にガッツリ居座っていたせいであいつがトイレに行けないって困ってた』
ちょっと笑いの含んだ声で家の様子を蓮君が教えてくれた。
今朝呼び戻したクルミによると、無事美香ちゃんとキララは夢の中でちゃんと再会(厳密には会っていないけど)出来たらしい。
まあ、美香ちゃんが起きた時にどれだけ覚えているかは不明だが。
子供ってどのくらい夢を覚えているんだろ?
大人だったら明け方の夢っぽい精神干渉は記憶に残るんだけど、子供相手にそう言うのをやった事はあまり無いので大人と反応が同じかどうか分からない。
『そういえば、家を出る前に妹と一緒に美香ちゃんが来てた。
実はクラスと学年は違ったけど同じ学校だったみたいで、帰りに校門で待ち合わせしてコムギに会いに来たんだそうで。
なんか、キララちゃんがもう帰ってこないって踏ん切りがついたから、次の猫を迎えたいと親に強請るつもりだって言っていた』
タイミングよく蓮君が教えてくれた。
おお〜。
明け方の逢瀬はちゃんと記憶に残っていたようだ。
「それは良かった。
次はアメショーじゃなくて違うタイプの猫にした方が、後で写真を見直した時なんかに見間違いがなくて無難かも?」
少なくとも私は同じ種類の猫って見極めが苦手なんだよねぇ。
今回は写真をじっくり見比べたからキララとコムギの違いは分かったけど、横に並べて見比べるんじゃない限り、しっかり見分けられるか自信はない。
映像的記憶がちょっと微妙なのかな?
それとも認識力だろうか。
女性の方が色の違いとかに関して男性よりも細かく分かるって話をどっかで読んだが、色や模様の違いをしっかり認識できて記憶できる能力にも個人差があるんだろう。
Y遺伝子を持っているからってそう言うのが得意とは限らないのよね〜。
『まあ、確かにウチのとそっくりなのを飼うよりも全然違うのを選んだ方が、どっかで合流することになっても紛らわしい事がなくて良いかもな』
蓮君が言った。
いや、猫は合流させない方が良いんじゃない??
それなりにテリトリー意識が強いらしいから、慣れるまでは喧嘩しまくりになると思うよ?
まあ、私に知ったこっちゃないけど。
「態々教えてくれてありがと。
そう言えば、あの迷子探しの術って遮断できたりするの?
いつでも何処でも術者から探せる状態なのって考えてみるとちょっと微妙だけど」
気になった点をついでに聞いておこう。
あれって距離はあまり離れすぎるとダメだけど、相手が来る場所が分かっていればGPSトラッカーなんて目じゃない機能だよね。
『う〜ん、完全に風が通らない場所だと探しにくいかな。
基本的に空気中の相手の気を探す感じなんで、外気が流れていない場所の中に沢山人がいたりすると見つけ難い。深い地下鉄の駅なんかにいると見つけにくいから、大江戸線とか、都心部の東西線とかの駅に居たら難しいね。
もっとも、気を完全に隠せるならオープンな場所に居ても見つけられないけど』
蓮君言った。
へぇぇ。
気を隠せば何とかなるのか。
集中力が保つ短時間だったら、匂いとかを追う犬よりも隠れやすいんだね。
だけど昨日の経験だと探されても分からないから、必要に応じて気を隠そうと注意出来ないのは痛いかも。
前世だったらそう言う対探知用の魔道具とかってあったのかなぁ。
実質奴隷とは言え、権力側に属していたから追われるって事は無かったし、風の適性が無かったから追う方も任された事がないからそこら辺は詳しくないんだよねぇ。
まあ、取り敢えず人から追われているかも知れない状況では気を隠すべきってところか。
今後の参考にしよう。
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