第656話 完全にランダム?!
「なんかさぁ、うら若き乙女二人に任せる仕事じゃない気がしない、これ?」
あちこちにあるコスチュームのレンタルショップやハロウィンで馬鹿騒ぎをする酒場モドキな場所を退魔協会の指定通り見て回り始めて一週間。
怪しげなレンタルショップでセクハラモドキな誘いを受ける事5回、酒場っぽい場所で半グレな若いのに奥へ連れ込まれそうになり意識誘導で気を逸らす事3回、眠らせた事2回。
はっきり言って、渋谷は私が思っていたよりもヤバい地区がそこそこあった。
まあ、退魔協会的にはヤバいところの方が怪しげな呪詛とかテロとかの可能性が高いと思ったんだろうけど・・・どう考えても若い女性二人組に調べさせる様な場所じゃ無いよね?!
午前中はまだしも、午後になるとまだ学校とかの授業中の時間なのに高校生ぐらいのが屯している店もあるし、夕方になると何が良いのか酒臭くなる。
高校生だったらまだ少しは身長も伸びるだろうに、酒なんぞ飲んだら成長が止まるぞ〜?
チビな男なんて生涯損をするだろうに。
取り敢えず初日で懲りて午後は4時で切り上げることにしたが、それでもかなり微妙すぎる。
「なんかでも、瘴気はそれなりにあるけど呪詛なんて全く見当たらないんだけど〜」
ウンザリしながらコーヒーチェーン店でアイスラテを飲みながら碧が溜息を溢した。
本当にね。
態々セクハラ店員が馴れ馴れしく肩に手を回して来たりするのにも付き合ってきたのに、誰一人呪詛の事なんて考えてなかったし。
「マジでこれ、どう言う流れで呪詛のテロになるのか、想像も付かない。
それこそ碧がガンガン裏通りとかクラブハウス系の場所の穢れを祓ってどこもかしこも清浄な空気で満ち溢れる様にしたら犯罪率が下がりそうだし呪詛も効きにくくなるかもだけど、事前に清めた程度で防げる呪詛だったら未来見の予見が出る程の惨事にならないよね?」
一体何をどうやって大規模呪詛テロなんて起こせるのか、想像も付かない。
現実的な路線だったらコスチュームのレンタルショップでガンガン客から毛を集めて呪詛を服に縫い付けると思うんだけど、それをやっているらしき人に全く行き当たってないって確率論的にあり得なくない?
あと10日でハロウィンだし、服の手配はギリギリまで待つよりももっと早く準備するでしょ??
と言うかやる気がある人はもうとっくのとうにコスチュームは手配してあるんじゃ無いかな?
自作ってこともあるかもだし。
今頃コスチュームをレンタルしに店に来るのは、大して興味はないけど友達に誘われて来ることにしたライトユーザー(?)だろう。
まあ、そう言う人間の方が何も考えずに酒を飲んで馬鹿騒ぎするかもだから暴徒化を促す様な呪詛のターゲットに向いているかも知れないが、どちらにせよそこそこの数の店でやらないと数が揃わなくないだろうか?
もしかしたらまだ回っていないレンタルショップがガッツリ客が入る大規模なところで、そこに共犯者が大量に居るのかもだが。
もしくは、単に今まで私らに対応した店員がハズレだっただけと言う可能性もある。
可能性は色々とあるが、一週間回って何も成果が無いのは虚しいぞ。
ズズズっとアイスラテの残りを飲み切り、店のゴミステーション(?)に氷を捨てて蓋と容器を別の入口に投げ込む。
氷をガリガリ齧りながら歩いても良いんだけど、最終的にカップが邪魔だからね。
買った店で捨てる方が楽だ。
ポイっと投げすて店を出ようとした瞬間、呪詛の糸みたいのが自分にふわっと絡まるのを感じた。
「え??」
思わず足を止めて振り返る。
「ゴミ箱に呪われた??」
碧も唖然とした顔で店の入り口脇にあるゴミ箱を見つめる。
「捨てられた容器についている唾液から個人の
めっちゃ凄い技術だね」
呆れる程ハイテクな気がする。
どんだけ執念を込めて呪詛の研究をしたんだろ?
しかもこれってどう考えても不特定多数相手だよね。
狙った相手がドリンクを買って思う通りにゴミを捨ててくれる可能性なんてかなり低い。
客層的にはある程度絞れるにしても、基本的に被害者はランダムになるだろう。
「これって渋谷中のコーヒーチェーン店やファーストフード店やコンビニのゴミ箱を確認する必要がある訳??」
碧が悲鳴の様な声を上げて頭を掻きむしった。
「ちょっと別のファーストフード店に行って、そこのゴミ箱にも同じ様な仕組みがありそうだったら呪詛を解読して退魔協会に相談しよう。
レンタルショップが狙われてないならゴミ箱を全部何とかするべきかも」
時間は有限なのだ。
空振り続きなレンタルショップはやめた方が良いかも知れない。
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