カルマ

第647話 ペットを飼い主で差別しちゃいけないよね

「老人が社交場代わりに入り浸ったり、過労とかで定期的に胃を壊すような人が訪れたりする人間の病院はまだしも、動物の治療関係は一回で完治させてたら客が居なくなってそのうち暇になるかな〜と思っていたんだけど、意外と客層が尽きないね」

カリスマ祈祷師のスケジュール表をネットで確認しながら碧がコメントしてきた。


「ちなみにリピート客とかは?」

そこそこ食べさせすぎで肥満な猫も患者(と言っちゃいけないから信者って言うんかな?)として来ているので、いくら碧が一発で糖尿病なり慢性の肝臓や腎臓の疾患を直しても、そのうち体調は壊すだろう。


とは言え。

人間と違ってペットの体調不良ってそうそう分かりにくいからねぇ。

1年やそこらでリピート客にはならないかな?


「紹介された新規客が殆どかな。

近所の人もちょくちょく黒崎さん経由で来ているから、そのうちどこかの獣医からクレームが来るかもね〜」

確かに、黒崎さん経由でローカルなペット達の慢性疾患を片っ端から治しちゃっていたら近所の動物病院の経営にはマイナスだろうねぇ。


まあ、ペットの健康診断とか予防接種でも儲けているんだろうし、最近の獣医はペットホテルやトリミングも併設して経営多角化しているみたいだけど。


それに重症化して行動に異常が出てから病院に行くんだったら治療してもそこまで長生き出来ないだろうから、あまり関係ないのかな?

ある意味、どう言うペットの状態が一番動物病院の経営に貢献しているのか、ちょっと興味があるところだね。


それはさておき。

「今日は・・・4組か。

ちょっと昼に時間が空くから、あの本屋の奥にある回転寿司にでも行かない?

いつも行列が出来ているから、時間にガッツリ余裕がないと行く気が起きないんだよねぇ」

美味しいのだが、美味しくて安いせいで人気があり、いつ見ても回転寿司なのに行列が出来ているから入れる時間が読めないのだ。


今日は午前最後の客から午後最初の客の間に2時間半ほど時間が空いているので、これだけあれば大丈夫だろう。

想定外に早く入れたら食後に適当な喫茶店でスイーツを食べても良いし。

最近の回転寿司って寿司屋なのに何故かプリンとか果物といったデザートも出るのだが、やはりスイーツは専門店の方が良い。


スイーツ本体はプリン程度だったら美味しい店と提携して入荷しているのか意外と美味しいのだが、お茶はやはり喫茶店でちゃんと出してもらう方が良いからね。



と、思っていたのだが。

午前最後の客は、黒塗りなリムジンっぽい車に乗って現れた。


マジか〜。

ヤクザ?

それとも政治家?

まあ、どっちも似たり寄ったりだけど。


まだヤクザの方が普通にペットの治療目的な可能性が高くてマシだと思えるなんて、政治家って終わってるよなぁ。


権力に任せてゴリ押ししない様なまともな政治家もいるのかも知れないけど、それだったらこうも露骨に怪しげな車で来ないでしょ。

セキュリティの問題があるなら使用人なり秘書なりに来させれば良いだけだ。別に飼い主本人が連れてこなければ祈祷しないなんて言ってないんだし。


「面倒そう〜。

車での訪問禁止にするべきかなぁ?」

元々、神社に駐車場は無いので車で来る場合は前もって駐車スペースを確保しておく様ご注意下さいってサイトには書いてあるんだけどね。

黒崎さんの住居スペースの方に行けば駐車する場所もあるが、当然カリスマ祈祷師の客にそんなモノを提供するつもりはない。

まあ、政治家だったら本人と護衛を降ろして、運転手が適当に周辺を流しているかな?

下手に駐車して近所の人とかに目撃されてSNSなんかに投稿されたら不都合な場合もあるだろうし。


しっかし。

遠距離からくる場合は肥満な猫や犬を抱えて電車で何度も乗り換えって体力がない女性や老人だったら大変だから、車禁止とは書いて無いんだけど・・・嫌味ったらしい黒塗りリムジン見ると禁止したくなる。


「黒塗り車は印象が悪いのでご遠慮下さいって書いたらどう?

どうしても来るんだったら一般車に乗って来いって」

マジで政治家とヤクザ禁止って出したいところだが・・・ペットに罪は無いからねぇ。


そんな事を小声で話しながら見ていたら、車の扉が開き、そこそこ高級そうなスーツを着た男が助手席から降りて後ろのドアを開けに動いた。


政治家だな、こりゃ。

細身なヤクザも居るかもだけど、裏社会の人間にしては迫力が無さすぎだ。

まあ、政治家の秘書だってそれなりに権力はあって偉そうにしているんだろうが、虎の威を借る狐っぽさが滲みすぎてる。


裏社会の人間は若いのでも有能なのはそれなりに暴力に慣れて迫力があるのが多いが、政治家に貫禄が出るのはそれなりに自分で権力を握って使うのに慣れてからだからなぁ。

時折碧関係で見かける秘書的なポジションの人間で、貫禄がある若いのはまだ見た事がない。

有能そうなのは時折いたけど。


前世では時々大貴族の息子が社会経験を積む為に秘書っぽい仕事をしている事があって、そう言うのは若くても領地の管理とかを子供の頃からやらされて経験を積んでいるのも居て、貫禄あるのも時々見た。


今世では政治家の二世っぽいのでも、まだまだ歴史の積み重ねや権力が薄っぺらいのか、若いのはメッキ感満載だ。

と言うか、政治家でもメッキ感マシマシなのが多い。

官僚を扱き使わないと自分の責任範囲の話すら出来ないなんて、情け無さ過ぎるよね〜。

日本の政界も世襲制に近くなってきているんだから、せめて若い世代の教育をもっとしっかりやれば良いのに。失敗して甘ったれた権利意識だけを持つ張子の虎ばかりを育てないで欲しい。


それはさておき。

患者さんだな。

いくら飼い主が気に食わなくても、飼い主で猫や犬を差別しちゃあ可哀想だよね。








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