第618話 清めちゃおう!
「本部に報告して追加調査をお願いする必要があるか確認したいので、少し時間を頂いても良いですか?」
西橋さんと話が終わり、玄関を閉めた後に刑事さんが聞いてきた。
「ええ、時間はまだ余裕があるので大丈夫ですよ」
新幹線の終電までまだまだ時間があるので、全然OKだ。
ついでだから木島の家の庭をちょっと見て回ろう。
「親戚に変な人が居ると怖いね〜」
碧が腕を摩りながら一緒に庭に来た。
「下手に付き合いを遮断しようとしたら逆恨みされるかもだし、理由もなく親族の中で一人だけ除け者にするのも恨みを買うかもだし、困ったもんだよね」
しかも妹は鈍いのか平気でその怖い兄に子供を預けていたようだし。
雑草なのか何かの地味な花なのか分からない植物が生えている花壇っぽいスペースに出たが・・・かなり穢れているなぁ。
流石に人間の死体は埋めていないようだが、鳥や猫の死体がそこそこ埋められているのが感じられるし、それらの死ぬまでの苦しみと恨みが地面に染み込んでいる。
暇つぶしというか家で人間を嬲れない代償行為として、小動物を虐待していたようだ。
自然発生的な呪詛も小さいのが発生しているね。
ついでだから庭を浄化して追加の呪詛返しをしておこう。
「あの地下室も浄化しちゃっても良いかな?」
範囲指定に地下も含めるのは可能だ。
現時点では地縛霊はいないけど、ああも穢れていたらそのうち変な霊がうっかり囚われたり、悪霊が恨みに惹かれて来るかもしれない。
無料で祓っちゃいけないって話だけど、予防策的な事はバレなきゃ大丈夫だよね?
「ちなみに、浄化したら霊を喚び難くなるとかってあるの?」
碧がちょっと首を傾げながら聞いてきた。
「他の場所にいる悪霊を喚ぶとちょっと弱るかもだけど、木島の被害者は現時点では悪霊化してないから被害者をもう一度あそこで召喚する事になっても問題ないと思うよ」
例え起訴に向けて捜査中にとか裁判の最中にとかで誰かが悪霊化しちゃったとしても、恨みで魂が劣化する程の時間はないから祓って綺麗にした場所で喚んでも場合によっては正気に戻る程度だろう。
「ふうん、じゃあ私が清めるよ。
もしも木島が死刑になった挙句に悪霊になって戻ってきても、ここでパワーアップ出来ないようにしておこう」
碧が提案した。
確かに、碧が浄化すれば清められた気がそこそこの間残るから、そんじょそこらの悪霊では太刀打ちできないぐらい清くなるね。
「いいね〜。
ガッツリ清めちゃって!」
私じゃあ単に現時点で存在する穢れを祓うだけだから、長期的な効果は期待できない。
まあ、連続殺人鬼の住居で女性が一人監禁されて嬲り殺された家なんぞ誰も住みたがらないだろうから、最終的には多分家を潰して更地にする事になるだろうけど・・・いつになるか分かったもんじゃないからね。
そんな事を考えている間に碧が丁寧に祝詞を唱えて敷地全部を清めた。
あ。
2階に何か霊が居ないか確認しなかったけど・・・多分居なかったよね??
清浄な空気が漂うようになった庭から表の車の方に戻ったら、ちょうど刑事さんが携帯の通話を終えたところだった。
「香取肇さんの死は不審死として検死も行われていました。殺人の疑いが濃厚とされたものの、ほぼ何も証拠が無くて未解決事件としてお蔵入りしていたそうです」
おお〜。
大抵の日本の犯罪ドラマって刑事じゃない主人公を際立たせる為にか一般的な刑事は脳筋で権力主義なアホって感じに描かれているのが多い気がするんだけど、考えてみたら日本って世界でも有数に治安が良い国なんだよね。
移民とかが極端に少ないし、同調圧力が強くてあまりガツガツしていない国民性も治安の良さに貢献しているんだろうけど、警察も実はそれなりに有能なのだろう。
多分。
少なくとも自殺だとか、行方不明になった沙耶さんが真犯人だとか思われていなくて良かったわ〜。
「お蔵入りですか。霊に証言能力が無いのは残念ですね」
何が起きたのか被害者から直に教えて貰えても、物的証拠が無かったら有罪判決を得るのは難しいだろう。
「そうですね」
溜め息を吐きながら刑事さんが応じた。
「ちなみに、木島が起訴された後に保釈される可能性ってあるんですか?
どうせ有罪になるなら裁判までに手当たり次第に殺そうとする可能性があると思いますが」
気になったので尋ねてみる。
あの精神異常者が保釈されるなら、マジでハネナガで見張っておいて留置所から出てきたらその日中にでも寝たきりにすべきだと思うんだが。
「殺人のような死刑や無期懲役になるような危険な犯罪で起訴されている場合は保釈は認められませんよ。
万が一検察がトチ狂って無期懲役未満な求刑をした場合に備えて一応聞いて回りましたが、親族でも金を貸すと答えた人間は居なかったので、保釈金をかき集められないと思いますし」
刑事さんがあっさり教えてくれた。
ふむ。
だったら大丈夫そうかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます