第279話 ちょっと心配・・・

「こう言う場合って犯人は捕まったらどうなるんですか?」

罪そのものは傷害罪だろうか?

火を付けたって言うのもあるから放火も入るのかな?

魔術を使った場合って罰則が厳しくなるとか、公にできないから有耶無耶にされるとかあるのだろうか?


有耶無耶系は旧家の人間なら目立たず大人しく軟禁、私みたいなコネ無しだと退魔協会か国に隷属ってなりそうで怖いけど。


「基本的に方法が何であれ、結果に基づいて罰せられるから傷害罪かな?

何が原因なのか、今までに何かやっていないか、どの位のダメージを負わせうる状況だったかを鑑みることのなるが、符を使っての悪事だから本人が符を作ったのだとしたら力を封じられる事になるだろうね」

田端氏がタブレットを見ながら答えた。


「その場合って例えば懲役が5年になったとして、出所したら封じられた力は解放されるんですかね?」

前世では力の封じ方と言うのは物理的にそう言う能力を司る器官を白魔術師が破壊する方法と、隷属魔術を込めた奴隷用の首輪みたいのと2種類あったが・・・白魔術師による器官破壊は基本的に不可逆な処置だった。


こっちの世界では奴隷用の首輪なんてない気がするんだが、どうなるんだろ?


今回みたいに下手をしたら相手が死んだかもしれない様な案件はまだしも、もっと軽い悪事でも一生力を封じ込められるとなるとちょっと厳しい気もしないでもない。


もっとも安易に力を悪事に使う人間は、そのうちもっと大きな悪事にも力を使う可能性が高いとも考えられるけど。


「霊力はねぇ・・・他者にはない力を持つ者はそれを振るう事により重い責任を負うべきって考えがあって、余程に情状酌量すべき事情でもない限りは封じられるだろうね。

一度封じられると二度と使えなくなるからこそ、そこら辺は弟子を取った際に退魔師が力の使い方を教える前にしっかり言い聞かせる筈なんだが・・・聞いていないのか?」

おっと。


「かなりの部分を独学で学んで、大学に入って碧と会ってから独学ではわからなかった部分を碧に教わっているところなんでちょっとそこら辺が抜けていたみたい?」


「凛は信頼できるって白龍さまが保証して下さったから、罪を犯した際の手続きとかを教える必要があると思わなくて忘れてたわ」

碧が口を挟む。


まあ、どんな人間だって状況次第では法を破るとは思うけどね。

法自体が権力者に阿る為に制定された間違っているモノの場合だってあるし。


「なるほど。

おっと。

この女性かな?」

動きが止まった検索場面を田端氏が私に差し出してきた。


比較的普通な女性の映像を見せられたが・・・考えてみたら、私はあのぽっちゃり女性の顔は正面からは見てないんだよねぇ。

「横顔だったし一瞬の事だったので100%とは言えませんが、この女性っぽい感じはしますね。

ちゃんと他の証拠とかも集めるんですよね?

私の目撃証言だけで誰かの力を一生封じるなんて言うのはやめて下さい」


つうか、横顔を見た私の印象と、アプリがマッチした粗い防犯カメラの映像だけでこの女性の有罪が確定するなんて言われたら嫌だぞ。

そうなったら留置所にでも忍び込んで眠っている間にでも精神を探って真実を確認させて貰う。

冤罪に加担する気は無い。

・・・その場合、私が証言を撤回したら無罪判決になるかな??


つうか、退魔協会にだって他に黒魔術師系の術者がいるだろうから、精神を探って冤罪を防げるだろう。

ある意味、冤罪を防止する手を退魔協会が講じないとしたら、それこそ誰かが真犯人を庇っているか、この女性を嵌めようとしているかって事になる。


「勿論、目撃証言は参考にはするけどちゃんと他の証拠も入手するさ」

田端氏が笑いながら言った。


「考えてみたら、力を使えなくする拘置所みたいな施設ってあるんですか?

もしも彼女は犯人だとしたら普通の留置所に入れていたら逃げられちゃうと思いますが」

まあ、下手に逃げるよりは腕の良い弁護士を雇って、証拠が足りなくて無罪になると期待する方が良いかもだけど。


つうか、犯罪に符を使った場合の裁判ってどうなるんだろ?

普通の裁判員裁判は出来ないよね??





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