第159話 ちょっとヤバい??

「斑鳩家って名門なの?」

綾川さんと別れて帰宅した私は、相変わらず源之助にデレデレな笑顔を見せながらリボンを振り回している碧に尋ねてみた。


「斑鳩?」


「従兄弟が以前碧と一緒に仕事をしたらしい?

こないだの祝賀会で同じテーブルになって、最近ちょくちょく碧も一緒に食事でもって誘ってきている男」

イマイチ心当たりが無さそうだったので付け足す。


「あ〜、彼ね。

斑鳩家は歴史のある名門だけど・・・若い世代は以前私に絡んできた分家の次男と、今回ちょっかい出してきてる本家の長男しか退魔師の才能が無いって噂だね。

まあ、弟とか妹はかなり年下なのもいるらしいから、成長したら才能が覚醒する可能性もゼロでは無いだろうけど」

成る程。

次世代が人材不足だから量より質って事で白龍さまの愛し子である碧を狙っているのか。


「成長したら覚醒って・・・あの長男は私らより年上でしょう?

10歳ぐらいで才能って最低でも有無は確定すると思ったけど、それより若い妹なり弟なりがいるの?

それともこっちの世界では10歳より上で才能が覚醒する事も多いとか?」

前世では16歳ぐらいまで才能は伸びたが、あるか否かは10歳の時点でほぼ確定していた。


だからあの国では8歳で適性検査をして魔術学院に才能持ち子供を放り込んだ後、更に10歳で魔術学院に通っていない子供をもう一度検査したのだ。

基本的に10歳以降で魔術適性が新しく生えるのは、死にかけるとか言った特殊な状況以外では無かった。


どっかの人でなしが孤児を使って実験したところ、死に掛けるにしても才能が覚醒する確率は極々低かったらしいが。

ちなみにこの実験をしたのは黒魔術師ではなく白魔術師だった。

被験対象が孤児だったせいか、この実験もそれなりに子供を殺しているのに『白魔術師を規制しろ』と言う世論にはならず、私としてはかなり世の中の理不尽さにムカついたものである。


「こっちでも10歳ぐらいに才能が覚醒してなかったら厳しいと見做されるかな。

斑鳩はねぇ・・・。

歳をとって妊娠し難くなった先妻と離婚して、若い女と結婚してまた産ませてるから長男より15歳以上年下の弟と妹がいるらしいよ。

まだ才能が覚醒していないから当主がヤキモキしているって話を以前聞いたな」

と碧が教えてくれた。


う〜ん。

先妻さんも可哀想に。

才能の遺伝は男と女のどちらからでも確実では無いからなぁ。

でも、蓮少年のところが母親が一般人なのに4人兄妹で2人才能持ちっぽい事を考えると、それなりに斑鳩家は確率が悪そうだね。


当主の日頃の行いが悪いのかな?


「そっかぁ。

退魔師とか陰陽師の旧家ってはっきり目に見える才能が求められるから奥さんも辛いね」

子供が才能持ちで生まれるか否かなんて確率論の問題であり、男側にも責任があるのに何故かこう言う場合って妙に女の責任にされやすいんだよねぇ。

女性だって遺伝子の半分しか提供していないんだから、責任は半々だろうに。

妊娠後の子宮の環境で才能が左右される訳では無い。

・・・多分。

もしかして子宮の状況で決まるなら、才能持ちの子供に出来る代理母が滅茶苦茶人気になるだろうなぁ。


それこそ誘拐・監禁されそうだから絶対に公にしちゃいけない情報だけど。


「退魔師としての家を継続させる事にそこまで執着するんだったら才能持ちの子供を養子に入れれば良いのに、自分の遺伝子も持ってないと許せないって言うんだから離婚された奥さんも良い迷惑だよね。

旦那と嫁ぎ先のプレッシャーに負けて今時4人も子供を産んだのに、役立たず呼ばわりされて捨てられるんだから。

まあ、離婚に合意する代わりにそれなりに慰謝料をふんだくったらしいけどね。

結局、一番可哀想なのは誰からも欲しがられなかった才能なしの子供たちかも」


確かにねぇ。

4人も産むなんて、大変そうだ。


「まあ、教育費とかは普通に払って貰えるんだったら、退魔の才能無しの子達はうざくて頭の固い実家の柵から解放されて良かったのかも?

この間みたいな祝賀会と言う名称の合コンもどきに強制参加って事も無いだろうし」


「そうねぇ。

まあ、本人達がどう感じるか次第だよね。

で、どうしたの?

斑鳩の長男が何か更に言ってきたの?

あんまりしつこいんだったら退魔協会に苦情を入れようか?」

碧が源之助を膝の上に誘い込みながら聞く。


「なんかねぇ。

私の事を理由に賀茂家の分家だとか言う綾川さんってお嬢さんを振ったらしくってね。

賀茂家って名門なんでしょ?

分家とは言え名門の娘さんを振ってまで私に粘着するのって何でかと思ってね」


碧が顔を顰めた。

「あ〜。

私との伝手だけが目的だと思って油断しないようにね。

旧家の人間だと歴史のない家の人間だったら妾扱いしても問題ないとマジで信じてるのも居るから、下手をしたら薬を盛って妊娠させようとする可能性もゼロじゃあないよ」


おいおい。

デートレイプならまだしも、妊娠させるところまで行くか?!

でもまあ、そこまで必死に才能持ちの子供を求めているなら、金でなんとか出来そうなポッと出の若い女を引っ掛けまくって庶子を沢山産ませ、才能がある事が判明したら養子として引き取るのもありなのかね?


「・・・取り敢えず、絶対に碧無しで会わないようにするわ」

流石に天罰が落ちる碧相手に薬は盛らないだろう。


ヤバすぎ!!










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る