第127話 悪人か否か
「えっと・・・。
2人目って事は、他にも教えた人がいたの?
どんな事が出来る様になるのかな?」
はっきり言って教わる事なんて無いと思うが、まずこの瀬川が何が出来て何をするつもりなのか、知っておきたい。
以前の温泉宿のクズみたいな奴と同じなんだったら折角早い段階で見つけたのでさっさと魔眼を封じて過去の被害者を助ける事も考える必要があるが、単に厨二病をちょっと拗らせてる程度だったら放置もあり得るかも知れない。
持って生まれた生来の能力を危険『かも知れない』からって封じるのもちょっと違うだろう。
散々黒魔術関連の風評被害で苦労した私が、能力を悪用出来るからと前世の社会でやられたのと同じような事を自らやるのは避けたい。
とは言え。
近藤さんへの態度を考えると安心して放置出来る程、人格に信頼を感じられないんだよねぇ。
一応身の回りに死んだ霊は取り憑いて居ないので誰もまだ殺していないっぽいが、ある程度強力な魔眼があればそれなりに周りを都合よく動かせるので、殺す必要もないからなぁ。
気に入った女を食い散らかして、飽きたら自分の事を忘れさせるとか、自分から瀬川に飽きたと思わせれば勝手に離れていくだろう。
今時だったら男に多少入れ込んでも悪評がたって人生がドツボに嵌るなんて事はないし。
水子霊が居ないのも、避妊をしっかりやっていたか・・・瀬川を煩わせずに自分一人で子育てする様に女の方を洗脳したと言う可能性もある。
誰も死んでいないのは良い事なんだけど・・・そうなると意外と情報収集が難しい。
しっかり記憶を読まない事にはどんな事をやって来たのか分からないんだよね。
前世も今世も、悪事に手を染めた人間が誰も死なせていないなんて事がなかったから、常に霊から情報を得られた。
今回みたいに情報が皆無と言うのは初めてだ。
多数の人間に被害を及ぼせる悪人かも知れない人間で、判断がつかないと言うのはちょっと想定していなかった事態だ。
「力があるのを見出した一人目は中年の男だったからね。
既に自分の仕事があるらしいしっかりした格好をしていたから、特に関与する必要は無いかな?と思って敢えてコンタクトはしなかった。
だから教えるのは長谷川さんが初めてだね。
俺は・・・誰かが嘘を言ったら分かるし、力を持つ人も視える。
他にも出来る事はあるけど、それはまたおいおい長谷川さんの進捗状態に応じて教えていくよ」
にこやかに瀬川が答えた。
まあ、確かに弟子候補者とは言え、もしかしたら力を持っているせいで魔眼が効きにくいかも知れない赤の他人に、『他人を好きなように操れる』なんて明かさないよね。
水を出したり火をつけたり傷を治せるとか言わないところを見ると・・・瀬川は黒魔術の適性持ちか、魔眼の才能のみを持っているのかな?
魔法を使えるとも言わなかったから、黒魔術の適性があっても魔法陣を自力で開発できるだけの才能はないようだ。
う〜ん。
どんな奴か見極める為に暫く一緒に時間を過ごさないとダメかなぁ。
面倒なんだけど。
問答無用で
抵抗されても大丈夫なほど魔力を込めたら危険かもだし。
どうしようかね。
取り敢えずどんな感じに教えるつもりなのか、様子を見るか。
「教わるのってどのくらいの時間がかかるのかな?」
と言うか、今まで誰も教えた事が無いのに、教えられるとどうして思えるんだろう?
「う〜ん、試してみないと分からないね。
まず、俺の目を見て、俺の声を心の奥深くまで取り込む感じで聞いて試してみて」
瀬川が何やら怪しげな事を言い始めた。
なんだって魔眼の訓練にこいつの目を見てガードを下げる様な感じのことをしなくちゃいけないのよ?
まあ、私に魔眼を使おうとするならパスが繋がりやすい状態になるので、こちらの術も効きやすくなる筈だからこの機会を利用させて貰おう。
防御術に更に魔力を込めて強化してから瀬川の目を見つめる。
「俺の事を師匠として深く信頼するんだ。
命じる事は全て従って、常に俺の為になるよう行動していくのが成長の為に必要不可欠だと理解してくれ」
瀬川が魔眼にかなりの魔力を込めて命じてきた。
おいおい。
魔眼持ちだから私の魔力を感じたのかと思ったけど、単にデートレイプ・ドラッグの魔眼バージョンなだけ???
人には無い能力があるから教えるって話で信頼させて、魔眼での洗脳を効きやすくする詐欺かい。
じっと瀬川の目を見つめ、魔力を練って術を叩きつける。
「眠って」
一体何人この『教える』詐欺で洗脳したんだ??
こう言うのって退魔協会とかに報告した方が良いのかな?
いや、下手に協会に悪用されかねない能力者の情報を伝えない方がいいか。
魔眼って放っておけばそのうち洗脳効果も薄れるけど、洗脳された期間や強度によって回復にかかる時間が違ってくるんだよなぁ。
どうしようかね?
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