第113話 夢枕
「結局あの変態は、殺人と強姦未遂で起訴される事は決まったって。
殺人の方は有罪判決が出るかどうかは分からないけど、殺しちゃう程の量の薬を盛って強姦しようとした事は認めているんでそれなりの年数の判決が強姦だけでも出ると思う。
他の人を殺せるぐらい体力がある状態で出てきそうだったら、自分の楽しみの為に命を奪えないよう術を掛けるから安心して」
今日は青木氏に頼んで鍵を借り、例のG出現案件に来ていた。
殺虫剤完備で来たが、こちらの物件は排水管の側にあったひび割れを塞いだ事で一気にGが減ったらしい。
まあ、考えてみたらGの食糧源だった猫や鳥の死骸も警察の調査中は流せなかっただろうから餌の供給も絶えていただろうし。
警察が田端氏からの情報でこのマンションの排水管とそれが繋がる下水部分を調べたところ、至るところに大量の猫や鳥の死骸から出たと思われる肉片がこびり付いていたらしい。
そしてそれを餌にしていたGも。
鼠も居たらしいが、流石に小さな割れ目からは出て来れなかった様だ。
警察の調査が終わった後に管理会社が専門業者を雇って清掃させたとの事だった。
どうも青木氏の物件だけでなく、他の部屋や近所からもGの苦情は出ていたとか。
『そう。
連続殺人魔なんて本当にいるのねぇ』
おっとりと香織さんが応じた。
「まあ、今までは猫と鳥、後は偶に上手く睡眠薬入りの餌を食わせられた外飼いの犬だけだったらしいけど、20〜30匹は余裕で殺したんじゃ無いかって。
古い分は流されちゃって分からないけど、黒田が子供の頃に住んでた地域って彼がいなくなってから野良猫が増えたって話だから、子供の頃から猫とかを殺していたんじゃないかな」
どうして猫を殺したのか、香織さんを強姦した後どうするつもりだったのか等々、術をかけて正直なところを聞きたい気もするが・・・ああ言う子供の頃から殺してきたくせに大人になるまで人間に手を出さなかったタイプって自分も上手いこと騙している事が多いので、聞いても本人に都合のいい正当化しか聞けないかな?
どちらにせよ、大元の警察への垂れ込みに関与しただけでも当局の注意を引きそうなのに、更に犯人とプライベートで話したいなんて言い出すつもりは無い。
起訴までいったので、後は法律家たちの応酬だろう。
一応判決がどうなるかは確認して、必要に応じて白龍さまのヘルプを要請するつもりだが。
殺人で有罪判決が出ても控訴とかあるし、香織さんがそう言うのに付き合う必要は無いだろう。なので今日は香織さんが心置きなく次の生へ移行できるよう、妹さんの夢へ繋ぐために来たのだ。
『私は犬派だけど、猫も可愛いのに。
命を奪うなんていけない事よねぇ』
溜め息を吐きながら香織さんが言った。
死者は呼吸しないのだが、それでも溜め息を吐いたりあくびをしたりするんだよねぇ。
実際には空気は動いていないだろうが。
水の中にいる霊だったらどうなるんだろ?
まあ、どうでもいい事だけど。
「で、妹さんに夢の中で話す件なんだけど、この石にでも一時的に入ってくれる?」
白龍さまの聖域で拾った石を差し出して提案する。
霊を動かす時はそれなりに気をつけないと離散してしまったり、目を離しら隙に元の場所に戻ってしまったりと言う事があるので、何かを依代にしておく方が無難なのだ。
『は〜い』
あっさり合意し、香織さんが石の中に飛び込んだ。
地縛霊化していると自力では動けない事が多いのだが、どうやら香織さんがここに居たのは単にぼ〜っとしていただけで死んだ場所に縛られていたからでは無かった様だ。
『妹はちゃんと夢の内容を覚えていられるのかしら?』
香織さんが石の中から聞いてくる。
「朝方に繋いで、夢が終わったら直ぐに目を覚まさせるから大丈夫だと思うけど、夢の最後に話した内容を起きたら直ぐに書き出す様、言っておくと良いかも?」
一応話し合いの記憶のコピーを作るつもりだが、あれは1、2回で劣化して消えてしまうのでダメそうだったら無理やり日中に白昼夢っぽく見せるしか無い。
まあ、香織さんがすぐに成仏しないんだったら普通にもう一度夢を繋いでも良いのだが・・・話し合ったら満足して成仏しちゃいそうな雰囲気なんだよねぇ。
どうなるかな〜。
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